Seismological Society of Japan Fall Meeting

Presentation information

Room B

General session » S08. Earthquake Source Processes and Physics of Earthquakes

[S08]AM-2

Wed. Sep 18, 2019 10:45 AM - 12:00 PM ROOM B (Symposium Hall, International Science Innovation Building)

chairperson:Toshiko Terakawa(Nagoya University), Keisuke Yoshida(Tohoku University)

11:45 AM - 12:00 PM

[S08-27] Metrics for Aftershock Generation Based on the Energetics of Shear Faulting

*Mitsuhiro Matsu'ura1, Toshiko Terakawa2, Akemi Noda3 (1. Institute of Statistical Mathematics, 2. Graduate School of Environmental Studies, Nagoya Univerisity, 3. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

地震の発生は地殻に蓄えられた弾性歪みエネルギーを断層運動によって解放する過程である。弾性歪みエネルギーは,一般に,体積歪みエネルギー=(応力テンソルの第1次不変量)/18κ と 剪断歪みエネルギー=(偏差応力テンソルの第2次不変量)/2μ の和として表せる。但し,κは体積弾性率,μは剛性率である。Terakawa, Matsu'ura & Noda (in preparation) は,応力テンソルの第1次不変量は平均垂直応力の3倍であり,偏差応力テンソルの第2次不変量の平方根は剪断応力のスカラー計量(例えば,法線応力が平均垂直応力に等しい面に働く剪断応力の (3/2)1/2 倍)であることに着目して,既存断層の剪断破壊に関するモール・クーロンの規準 (Mohr-Coulomb fracture criterion) に擬えたエネルギー論的考察に基づく断層破壊応力 (Energetics-based Failure Stress),EFS = (2μ×剪断歪みエネルギー)1/2 – μr×[(2κ×体積歪みエネルギー)1/2 – Pf],を導入した。ここで,μr 及び Pf はそれぞれ岩石の摩擦係数及び間隙流体圧である。従って,EFS の右辺第2項は断層の実効的な摩擦強度に相当する。

大地震の発生は震源断層周辺域の応力場及び間隙流体圧場の変化を引き起こす。Matsu'ur, Noda & Terakawa (under review) は,地震発生前の地殻応力場(背景応力場)と地震時の応力変化から剪断歪みエネルギーと体積歪みエネルギーの変化を分離して個別に評価する一般公式を導いた。この公式により,地震発生に伴う断層破壊応力 EFS の変化分 ΔEFS は,間隙流体圧の変化を ΔPf として,ΔEFS = [(2μ×地震後の剪断歪みエネルギー)1/2 – (2μ×地震前の剪断歪みエネルギー)1/2] – μr×[(2κ×地震後の体積歪みエネルギー)1/2 – (2κ×地震前の体積歪みエネルギー)1/2 – ΔPf] と書き表すことができる。本講演では,この ΔEFS を剪断破壊のエネルギー論的考察に基づく新しい余震発生評価規準量として,それがこれまで提案されてきた様々な余震発生評価規準量(良く知られているクーロン破壊応力変化量から最近の深層学習解析の結果が推奨する最大剪断応力変化量或いは偏差応力変化テンソルの第2次不変量の平方根まで)を特殊ケースとして包含する合理的一般化であることを数学的に解説する。

例えば,あまりに非現実的ではあるが,背景応力場の等方成分も偏差成分もゼロの場合,つまり解放すべき弾性歪みエネルギーが全く無いにも拘らず地震が起きてしまった場合,地震による等方応力成分の変化も間隙流体圧の変化も無視すれば,ΔEFS の表現式は偏差応力変化テンソルの第2次不変量の平方根に帰着する。ちなみに,偏差応力変化テンソルの第2次不変量は常に至るところで正となるので,それを余震発生評価規準量として採用すると (e.g., Devries et al., 2018),本震発生後の地震活動の活性化は説明できても,静穏化は説明できない。更に,地震時の偏差応力変化テンソルが純粋剪断的であると仮定すれば,ΔEFS の表現式は最大剪断応力変化量に帰着する。一方,地殻の背景応力レベルはある程度以上深いところでは地震による応力変化に比べて充分に高いと考えられる。そのような場合,地震時の偏差応力変化テンソルが純粋剪断的で,間隙流体圧変化が断層法線応力変化に比例すると仮定すれば,ΔEFS は近似的に古典的なクーロン破壊応力変化量 ΔCFS に帰着する。但し,その場合のターゲット断層としては背景応力場の最大剪断面を選ばなければならない。