Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 16th)

General session » S03. Crustal Deformation, GNSS, Gravity

S03P

Mon. Sep 16, 2019 5:15 PM - 6:45 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

5:15 PM - 6:45 PM

[S03P-06] Postseismic vertical movement in the past 25 years since the 1993 Hokkaido-Nansei-Oki Earthquake in the Okushiri Island

*Masanobu Shishikura1, Takahiro Miyauchi2, Tomoo Echigo3, Tanio Ito4, Ryoyu Arai5, Yoshio Soeda6, Daisuke Takeda7, Satoshi Kuribatashi8, Taiiku Kobayashi9, Hideaki Maemoku10, Yuzuko Tsukahara2 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 2. Chiba University, 3. Geo-Research Institute, 4. Association for the Development of Earthquake Prediction, 5. Kawasaki Geological Engineering Co. Ltd., 6. West Japan Engineering Consultants, Inc., 7. PASCO CORPORATION, 8. Tokushima Prefecture, 9. Kanagawa Prefecture, 10. Hosei University)

【はじめに】
1993 年北海道南西沖地震(M7.8)では,奥尻島において顕著な地殻変動が観測された(国土地理院,1994).宮内ほか(1994)は,地震の約1週間後に奥尻島の海岸に分布する汀線指標の測量を行った結果,島の北端部で約30cm,南端部で約100 cm の沈降量を伴い,南へ傾動したと報告した.一方,奥尻島に発達する更新世中期以降の海成段丘の多段化とそれらの旧汀線高度分布は,地質学的時間スケールでは島の累積的な南東への傾動隆起を示す(宮浦,1975).両者の垂直変動様式が異なることから,太田(1994)はこの地震を例外的な活動としており,小疇ほか編(2003)は,1993年の地震とは別に傾動隆起を伴う地震発生の可能性を指摘している.
このように奥尻島における1993年地震時の地殻変動と長期的な地殻変動の様式は一見矛盾するようであるが,長期的変動(累積変動)における地震性地殻変動の寄与を評価するには,余効変動の推移を継続的にモニターし,地震サイクルに関連づけて検討する必要がある.そこで筆者らは,地震時およびその後の変動を観測するために,島内 25 か所で独自に測量基準点を設置し,その標高について,地震発生からの 25 年間に 6 回の測定を実施した.

【調査方法】
1993 年 7 月 12 日の地震発生から 6~8 日後に,奥尻島の海岸部の 25 か所に測量基準点を設置し,海面からの高度を測定した.その後 1993 年 8 月(1 ヶ月後),1997 年 7 月(4 年後),2003年7 月(10 年後),2013 年 7 月(20 年後),2018年7月(25年後)の計 5 回にわたり,海面からの高度および標高の測定を実施した.一部の測量基準点では,この 25 年の間に港湾施設の改修や波浪侵食等で消失したものもあるが,近接地点に測量点を復元して改測を行った.測量に使用した機材は,ハンドレベル,オートレベル,トータルステーション,GNSS によるVRS-RTK などで,各地点で時間海面から各測量基準点までの比高測量に潮位補正を加えて絶対標高に換算した.近傍に水準点がある場合は,水準点から測量基準点までの水準測量を実施した.VRS- RTK では,水準点での測定を実施して測量精度の検証を行った.

【調査結果】
測量実施期間ごとに観測された上下変位量について,島の北部(北海岸),東部(東海岸),西部(西海岸)に分けて以下にまとめた.
・1993年7月~8月(地震直後の約1カ月間)
島の全域で沈降傾向にあり,北海岸で最大 30 cm 程度,西海岸で 10〜20 cm 程度の沈降が認められる.
・1993年8月~1997年8月(地震から約4 年後)
島の全域で10〜20 cm 程度の沈降(2.5〜5.0 cm/年)が継続している.
・1997年8月~2003年7月(地震4年後から10年後までの6年間)
北海岸で1〜5 cm程度の隆起(0.2〜0.8 cm/年)が確認されたが,その他の地点では10 cm未満の沈降(<1.7 cm/年)となった.
・2003年7月〜2013年7月(地震10 年後から20年後までの10年間)
北海岸では僅かに沈降,東海岸でも10 cm未満の沈降(<1.0 cm/年)が継続しているが,西海岸では4〜8 cm程度の隆起(0.4〜0.8 cm/年)が認められた.
・2013年7月〜2018年7月(地震20 年後から25年後までの5年間)
北海岸および東海岸で隆起傾向にあり,最大で10 cm程度の隆起(2.0 cm/年)が認められる.西海岸では逆に10 cm程度沈降(2.0 cm/年)した地点がある.

これらの結果は,測定誤差(数cm以内)を考慮しても有意な数値として評価することができる.地震後20年間の垂直変動は,島の西部や北部で隆起傾向にあり,海岸段丘の高度分布が示す南東への傾動と一見調和的である.しかし,2013-2018年の最近5年間の変動はそれまで沈降傾向にあった島の東部が逆に隆起に転じていることから,それまでの垂直変動の傾向とは異なっている.この地殻変動の傾向の反転が一時的なゆらぎなのか,今後も継続していくのか,引き続き定期的な観測を続けて検討を進める予定である.

本調査は,科学研究費基盤(B)「岩石海岸地形の総合カタログに基づく地震隆起・地震発生予測に関する研究」(研究代表:宮内崇裕)による成果を含む.

引用文献
小疇 尚・野上道夫・小野有五、平川一臣編(2003),日本の地形 2 北海道,東京大学出版会,359p
国土地理院(1994),北海道南西沖地震後の地殻変動(GPS 観測結果),地震予知連絡会会報,51,01-10,p67-70
宮内崇裕・伊藤谷生・宍倉正展・荒井良佑(1994),1993 年北海道南西沖地震と奥尻島の第四紀地殻変動,科研費A「平成 5 年北海道南西沖地震・津波とその被害に関する調査研究」,p21-26
宮浦 正(1975),奥尻島の海成段丘と第四紀地殻変動,第四紀研究,14,23-32.
太田陽子(1994),海成段丘からみた奥尻島の第四紀地殻変動の傾向と 1993 年地震の例外制,号外海洋 7『北海道南西沖地震と津波』,p70-73