Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room B

General session » S08. Earthquake Source Processes and Physics of Earthquakes

[S08]AM-1

Wed. Sep 18, 2019 9:15 AM - 10:30 AM ROOM B (Symposium Hall, International Science Innovation Building)

chairperson:Takuji Yamada(Ibaraki University), Nana Yoshimitsu(University of Tokyo)

10:00 AM - 10:15 AM

[S08-21] Spatiotemporal characteristic of frictional properties on the subducting Pacific Plate off the Tohoku region, Japan

*Takuji Yamada1, Meitong Duan1, Jun Kawahara1 (1. Ibaraki University)

1. はじめに

 東北地方東方沖では、太平洋プレートの沈み込みに伴う大地震が繰り返し発生している。本研究では、2003年1月から2018年12月に東北地方東方沖で発生した中規模地震(4.4 ≤ Mw ≤ 5.0)のうち、2.で説明するとおり、プレート境界面の摩擦特性を反映していると考えられる1735地震を選び出し、応力降下量の解析を行った。さらに、2011年東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0;以下では2011年東北地震と略す)を含む過去のMw ≥ 7.0 の地震時すべり分布との関連を議論することにより、応力降下量の空間分布が示唆するプレート境界面の摩擦特性の時空間分布およびその物理的背景について考察を行った。



 2. 解析地震の選択基準

 本研究では深さ方向の震源決定精度を考慮して、Nakajima and Hasegawa (2006)の推定した太平洋プレート境界面から±15 km の深さで起きた中規模地震(4.4 ≤ Mw ≤ 5.0)を選び、解析対象とした。なお本研究では、気象庁によって決定されたマグニチュードMjmaがモーメントマグニチュードMwに等しいと仮定しているが、この仮定の妥当性についても検討済みである。また、解析対象地震のうち、防災科学技術研究所によってメカニズム解が求められている地震については、太平洋プレートの沈み込み角度と調和的な節面を持つことを確認済みである。



 3. 応力降下量解析

 Yamada et al. (2010, 2015, 2017) の手法を用いて、応力降下量の解析を行った。まず、2012年から2018年に発生したMw3.5の地震のうち、解析対象の中規模地震(4.4 ≤ Mw ≤ 5.0)の震源から最短距離にある地震の観測波形を経験的グリーン関数とした。次に、解析対象の地震の観測波形スペクトルを経験的グリーン関数のスペクトルでデコンボリューションし、震源スペクトルがオメガ2乗モデルに従うとの仮定のもと、解析対象地震のコーナー周波数を求めた。最後に、断層面が円形であり、かつ破壊伝播速度がS波速度の90%であると仮定して、Madariaga (1976) のモデルを用いてコーナー周波数から応力降下量を計算した。



 4. 結果および考察

 各地震の応力降下量の解析結果をもとに、緯度・経度それぞれ0.1度ごとに平滑化した応力降下量分布をFig. 1に示す。Fig.1aより、応力降下量の解析結果には空間的な不均質性がみられ、Iinuma et al. (2012)による2011年東北地震の地震時すべり分布と比較すると、地震時すべり域周辺に大きな応力降下量が分布していることがわかる。この結果は、摩擦強度の大きい領域が2011年東北地震時にバリアとして働いたことを示唆している。2011年東北地震前後での時間変化を調べると(Fig.1bc)、宮城県沖および福島県沖において、2011年東北地震後に応力降下量が低下した領域が見られる。現時点でこれらの原因は不明だが、より詳細な時間変化の調査から原因究明を図りたい。なお、本研究の解析対象領域については、Uchide et al. (2014)が2011年東北地震前の応力降下量の空間分布を求めている。本研究とは解析手法が異なるが、本研究はUchide et al. (2014)の結果と調和的である(Fig. 1b)。このことは、本研究の解析結果の信頼性の高さを示唆している。


謝辞:本研究では、Hi-net(防災科学技術研究所)、気象庁、北海道大学、東北大学、東京大学の観測点の地震波形データと、気象庁の一元化震源およびP, S検測値を使用しました。記して感謝いたします。