Seismological Society of Japan Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Sept. 17th)

General session » S04. Tectonics

S04P

Tue. Sep 17, 2019 5:00 PM - 6:30 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

5:00 PM - 6:30 PM

[S04P-03] An Analytical Method for the Shape of Subducting Oceanic Plate by using GIS

*Yuki Tsukamoto1,2, Shinsuke Okada3, Tatsuya Sumita2, Daisaku Kawabata2 (1. Graduate School of Science, Tohoku University, 2. AIST, Tohoku University, 3. IRIDeS)

はじめに 変動帯である日本列島には,太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んでおり,沈み込む海洋プレートの形状が,島弧地殻で発生する火山活動や地震活動・活断層およびそれに伴う地殻変動等に大きな影響を与えていると考えられる.西南日本弧に沈み込むフィリピン海プレートには,プレートの断裂や重合などの複雑な変形が生じており,これまでにも火山活動や地殻変動との関連が指摘されている.例えば,山岡ほか(1997)では,富士山付近の火山活動を伊豆半島付近から北西方向に沈み込んだ海洋プレートの断裂と関連付けて解釈している.また,Iidaka et al. (2017)では,根尾谷断層周辺は,浅く沈み込んだフィリピン海プレートと島弧の下部地殻が接することによりひずみが蓄積しやすい環境であることを指摘している. 沈み込んだプレートの形状は,プレート上面で発生する地震の震源分布や地震波速度構造解析等の地震学的手法によりモデル化が行われている.しかし一方で,これらの沈み込む海洋プレートの形状は,地球上を取り囲む球殻の沈み込みとして考えられるが,この観点からプレート形状を解析した例はほとんどない.そこで本研究では,GISを用いて地形に沿った最短経路を求め,沈み込む海洋プレートに対する形状解析を行う手法について検討した.

研究手法 地球表面を移動するプレートは球殻とみなせるが,Yamaoka et al.(1986)は,沈み込む海洋プレートに対しても,面積が変化しない,裂けや重合を伴う球殻の変形として表現できることを見出した.この説に基づくと,沈み込んだプレート上面のある点を始点として,沈み込み開始地点(海溝)までの地形に沿った最短経路を定めることができる.通常は,プレート上面の点と沈み込み開始地点との対応関係に連続性を見いだせるが,連続性が崩れる地点が見られた場合には,沈み込んだプレートにおいて断裂や重合といった変形が起きていることが想定できる(図1). 以上のことから,プレート上の任意の点とプレートの沈み込み開始地点との間の最短経路を明らかにすることで,プレートの断裂や重合などの変形を評価できる.そこで,地理空間座標や地形に沿った距離演算等の取り扱いに優れるGISを用いて形状解析を行った. 本研究では,プレートが滑らかに沈み込む場合,断裂を起こした場合,重合を起こしている場合の3種のプレート形状を球殻の組み合わせによって再現し,これらのプレート形状に対して最短経路の解析を行うことにより,プレート形状の変化を評価できるか検討した.解析範囲を1000 km四方として4 km間隔のプレート形状データを作成した.沈み込み開始地点には4 km毎に点を配置した.解析では,まず,1つの沈み込み開始地点からプレート上面の全ての点までの,地形に沿った最短経路の距離解析を行い,この作業を4 km毎に設定した全ての沈み込み開始地点から実施した.次に,プレート上面の1地点に着目し,最短経路をもつ沈み込み開始地点を検索し,その距離値および対応する沈み込み開始地点を記録した.最後に,得られた最短経路の距離値の分布を確認した後に,記録しておいた沈み込み開始地点毎に最短経路を分類してプレート上面を着色した.

結果と考察 3種の理想的な沈み込みプレート形状に対して最短経路の解析を行った結果,以下のことが明らかになった.プレートが滑らかに沈み込む形状では,プレート上の点と沈み込み開始地点が一対の関係となった.プレートが断裂した形状では,断裂が想定される範囲の近傍において,プレート上の複数の点の最短経路が同一の沈み込み開始地点に集中する様子が見られた(図2).これはプレートが地下で断裂している事を示しているものと考えられる.ただし,断裂が起きていると想定される範囲とGISを用いた解析による断裂範囲は,正確には一致しなかった.プレートが重合した形状では,最短経路値が扇状に分布し,重合部付近に収束する様子が確認された.これらの結果から,理想的な沈み込みプレート形状では,断裂や重合を示す形状について,最短経路を用いた形状解析により評価できることが分かった. なお,GISでは,最短経路をDEM点周囲8方位に沿って求めるために,最短経路の計算結果に方位依存が生じていることが確認された.プレートの解析においても,この特性を考慮したうえで解析結果を判断する必要があることが分かった.また今後は,実際の沈み込むプレートにも最短経路を用いた形状解析手法を適用し,本研究で得られた形状解析結果のパターンと比較することで,プレート形状の評価を行う予定である.

引用文献: Iidaka T., et al., 2017, Receiver function images of the distorted Philippine Sea slab contact with the continental crust: Implications for generation of the 1891 Nobi earthquake (Mj 8.0), Tectonophys., 717, 41-50. Yamaoka, K., et al., 1986, Spherical shell tectonics: Effects of sphericity and   inextensibility on the geometry of the descending lithosphere, Reviews of Geophysics, 24, 1, 27-53. 山岡耕春・西原真仁, 1997, 中部地方の火山活動と沈み込んだフィリピン海プレートの形状, 火山, 42, 131-138.