Seismological Society of Japan Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Sept. 16th)

General session » S02. Seismometry and Monitoring System

S02P

Mon. Sep 16, 2019 5:15 PM - 6:45 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

5:15 PM - 6:45 PM

[S02P-04] Experimental observation toward the realization of low-cost and high-density strong-motion observation network (2)

*Takashi Akazawa1, Takamori Ito2 (1. Geo-Research Institute, 2. aLab Inc.)

著者らは,IT強震計試作機相当の廉価なITKセンサを開発し,それをVPS(Virtual Private Server)とVPN(Virtual Private Network)を用いた廉価な地震計ネットワークの試験運用(伊藤・他(2019))の一環として利用する傍ら,既存の強震計と併設して強震計としての性能を評価するための試験観測を実施している(赤澤・伊藤(2019))。このセンサは,Raspberry Piにアナログデバイセズ社のMEMS加速度センサADXL355を接続することで,廉価(部品代1万5千円程度)にIT強震計試作機(約60万円)以上の機能を実現している。本報告では,開発したITKセンサでこれまでに収録された記録(常時微動記録と地震記録)を解析し,記録が有する精度を評価した。なお,観測を開始してから半年以上経過したが,これまでに,作成した6台のセンサにトラブルは発生していない。
まず,同一地点に設置した2台とそれとは異なる地点に設置した1台で同時に収録された常時微動記録を解析した。ここで,後者は,常時微動の振幅レベルが比較的大きい場所である。解析の結果,波形の振幅と振幅スペクトルは,同一成分で, 3台ともほぼ同じとなった(水平成分:約0.2 gal,上下成分:約0.3 gal)。また,振幅スペクトルは,周波数に依存せずほぼフラットとなり,ホワイトノイズとしての特性を示した。この結果は,開発したITKセンサで得られた「常時微動」記録は自己ノイズ(つまり,ノイズレベルは水平成分で約0.2 gal,上下成分で約0.3 gal)であり,このセンサを地盤での微動計測に利用することは難しいことを示している。
次に,同一地点に設置した2台とそれに併設する2台の高精度な強震計(1台は広帯域速度型強震計)で同時に収録された地震記録を解析した。ITKセンサ同士の記録を比較した結果,波形と振幅スペクトルはほぼ同じ特性となり,センサ毎の個体差はほぼ無いことが明らかとなった。また,それらを,併設する高精度な強震計で収録された記録と比較した結果,自己ノイズのレベルを上回れば,波形・振幅スペクトル共に高精度な強震計とほとんど同じ特性が得られた。これまでに震度2を上回る地震記録は得られていないが,開発したITKセンサで収録される地震記録は,震度1~2程度の揺れに対し,0.2~5 Hz付近で高精度な強震計並みの分解能を有することが明らかとなった。

参考文献 赤澤・伊藤(2019),日本地球惑星科学連合2019年大会,STT43-P02. 伊藤・他(2019),日本地球惑星科学連合2019年大会,STT43-P01.