1:45 PM - 2:00 PM
[S06-11] Crustal reflector and seismicity in Iwaki area
1) はじめに
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降,日本列島の地震活動は大きく変化した。これらの地震活動の変化は,東北地方太平洋沖地震に伴い島弧の応力場が変化したことに関係していると考えられる。いわき地域の地震活動においては,東北地方太平洋沖地震以降大きく変化し,地震が増加した。しかし,その理由はいまだに明らかになっていない。東京大学地震研究所では関係機関と連携し,この地域で60点規模の臨時地震観測をおこなった。いわき地域で発生した地殻内地震について,この臨時観測点で観測された波形記録を見ると,ひとつの特徴として2種類の後続波が観測された。その原因を調べてみると,2つの後続波は,地殻内に存在する境界面とモホ面からの反射波であることがわかった(臼田,修士論文2018)。臼田(2018)では,いわき地域に発生した地震と臨時観測の観測点を用いて,逆VSP 法解析による調査から反射面の位置の推定をおこなった。
この地域の地震活動の特徴として,上部地殻での活動に加えて,地殻中部でも顕著な活動域が見られることが挙げられる。この地殻中部の活動域は,地殻内反射面とほぼ一致し,地殻中部の地震活動と反射面との関係が深いことが示唆された。また,反射波の振幅が大きいことから,地殻内の反射波は流体を含んでいる層からの反射波である可能性が指摘され,地殻中部の地震活動が地殻内流体によって引き起こされた可能性が示された(臼田,2018)。さらに,この領域の地殻上部の地震活動と反射面との関係を調べた。この領域の地震活動は,東北地方太平洋沖地震に伴い3月11日に活発化が始まっている。一連の活動は,検出された反射面の南部の直上で始まり,地殻内反射面を中心にして取り囲むように地震活動が活発となっていることがわかった(飯高・他,2019)。このように地震活動と反射面の位置は密接な関係があり,一連の地震活動が地殻内流体と関係している可能性が指摘された(飯高・他,2019)。臼田(2018)によって求められた反射面は北緯37度まで求められているが,その北側でも地震活動は活発であり,地震と反射面との関係を明らかにするために,北緯37度以北における反射面の存在の有無を明らかにすることが重要であると考えられる。そのため北側について,観測域の北側で発生した地震を中心に北緯37度以北の観測点を調べた。反射面を検出するため,逆VSP 法解析による解析を用い解析をおこなった。
2)データおよび解析
いわき地域で,2012年に北緯37度以北に発生したマグニチュード3以上の地震について解析をおこなった。用いた観測点は,この地域に展開した臨時観測点とHi-net,F-net等の観測点を用いた。この地域の地震活動は,上部地殻で発生する深さ15㎞以浅の地震と,15㎞から30㎞に発生する地殻中部の地震の活動が見られる。この解析では,地殻上部で発生した15㎞以浅の地震を用いた。
解析手順は以下のようにした。(1) 波形から後続波を検出する。(2) その後続波のパーティクルモーションを調べ,P波であるかS波であるかを明らかにする。(3) 後続波の起源を調べる(反射された波であることを確認する)。(4) 後続波を用い逆VSP 法解析により地殻内反射面を求める。
3)結果
後続波を調べることによって,パーティクルモーションや見かけ速度から,観測された後続波は地殻内に存在する境界面からのS波の反射波であることがわかった。この地域では,これまでに逆VSP 法解析による調査から反射面の検出が行われており,北緯37度まで反射面の存在が示されている(臼田,修士論文2018)。一方,この地域の地震活動は,一辺が30㎞~50㎞の三角形の領域で活発に発生しており,その地震活動は北緯37度以北にも見られる。また,この地域の地震活動と反射面との関係が示唆されており,その観点に立って考えると,北緯37度以北の地殻内部においても反射面の存在が推測される。
今回の解析で,このいわき地域で反射波を用いて逆VSP 法解析をおこなったところ,これまで求められていた地域の北側の北緯37度以北にも,反射面が存在することが確認された。このことは,この地域においては,地震活動が活発な領域において広く地殻内反射面が存在することを示している。この反射面は,反射波の振幅が大きいことから,地殻内流体起源である可能性が示唆されている。この地域の活発な地震活動と地殻内流体との関係を明らかにしていくことは,地殻内地震の発生原因を考えるうえでひじょうに重要な課題である。また,地殻内流体の物理的性質やその供給源を明らかにしていくことは,内陸地震の発生メカニズムの現象解明に向けた重要な研究課題であると考えられる。
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降,日本列島の地震活動は大きく変化した。これらの地震活動の変化は,東北地方太平洋沖地震に伴い島弧の応力場が変化したことに関係していると考えられる。いわき地域の地震活動においては,東北地方太平洋沖地震以降大きく変化し,地震が増加した。しかし,その理由はいまだに明らかになっていない。東京大学地震研究所では関係機関と連携し,この地域で60点規模の臨時地震観測をおこなった。いわき地域で発生した地殻内地震について,この臨時観測点で観測された波形記録を見ると,ひとつの特徴として2種類の後続波が観測された。その原因を調べてみると,2つの後続波は,地殻内に存在する境界面とモホ面からの反射波であることがわかった(臼田,修士論文2018)。臼田(2018)では,いわき地域に発生した地震と臨時観測の観測点を用いて,逆VSP 法解析による調査から反射面の位置の推定をおこなった。
この地域の地震活動の特徴として,上部地殻での活動に加えて,地殻中部でも顕著な活動域が見られることが挙げられる。この地殻中部の活動域は,地殻内反射面とほぼ一致し,地殻中部の地震活動と反射面との関係が深いことが示唆された。また,反射波の振幅が大きいことから,地殻内の反射波は流体を含んでいる層からの反射波である可能性が指摘され,地殻中部の地震活動が地殻内流体によって引き起こされた可能性が示された(臼田,2018)。さらに,この領域の地殻上部の地震活動と反射面との関係を調べた。この領域の地震活動は,東北地方太平洋沖地震に伴い3月11日に活発化が始まっている。一連の活動は,検出された反射面の南部の直上で始まり,地殻内反射面を中心にして取り囲むように地震活動が活発となっていることがわかった(飯高・他,2019)。このように地震活動と反射面の位置は密接な関係があり,一連の地震活動が地殻内流体と関係している可能性が指摘された(飯高・他,2019)。臼田(2018)によって求められた反射面は北緯37度まで求められているが,その北側でも地震活動は活発であり,地震と反射面との関係を明らかにするために,北緯37度以北における反射面の存在の有無を明らかにすることが重要であると考えられる。そのため北側について,観測域の北側で発生した地震を中心に北緯37度以北の観測点を調べた。反射面を検出するため,逆VSP 法解析による解析を用い解析をおこなった。
2)データおよび解析
いわき地域で,2012年に北緯37度以北に発生したマグニチュード3以上の地震について解析をおこなった。用いた観測点は,この地域に展開した臨時観測点とHi-net,F-net等の観測点を用いた。この地域の地震活動は,上部地殻で発生する深さ15㎞以浅の地震と,15㎞から30㎞に発生する地殻中部の地震の活動が見られる。この解析では,地殻上部で発生した15㎞以浅の地震を用いた。
解析手順は以下のようにした。(1) 波形から後続波を検出する。(2) その後続波のパーティクルモーションを調べ,P波であるかS波であるかを明らかにする。(3) 後続波の起源を調べる(反射された波であることを確認する)。(4) 後続波を用い逆VSP 法解析により地殻内反射面を求める。
3)結果
後続波を調べることによって,パーティクルモーションや見かけ速度から,観測された後続波は地殻内に存在する境界面からのS波の反射波であることがわかった。この地域では,これまでに逆VSP 法解析による調査から反射面の検出が行われており,北緯37度まで反射面の存在が示されている(臼田,修士論文2018)。一方,この地域の地震活動は,一辺が30㎞~50㎞の三角形の領域で活発に発生しており,その地震活動は北緯37度以北にも見られる。また,この地域の地震活動と反射面との関係が示唆されており,その観点に立って考えると,北緯37度以北の地殻内部においても反射面の存在が推測される。
今回の解析で,このいわき地域で反射波を用いて逆VSP 法解析をおこなったところ,これまで求められていた地域の北側の北緯37度以北にも,反射面が存在することが確認された。このことは,この地域においては,地震活動が活発な領域において広く地殻内反射面が存在することを示している。この反射面は,反射波の振幅が大きいことから,地殻内流体起源である可能性が示唆されている。この地域の活発な地震活動と地殻内流体との関係を明らかにしていくことは,地殻内地震の発生原因を考えるうえでひじょうに重要な課題である。また,地殻内流体の物理的性質やその供給源を明らかにしていくことは,内陸地震の発生メカニズムの現象解明に向けた重要な研究課題であると考えられる。