Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room D

General session » S02. Seismometry and Monitoring System

[S02]PM-2

Mon. Sep 16, 2019 2:45 PM - 3:45 PM ROOM D (International Conference Halls I)

chairperson:Masanao Shinohara(Earthquake Research Institute, The University of Tokyo), Masayuki Tanaka(MRI, JMA)

2:45 PM - 3:00 PM

[S02-01] The Observation Environments of Broadband Seismograph in Minami-Tori-shima (Marcus Island)

*Masayuki Tanaka1 (1. Meteorological Research Institute)

南鳥島は、本州や小笠原諸島から1,000 km以上離れた日本最東端の島で、太平洋プレート上に存在する唯一の領土である。太平洋プレートは年間約10 cmの速さで概ね西進し、日本海溝及び伊豆・小笠原海溝などから沈み込んでいる。安定した長期観測が困難な海域をカバーする地球物理観測の拠点としての役割が期待されている。東京大学地震研究所と気象研究所は共同で、1996年にSTS-2広帯域地震計(以下、STS-2)とLS-8000WDデータロガーからなる観測システムを現地に整備し、観測を開始した。2014年10月以降はTrillium Compact All-Terrain広帯域地震計(以下、TCAT)とLS8800データロガーからなる観測システムに変更し、JAMSTEC・地震研・気象研の三者共同で運用している。SDカードの交換及び送付は気象庁南鳥島気象観測所の支援を得て行われている。観測によって概ねM4.5以上の太平洋プレート周辺域の地震のT相やM5を超える地震の実体波が捉えられている[石原・他(The 2015 fall meeting)、田中・他(The 2016 fall meeting)]。しかし、現在のTCATは固有周期120秒の仕様ではあるが、簡易観測型の機器のため、周期10秒までの帯域が実用的と言われている。そこで、2016年10月より、STS-2とLS8800データロガーからなる臨時観測システムを設置して比較観測を行っている。TCATは屋外の深さ約1 mの所に置かれた800 mm×400 mm×200 mmのコンクリート土台の上にプラスティックバケツを被せて埋設されている。また、臨時のSTS-2は潮位計機器が置かれている温度22~24℃で空調管理されている室内の厚さ約1mのコンクリート基礎床の上に設置し、空調の風が直接当たらないようにウレタン材で覆われている。2016年10月下旬から2019年6月初旬までの周期3秒~2000秒の24時間平均パワースペクトル密度(PSD)を比較した(図1)。短周期側では海洋起源のmicroseismsの変動が共に見られる。周期10秒から600秒では、屋外埋設のTCATよりも室内設置のSTS-2の方が上下動成分で10PSD[10log10m2/sec4/Hz dB]程度ノイズレベルが低い。時間変化で見ると、共に季節による変化が確認できる。なお、2018年11月頃から、TCATによる観測システムにおいて、上下動成分の波形記録に異常が見られる。現在、原因を調査中である。また、広帯域地震計は温度に敏感で、温度ドリフトが生じると記録は非線形になる。そこで、温度環境についても併せて調査した。STS-2の置かれた室内2か所(データロガー付近とウレタン材で覆ったSTS-2の脇)に温度ロガーを設置し、屋外埋設のTCAT内部の温度や南鳥島アメダスの気温等と併せて、TCATとSTS-2の出力電圧とデータのある2016年10月下旬から2018年10月中旬までについて比較した(図2)。屋外埋設のTCAT内部の温度は、南鳥島アメダスの気温の日最高気温とほぼ同じ値で変化している。一方、室内設置のSTS-2はウレタン材で覆ったことによる効果と思われるが、空調管理された室内よりもウレタン材で覆った内部の方が温度変化は小さい。ただし、期間中に数回空調が停止しており、停止したときは室内の温度は一気に上昇する。STS-2を覆っているウレタン内部の温度も室内ほどではないが上昇する。STS-2は、長周期の変動に対して±10℃以内、短周期は2~22℃において、センサーの中心位置を調整せずに測定することができ、15~35℃の範囲ではドリフトはごく僅かであることが仕様に記されている。比較期間において、平時のSTS-2は24±3℃の温度環境にあり、ドリフトはほとんどなく、地球潮汐による変動が見られる。TCATには温度ドリフトの調整機能はなく、全観測期間において季節によって変動する気温と対応するドリフトが見られる。加えて、季節変動よりも短い周期のドリフトも見られる。そのため、地球潮汐がSTS-2にようにはっきりとは確認できない。質の良いデータを得るにはひとつには温度対策は必須である。

謝辞
本調査は、東京大学地震研究所の一般共同研究等の支援を受けています。
国立研究開発法人防災科学技術研究所のパワースペクトル密度計算と作図ツールを使用させて頂きました。資料作成にGeneric Mapping Tools (GMT, Wessel & Smith, 1991) とSeismic Analysis Code (SAC) を使用しました。