5:00 PM - 6:30 PM
[S06P-13] Subsurface Structure around the North End of the Yokosuka Fault by Seismic Reflection Survey
1945年1月13日に発生した三河地震(M6.8)は,愛知県蒲郡市から額田郡幸田町に至る深溝断層と,幸田町から西尾市に至る横須賀断層を震源とするとされている.この地震は戦時中に発生したことから報告が十分でなく,その詳細については不明な点が多い.深溝断層と横須賀断層はいずれも鍵型に屈曲しており,浜田(1987)による余震分布と一致しているとは言い難い.また,Kikuchi et. al. (2003) は震源過程を求めているが,浜田(1987)による余震分布を元に仮定した断層面が残差を最も小さくするとして採用しており,やはり深溝断層と横須賀断層の地表トレースとは不調和であると言える.Ando (1974) は三角測量のデータを用いて断層パラメタを推定しているが,深溝断層だけでデータを説明できることから,横須賀断層は震源断層ではなく,二次的な地変である可能性に言及している.以上のように横須賀断層については,地表に見られるトレースと,地震学的・測地学的な解析による断層パラメタが一致していない.そこで,横須賀断層の活動にともなう変動が存在するのか否かを明らかにするために,横須賀断層の北端付近に位置する矢作古川の河川敷で反射法地震探査を実施した(Fig. 1).
調査は,ボーリングデータと比較可能な分解能を求められることや,基盤である領家変成岩の上端が深度50m程度と浅いこと,横須賀断層の活動が累積的でない場合には浅部にしか変位が生じていない可能性があることなどから,S波探査とした.調査は,2019年2月18日から20日までの3日間に実施した.調査地は愛知県西尾市志籠谷町の古川緑地右岸側の路線(GS-NSO3)である.矢作川は西尾市北部で東から西に流れるが,その矢作川から別れて南向きに流れるのが矢作古川である.矢作古川は徐々に西向きに流れを変えるが,その流れの向きを変えるあたりの右岸河川敷にこの緑地は設けられている.緑地の北側ないし西側にある堤防上を西尾市道八ツ面浅井線が通っているが,その道路下を通るアスファルト舗装された遊歩道に沿って調査を実施した.測点間隔は2m,総測点数は288点,従って測線長はおよそ570mである.受振器はGeospace社製のGS-32CT(固有周波数10Hz)を内蔵した水平動シングル受振器96個,および3成分受振器96個の水平動1成分を併用した.同時展開受振点数は192点とした.データ収録には,サンコーコンサルタント社製のテレメトリ型地震探査システムであるDSS-12を使用した.サンプリング間隔は1ms,記録長は2秒とし,SEG-2形式で記録した.発震は地球科学総合研究所所有の小型の衝撃型震源であるJMS-Mini65-2を使用した.発震は測線に直交する両方向から打撃を与え,処理の際にはその差をとってP波がキャンセルされるようにした.CMP間隔は1mとした.
速度250〜275m/sでCMP重合したブルートスタック断面をFig. 2に示す.この断面には複数の顕著なイベントが認められる.連続性の良い,往復走時0.4秒付近のイベントに着目する.仮にS波速度が250m/sであるとすると,このイベントの深度は50m程度となり,領家変成岩の上端であると考えられる.領家変成岩よりも浅い部分のイベントは全体として西に傾斜しているように見えるが,矢作古川の流れる方向と調和的である.横須賀断層の北方延長と交差するのはCMP300付近になる.この付近はS/N比が低下しているものの,顕著な変動は認められない.一方,CMP450付近からCMP500付近にかけて領家変成岩の上端が急激に西側に向かって浅くなっているように見える.この特徴は,東落ちの逆断層である横須賀断層の特徴と調和的である.ただし,この付近を境に古川緑地の整備状況が大きく変わるため,偽像である可能性を排除することができない.今後,処理を進め,またボーリングデータとの比較・検討を行い,横須賀断層の変動を明らかにする.
文献
Ando, M. (1974) Faulting in the Mikawa Earthquake of 1945, Tectonophysics, 22, 173-186.
浜田信生(1987) 日本列島の内陸部に発生した被害地震に伴う地震活動の再調査とその地震学的意義, 気象研究所報告, 38, 77-156.
Kikuchi, M., M. Nakamura, and K. Yoshikawa (2003) Source rupture processes of the 1944 Tonankai earthquake and the 1945 Mikawa earthquake derived from low-gain seismograms, Earth Planets Space, 55, 159-172.
岡田篤正・鈴木康弘・堤浩之・東郷正美(2004) 1:25,000都市圏活断層図「蒲郡」,国土地理院.
調査は,ボーリングデータと比較可能な分解能を求められることや,基盤である領家変成岩の上端が深度50m程度と浅いこと,横須賀断層の活動が累積的でない場合には浅部にしか変位が生じていない可能性があることなどから,S波探査とした.調査は,2019年2月18日から20日までの3日間に実施した.調査地は愛知県西尾市志籠谷町の古川緑地右岸側の路線(GS-NSO3)である.矢作川は西尾市北部で東から西に流れるが,その矢作川から別れて南向きに流れるのが矢作古川である.矢作古川は徐々に西向きに流れを変えるが,その流れの向きを変えるあたりの右岸河川敷にこの緑地は設けられている.緑地の北側ないし西側にある堤防上を西尾市道八ツ面浅井線が通っているが,その道路下を通るアスファルト舗装された遊歩道に沿って調査を実施した.測点間隔は2m,総測点数は288点,従って測線長はおよそ570mである.受振器はGeospace社製のGS-32CT(固有周波数10Hz)を内蔵した水平動シングル受振器96個,および3成分受振器96個の水平動1成分を併用した.同時展開受振点数は192点とした.データ収録には,サンコーコンサルタント社製のテレメトリ型地震探査システムであるDSS-12を使用した.サンプリング間隔は1ms,記録長は2秒とし,SEG-2形式で記録した.発震は地球科学総合研究所所有の小型の衝撃型震源であるJMS-Mini65-2を使用した.発震は測線に直交する両方向から打撃を与え,処理の際にはその差をとってP波がキャンセルされるようにした.CMP間隔は1mとした.
速度250〜275m/sでCMP重合したブルートスタック断面をFig. 2に示す.この断面には複数の顕著なイベントが認められる.連続性の良い,往復走時0.4秒付近のイベントに着目する.仮にS波速度が250m/sであるとすると,このイベントの深度は50m程度となり,領家変成岩の上端であると考えられる.領家変成岩よりも浅い部分のイベントは全体として西に傾斜しているように見えるが,矢作古川の流れる方向と調和的である.横須賀断層の北方延長と交差するのはCMP300付近になる.この付近はS/N比が低下しているものの,顕著な変動は認められない.一方,CMP450付近からCMP500付近にかけて領家変成岩の上端が急激に西側に向かって浅くなっているように見える.この特徴は,東落ちの逆断層である横須賀断層の特徴と調和的である.ただし,この付近を境に古川緑地の整備状況が大きく変わるため,偽像である可能性を排除することができない.今後,処理を進め,またボーリングデータとの比較・検討を行い,横須賀断層の変動を明らかにする.
文献
Ando, M. (1974) Faulting in the Mikawa Earthquake of 1945, Tectonophysics, 22, 173-186.
浜田信生(1987) 日本列島の内陸部に発生した被害地震に伴う地震活動の再調査とその地震学的意義, 気象研究所報告, 38, 77-156.
Kikuchi, M., M. Nakamura, and K. Yoshikawa (2003) Source rupture processes of the 1944 Tonankai earthquake and the 1945 Mikawa earthquake derived from low-gain seismograms, Earth Planets Space, 55, 159-172.
岡田篤正・鈴木康弘・堤浩之・東郷正美(2004) 1:25,000都市圏活断層図「蒲郡」,国土地理院.