4:15 PM - 4:30 PM
[S03-15] Geodetically estimated location and geometry of fault plane involved in the 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake
1.はじめに
平成30年(2018年)9月6日3時8分頃,北海道胆振地方中東部でマグニチュード6.7の地震が発生し,最大震度7を記録した.胆振東部地震の震源域近傍には,活断層である石狩低地東縁断層帯が分布している.胆振東部地震では,国土地理院が運用するGNSS連続観測システム(GEONET)及びだいち2号によって地殻変動が捉えられた.本発表では,これら地殻変動から推定された震源断層モデルについて報告する.
2.データと解析
GNSS(GEONET)及びSAR(だいち2号)で観測された地殻変動を基に震源断層モデルを推定した.モデル解析では,GEONETの定常解析の最終解(F3解)を用いた.この地震に伴い苫小牧観測点で東方向へ約4cm変位する等,震央周辺の観測点で地殻変動が観測されたが,電子基準点「門別(950141)」及び「厚真(950132)」では,地震に伴いピラーが傾斜したことが現地観測により分かっている.そこで本解析では,傾斜測定の結果から推定される見かけの変位を補正してモデル計算に利用した.干渉SARのデータについては,南行右観測及び北行左観測の軌道から撮像した2018年8月23日と同年9月6日の画像ペア,北行右観測の軌道から撮像した2018年8月25日と同年9月8日の画像ペアを使用した.モデル計算ではこれらの干渉SARデータを位相連続化した後,データをリサンプリングし,モデル計算に適したデータセットを作成した.これらGNSS及びSARデータを用いて,1枚の矩形断層における一様滑りを仮定した震源断層モデルを構築した.震源断層の各パラメータは,Simulated Annealing法による解探索から最適解を得た.
3.結果
モデル計算の結果,以下の特徴が得られた.断層は震央付近から南に約10km延び,ほぼ南北の走向を持つ.断層の上端深さは約16kmであり,一般的な内陸の地殻内地震より深い位置に断層面が求まっているのが特徴である.傾斜角は74度と高角の断層面であり,東に傾斜する断層面上での逆断層運動が推定された.これら震源断層モデルの諸特徴を概念図として図1に示す.すべり量は約1.3mで,地震モーメントは8.68×1018 Nm(モーメントマグニチュード(Mw):6.56)である.これは,気象庁や防災科学技術研究所等の各機関で地震波形から推定されたマグニチュード(いずれもMw6.6)と調和的である.なお,地震モーメントの計算には,剛性率30 GPaを仮定した.
震源領域付近には石狩低地東縁断層帯が存在するが,断層面は高角で,断層の浅部延長は石狩低地東縁断層帯より東に位置し,既知の断層トレースとは繋がらない.このことは本地震の断層面が石狩低地東縁断層帯とは異なる,もしくは同断層帯の構成要素であるが浅部に向かう途中で低角になっている,ということを示唆しているのかもしれない.
地震波速度構造と比較すると,推定された断層面は速度構造が空間的に不均質な場に位置することがわかった.断層面の東側にはP波速度が小さい領域が鉛直方向に厚く分布しており,P波速度の大きな層と小さな層の境界面は東に傾き下がっている.本地震の断層面は,こうした東に傾き下がる速度構造の境界付近に沿うように位置している.
謝辞: 本報告で使用したALOS-2データの所有権は,JAXAにあります.これらのデータは,国土地理院とJAXAの間の協定及び地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動に基づいて,JAXAから提供されたものです.地震データは気象庁の一元化震源を用いました.速度構造との比較に防災科学技術研究所のHi-net 3D Tomography Viewer (Ver. 3.0)を用いました.ここに記して感謝いたします.
参考文献:
Kobayashi, T., K. Hayashi, H. Yarai (2019), Geodetically estimated location and geometry of the fault plane involved in the 2018 Hokkaido Eastern Iburi earthquake, Earth Planets Space, 71:62, doi:10.1186/s40623-019-1042-6.
平成30年(2018年)9月6日3時8分頃,北海道胆振地方中東部でマグニチュード6.7の地震が発生し,最大震度7を記録した.胆振東部地震の震源域近傍には,活断層である石狩低地東縁断層帯が分布している.胆振東部地震では,国土地理院が運用するGNSS連続観測システム(GEONET)及びだいち2号によって地殻変動が捉えられた.本発表では,これら地殻変動から推定された震源断層モデルについて報告する.
2.データと解析
GNSS(GEONET)及びSAR(だいち2号)で観測された地殻変動を基に震源断層モデルを推定した.モデル解析では,GEONETの定常解析の最終解(F3解)を用いた.この地震に伴い苫小牧観測点で東方向へ約4cm変位する等,震央周辺の観測点で地殻変動が観測されたが,電子基準点「門別(950141)」及び「厚真(950132)」では,地震に伴いピラーが傾斜したことが現地観測により分かっている.そこで本解析では,傾斜測定の結果から推定される見かけの変位を補正してモデル計算に利用した.干渉SARのデータについては,南行右観測及び北行左観測の軌道から撮像した2018年8月23日と同年9月6日の画像ペア,北行右観測の軌道から撮像した2018年8月25日と同年9月8日の画像ペアを使用した.モデル計算ではこれらの干渉SARデータを位相連続化した後,データをリサンプリングし,モデル計算に適したデータセットを作成した.これらGNSS及びSARデータを用いて,1枚の矩形断層における一様滑りを仮定した震源断層モデルを構築した.震源断層の各パラメータは,Simulated Annealing法による解探索から最適解を得た.
3.結果
モデル計算の結果,以下の特徴が得られた.断層は震央付近から南に約10km延び,ほぼ南北の走向を持つ.断層の上端深さは約16kmであり,一般的な内陸の地殻内地震より深い位置に断層面が求まっているのが特徴である.傾斜角は74度と高角の断層面であり,東に傾斜する断層面上での逆断層運動が推定された.これら震源断層モデルの諸特徴を概念図として図1に示す.すべり量は約1.3mで,地震モーメントは8.68×1018 Nm(モーメントマグニチュード(Mw):6.56)である.これは,気象庁や防災科学技術研究所等の各機関で地震波形から推定されたマグニチュード(いずれもMw6.6)と調和的である.なお,地震モーメントの計算には,剛性率30 GPaを仮定した.
震源領域付近には石狩低地東縁断層帯が存在するが,断層面は高角で,断層の浅部延長は石狩低地東縁断層帯より東に位置し,既知の断層トレースとは繋がらない.このことは本地震の断層面が石狩低地東縁断層帯とは異なる,もしくは同断層帯の構成要素であるが浅部に向かう途中で低角になっている,ということを示唆しているのかもしれない.
地震波速度構造と比較すると,推定された断層面は速度構造が空間的に不均質な場に位置することがわかった.断層面の東側にはP波速度が小さい領域が鉛直方向に厚く分布しており,P波速度の大きな層と小さな層の境界面は東に傾き下がっている.本地震の断層面は,こうした東に傾き下がる速度構造の境界付近に沿うように位置している.
謝辞: 本報告で使用したALOS-2データの所有権は,JAXAにあります.これらのデータは,国土地理院とJAXAの間の協定及び地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動に基づいて,JAXAから提供されたものです.地震データは気象庁の一元化震源を用いました.速度構造との比較に防災科学技術研究所のHi-net 3D Tomography Viewer (Ver. 3.0)を用いました.ここに記して感謝いたします.
参考文献:
Kobayashi, T., K. Hayashi, H. Yarai (2019), Geodetically estimated location and geometry of the fault plane involved in the 2018 Hokkaido Eastern Iburi earthquake, Earth Planets Space, 71:62, doi:10.1186/s40623-019-1042-6.