11:00 AM - 11:15 AM
[S03-06] A possible strike-slip motion along the Nankai oblique subduction zone --direct-path acoustic ranging at the Shionomisaki Canyon--
フィリピン海プレートは南西日本に対し41-65 cm/yr の速度で斜めに沈み込んでいる。その斜交角は潮岬沖では直交方向から30-50度にもなり、横ずれ成分は26-50 mm/yrに達すると推定される。この横ずれ成分は、巨大地震時に直交成分とともに解消される可能性もあるが、地震時には解消されずに、純粋な横ずれ成分として、内陸部の中央構造線の活動、あるいは海溝付近で非地震時にクリープ等により解消されている可能性もある。Tsuji et al. (2014) では、熊野海盆の外縁帯に平行する、wedge boundary strike-slip fault (WBSF) の存在を指摘しており、潮岬海底谷のWBSFに沿う方向の地形的なオフセット量から、WBSFでの横ずれ運動の大きさが地質学的時間の平均値として~20 mm/yr 程度あると見積もっている。しかし、それが定常クリープなのか間欠的な動きであるかは、地質情報からだけでは判定ができない。それで、我々は海底間音響測距による地殻変動の実測を試み、クリープの有無を調べることにした。
WBSFと潮岬海底谷が交差する水深約3000mの海底に3台の測器を設置し、2016年6月から約2年間の連続観測を実施した。各基線は1000-2500 m で渓谷・WBSFをまたぐように設置し、WBSFに平行する横ずれ運動があれば、基線長変化として捉えられる配置とした。実際の地形は急峻な崖となっており、音響パスを通しつつ急傾斜地を避けるために、ROVを用いて確実に設置した。
2019年1月に機器を音響切り離しにより回収し、データ解析を行った。バッテリが切れるまでの2年間、すべての基線で質の良い連続データが得られた。一方で音速補正に用いる温度計のデータは3000 mの水深にしては極めて大きい最大で0.2℃に達する擾乱が見られた。正確な音速補正を適用するためには、基線両端での温度変化がコヒーレントであることが前提となるが、両端の温度変化の違いも0.1℃程度あり、線形な温度場空間変化の仮定が困難で、音速補正後も見かけの基線長の擾乱が1000 mの基線で10 cm 程度、2500 mの基線で20 cm 程度残ってしまった。しかし、1年間の長期データのため線形回帰による基線長変化速度は概ね1-2 cm/yrの精度で議論が可能である。暫定的な解析結果からは、観測精度内での定常的なクリープの存在は見られず、横ずれ運動は地質学的時間の中で間欠的に発生していることを支持する結果となった。現在、大きな温度擾乱を効果的に補正する方法を試行中であり、今後より精度の高い議論が可能になると期待される。
WBSFと潮岬海底谷が交差する水深約3000mの海底に3台の測器を設置し、2016年6月から約2年間の連続観測を実施した。各基線は1000-2500 m で渓谷・WBSFをまたぐように設置し、WBSFに平行する横ずれ運動があれば、基線長変化として捉えられる配置とした。実際の地形は急峻な崖となっており、音響パスを通しつつ急傾斜地を避けるために、ROVを用いて確実に設置した。
2019年1月に機器を音響切り離しにより回収し、データ解析を行った。バッテリが切れるまでの2年間、すべての基線で質の良い連続データが得られた。一方で音速補正に用いる温度計のデータは3000 mの水深にしては極めて大きい最大で0.2℃に達する擾乱が見られた。正確な音速補正を適用するためには、基線両端での温度変化がコヒーレントであることが前提となるが、両端の温度変化の違いも0.1℃程度あり、線形な温度場空間変化の仮定が困難で、音速補正後も見かけの基線長の擾乱が1000 mの基線で10 cm 程度、2500 mの基線で20 cm 程度残ってしまった。しかし、1年間の長期データのため線形回帰による基線長変化速度は概ね1-2 cm/yrの精度で議論が可能である。暫定的な解析結果からは、観測精度内での定常的なクリープの存在は見られず、横ずれ運動は地質学的時間の中で間欠的に発生していることを支持する結果となった。現在、大きな温度擾乱を効果的に補正する方法を試行中であり、今後より精度の高い議論が可能になると期待される。