10:00 AM - 10:15 AM
[S06-02] Seismic wave velocity structures in the Iburi region of Hokkaido, Japan
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震(M=6.7)やその余震は,これまで考えられてきた内陸地震の発生深度下限(約15 km)よりも深い20-40 kmに分布する [Katsumata et al., 2019].胆振地方の東側に位置する日高山脈を中心とする地域では千島弧と東北日本弧が衝突しており,島弧―島弧の衝突帯として知られている.このため,北海道胆振東部地震はそのような北海道中軸部における複雑なテクトニクスに関連した地震であると考えられる.本研究では,北海道胆振地方を中心とした領域の地震波速度構造の詳細な推定を試みた.そして,得られた地震波速度構造をベースに北海道胆振東部地震の発生メカニズムや余震を含む一連の活動と同地域におけるテクトニクスとの関係を検討した.
地震波速度構造の推定にはDouble-difference (DD) tomography法 [Zhang and Thurber, 2006]を用いた.解析期間は2008年11月9日から2018年11月8日までの10年間である.このうち,2018年9月7日から同年11月8日の期間中は2018年北海道胆振東部地震合同観測グループによって行われた臨時観測で取得されたデータを含む.使用した観測点の数は定常的な観測点が73,臨時観測点が20の計93点である.地震数は胆振東部地震本震前の期間が3,089個,本震後の期間が805個となる.マグニチュードの下限はM=2とした.P波とS波の読み取り値は全期間でそれぞれ209,009,176,052である.また,DDデータはP波で114,083,S波で104,348となった.グリッド間隔は東西方向に7.5-15.0 km,南北方向に12.5-15.0 km,深さ方向は4.0-20 kmとした.初期1次元速度構造は北海道大学地震火山研究観測センターで使用されているルーチン構造[笠原・他, 1994]をベースに深さ10 km以浅を吉田・他 [2009]の推定値で置き換えたものを使用した.解析結果の妥当性はCheckerboard resolution testを行うことで確かめた.
胆振地方から日高山脈にかけて,地震波の低速度域が明瞭にイメージされた.このうち,地表面付近の低速度域は石狩低地帯に発達する厚い堆積層に対応する.また,低速度域は深さ40-70 km程度まで分布し,その下限は東(日高山脈)側で深くなる.この特徴は千島弧との衝突による東北日本弧の沈み込み[e.g., Iwasaki et al., 2004; Kita et al., 2012]を表していると考えられる.さらに,北海道胆振東部地震はそのような明瞭な地震波低速度域の西端に位置する.言い換えると,胆振東部地震の震源域周辺を挟んで地震波速度が急激に変化しているように見える.この地震波速度境界(あるいは急激な変化域)はほぼ南北に分布し,余震の広がる方向と一致する.地表の地質構造でも見られるように,南北に伸びる不均質性は北海道中軸部の特徴的な構造である.したがって,本解析の結果は,千島弧と東北日本弧の衝突を起因とする複雑な構造が胆振地方においても発達してることを示すとともに,北海道胆振東部地震がそのような不均質構造と密接に関係した地震であることを示唆する.なお,3次元速度構造での震源再決定を行った結果,胆振東部地震の本震深さはおおよそ35 kmとなった.また,震源域周辺ではP波で5.5-7.2 km/s程度,S波で3.0-4.0 km/s程度と見積もられた.このことから,胆振東部地震の一連の地震活動は主として島弧地殻内部で発生したものであると考えられる.
地震波速度構造の推定にはDouble-difference (DD) tomography法 [Zhang and Thurber, 2006]を用いた.解析期間は2008年11月9日から2018年11月8日までの10年間である.このうち,2018年9月7日から同年11月8日の期間中は2018年北海道胆振東部地震合同観測グループによって行われた臨時観測で取得されたデータを含む.使用した観測点の数は定常的な観測点が73,臨時観測点が20の計93点である.地震数は胆振東部地震本震前の期間が3,089個,本震後の期間が805個となる.マグニチュードの下限はM=2とした.P波とS波の読み取り値は全期間でそれぞれ209,009,176,052である.また,DDデータはP波で114,083,S波で104,348となった.グリッド間隔は東西方向に7.5-15.0 km,南北方向に12.5-15.0 km,深さ方向は4.0-20 kmとした.初期1次元速度構造は北海道大学地震火山研究観測センターで使用されているルーチン構造[笠原・他, 1994]をベースに深さ10 km以浅を吉田・他 [2009]の推定値で置き換えたものを使用した.解析結果の妥当性はCheckerboard resolution testを行うことで確かめた.
胆振地方から日高山脈にかけて,地震波の低速度域が明瞭にイメージされた.このうち,地表面付近の低速度域は石狩低地帯に発達する厚い堆積層に対応する.また,低速度域は深さ40-70 km程度まで分布し,その下限は東(日高山脈)側で深くなる.この特徴は千島弧との衝突による東北日本弧の沈み込み[e.g., Iwasaki et al., 2004; Kita et al., 2012]を表していると考えられる.さらに,北海道胆振東部地震はそのような明瞭な地震波低速度域の西端に位置する.言い換えると,胆振東部地震の震源域周辺を挟んで地震波速度が急激に変化しているように見える.この地震波速度境界(あるいは急激な変化域)はほぼ南北に分布し,余震の広がる方向と一致する.地表の地質構造でも見られるように,南北に伸びる不均質性は北海道中軸部の特徴的な構造である.したがって,本解析の結果は,千島弧と東北日本弧の衝突を起因とする複雑な構造が胆振地方においても発達してることを示すとともに,北海道胆振東部地震がそのような不均質構造と密接に関係した地震であることを示唆する.なお,3次元速度構造での震源再決定を行った結果,胆振東部地震の本震深さはおおよそ35 kmとなった.また,震源域周辺ではP波で5.5-7.2 km/s程度,S波で3.0-4.0 km/s程度と見積もられた.このことから,胆振東部地震の一連の地震活動は主として島弧地殻内部で発生したものであると考えられる.