Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room B

General session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09]AM-2

Mon. Sep 16, 2019 10:45 AM - 12:00 PM ROOM B (Symposium Hall, International Science Innovation Building)

chairperson:Kazuyoshi Nanjo(University of Shizuoka), Kohei Nagata(MRI)

10:45 AM - 11:00 AM

[S09-05] Seismicity prior to the July 2019 southern California M7.1 earthquake

*Kazuyoshi Z. Nanjo1 (1. University of Shizuoka)

米国カルフォルニア州南部で、2019年7月4日にマグニチュードM6.4の地震が発生し、その翌日(5日)に、震央間距離にして約15 km離れた場所で、M7.1の地震が発生した。詳細に見ると、M6.4の地震発生後、北東—南西方向に走行を持つ地震活動と、その活動の北東端を含み、北西—南東方向に走行を持った地震活動が活発化している。そして、その北西端からM7.1の地震の破壊が開始した。
 大地震が続発した例として、2016年熊本地震がある。2016年4月14日に日奈久断層の北部でM6.5の地震が起き、2日後(16日)に、隣接する布田川断層でM7.3の地震が発生した。M6.5の地震からM7.3の地震までに起きた地震活動を解析すると布田川断層でM7.3の地震の前にプレスリップがあった可能性が示唆された(Nanjo & Yoshida, 2017)。この様に、大地震と大地震の間の活動の推移を把握することで、大地震が続発する特徴を捉えられる可能性があり、この知見は今後の地震発生予測の研究の基礎となる。
 そこで本研究では、M6.4の地震発生以降、M7.1の地震までに発生した地震活動を解析した。用いる手法は、グーテンベルグ・リヒター則(GR則)のb値と、地震の集中度の時間変化を捉えるφ値(Lippiello et al., 2012)に基づく。地震の規模別頻度分布はGR則で近似でき、b値は一般に1に近い値をとる。b値が小さい場合、小さい地震に対して大きい地震が比較的多めであることを示す(b値が大きい時は、その逆)。岩石破壊実験から、b値と差応力に負の相関があることが知られており(Scholz, 1968)、また、いくつかの大地震の前にその破壊開始点付近でb値が低かった報告がある(e.g., Schorlemmer & Wiemer, 2005; Nanjo et al., 2012, 2016)。このことは、地震発生前に震源付近で応力が高かったことを示唆する。一方、φ値は、時間と共に地震が集中して発生する様になったか(φ>1)、または、地震が空間的にばらつく様になったか(φ<1)を評価する指標である。1980年代以降の南カルフォルニアのデータをφ値で解析した結果、大地震(M6以上)の発生時刻に近づくにつれて、その震源付近で地震の集中が見られたという報告がある(Lippiello et al., 2012)。
 b値の時空間分布から、地震活動の北西側でM7.1の地震発生前に低めの値(約b=0.7)だったことが分かった。また、同北西側のφ値から、時間と共に、比較的大きめの地震(M3以上)が集中して発生する様になっていたことも分かった(最大値はφ=1.5)。このような結果は、他の地域の活動では見られなかった。以上から、北西側で、大きめの地震(M3以上)が集中する様になったことで、低いb値が観測されたと考える。従って、応力が高かった地域から、M7.1の地震の破壊が開始した可能性がある。
 クーロン応力の計算によると、M6.4の地震の発生により、M7.1の震源付近では断層運動を促進する応力が高くなっており(Stein et al., 2019)、本研究の結果と矛盾しない。大地震が続発する特徴を捉えるためには、先発する大地震後の応力状態を推定することが重要であることを示している。