5:00 PM - 6:30 PM
[S06P-18] Receiver function imaging of the Philippine Sea plate subducting beneath Shikoku
1.はじめに
南海トラフ巨大地震において震源域や強震動生成域の広がりを的確に推定し、地震規模や強震動の予測の確度を上げるためには、震源域となるフィリピン海スラブ周辺域や巨大地震から発せられた地震波の伝播経路にあたる領域の構造を高精度に推定することが必要である。
我々は、リニアアレイ観測、レシーバ関数解析および地震波走時トモグラフィ解析により、紀伊半島、南九州および四国の地下構造を高精度に推定することを試みている。
今回は四国でのレシーバ関数解析の結果について報告する。
2.リニアアレイ観測
鳥取県米子市と徳島県海陽町を結ぶ米子-海陽測線の四国側(綾川-海陽区間)と徳島市と愛媛県西予市を結ぶ徳島-西予測線でリニアアレイ観測を行った。いずれも測線近傍の定常観測点も含めて、観測点間隔が5 kmほどになるように臨時観測点を配置した。
綾川-海陽区間では、2014年12月から2017年2月まで7点の臨時観測点を設置した。徳島-西予測線の東側(神山-大豊区間)では、2015年12月から2018年12月まで7点の臨時観測点を設置した。徳島-西予測線の西側(いの-西予区間)では、2017年3月から2019年1月まで7点の臨時観測点を設置した。
各臨時観測点では、固有周期1秒の高感度地震計(L-4-3D、Sercel社製)の地動速度出力をデータロガー(LS-7000XT、白山工業製、100 HzサンプリングまたはEDR-X7000、近計システム製、250 Hzサンプリング)に連続収録した。データロガーは自動車用バッテリーで駆動し、太陽電池で充電するオフライン観測である。
3.レシーバ関数解析
米子-海陽測線の観測点で記録された遠地地震波形を用いてレシーバ関数解析を行った。レシーバ関数とは、観測点下のS波速度不連続面で生成されるPS変換波を抽出した波形である(澁谷・他, 2009)。さらに、気象庁の地震波速度構造JMA2001(上野・他, 2002)を用いて、レシーバ関数の時間軸を深さ変換し、多数の観測点で多数の地震に対して得られたレシーバ関数の振幅を共通の変換点上で重合することにより、S波速度不連続面のイメージを求めた。得られたレシーバ関数イメージをFig.1に示す。
OMとラベルした赤線の背景にある赤いイメージの連なりは高速度層の上面と考えられるので、フィリピン海スラブ内の海洋モホ面と解釈できる。その上方にあるSTとラベルした青線は、低速度である海洋地殻の上面、すなわちフィリピン海スラブの上面と考えられる。そのまた上方にあるCMとラベルした赤破線は、高速度である大陸マントルの上面(大陸モホ面)と考えられる。この結果から四国東部下のフィリピン海プレートは、四国南端の深さ20 kmから中国地方中部で深さ40 kmに達していて、6°程度の傾斜角で沈み込んでいることが分かった。これに対して、大陸モホ面は、やや不明瞭ではあるが、中国地方北部の深さ35 kmからフィリピン海プレートの上方をせり上がるように四国南端の深さ15 kmまで分布していることが示唆された。
謝辞
防災科学技術研究所、気象庁、産業技術研究所、高知大学、京都大学の定常観測点の地震データを使用しました。
南海トラフ巨大地震において震源域や強震動生成域の広がりを的確に推定し、地震規模や強震動の予測の確度を上げるためには、震源域となるフィリピン海スラブ周辺域や巨大地震から発せられた地震波の伝播経路にあたる領域の構造を高精度に推定することが必要である。
我々は、リニアアレイ観測、レシーバ関数解析および地震波走時トモグラフィ解析により、紀伊半島、南九州および四国の地下構造を高精度に推定することを試みている。
今回は四国でのレシーバ関数解析の結果について報告する。
2.リニアアレイ観測
鳥取県米子市と徳島県海陽町を結ぶ米子-海陽測線の四国側(綾川-海陽区間)と徳島市と愛媛県西予市を結ぶ徳島-西予測線でリニアアレイ観測を行った。いずれも測線近傍の定常観測点も含めて、観測点間隔が5 kmほどになるように臨時観測点を配置した。
綾川-海陽区間では、2014年12月から2017年2月まで7点の臨時観測点を設置した。徳島-西予測線の東側(神山-大豊区間)では、2015年12月から2018年12月まで7点の臨時観測点を設置した。徳島-西予測線の西側(いの-西予区間)では、2017年3月から2019年1月まで7点の臨時観測点を設置した。
各臨時観測点では、固有周期1秒の高感度地震計(L-4-3D、Sercel社製)の地動速度出力をデータロガー(LS-7000XT、白山工業製、100 HzサンプリングまたはEDR-X7000、近計システム製、250 Hzサンプリング)に連続収録した。データロガーは自動車用バッテリーで駆動し、太陽電池で充電するオフライン観測である。
3.レシーバ関数解析
米子-海陽測線の観測点で記録された遠地地震波形を用いてレシーバ関数解析を行った。レシーバ関数とは、観測点下のS波速度不連続面で生成されるPS変換波を抽出した波形である(澁谷・他, 2009)。さらに、気象庁の地震波速度構造JMA2001(上野・他, 2002)を用いて、レシーバ関数の時間軸を深さ変換し、多数の観測点で多数の地震に対して得られたレシーバ関数の振幅を共通の変換点上で重合することにより、S波速度不連続面のイメージを求めた。得られたレシーバ関数イメージをFig.1に示す。
OMとラベルした赤線の背景にある赤いイメージの連なりは高速度層の上面と考えられるので、フィリピン海スラブ内の海洋モホ面と解釈できる。その上方にあるSTとラベルした青線は、低速度である海洋地殻の上面、すなわちフィリピン海スラブの上面と考えられる。そのまた上方にあるCMとラベルした赤破線は、高速度である大陸マントルの上面(大陸モホ面)と考えられる。この結果から四国東部下のフィリピン海プレートは、四国南端の深さ20 kmから中国地方中部で深さ40 kmに達していて、6°程度の傾斜角で沈み込んでいることが分かった。これに対して、大陸モホ面は、やや不明瞭ではあるが、中国地方北部の深さ35 kmからフィリピン海プレートの上方をせり上がるように四国南端の深さ15 kmまで分布していることが示唆された。
謝辞
防災科学技術研究所、気象庁、産業技術研究所、高知大学、京都大学の定常観測点の地震データを使用しました。