Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 16th)

General session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

S09P

Mon. Sep 16, 2019 5:15 PM - 6:45 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

5:15 PM - 6:45 PM

[S09P-06] Earthquake activity following very low-frequency earthquakes in the central Ryukyu Trench

*Mamoru Nakamura1 (1. Faculty of Science, University of the Ryukyus)

奄美大島と沖縄島にかけての琉球海溝(南西諸島海溝)の海溝軸付近では、2016年以降、M5以上の地震が頻繁に発生するようになった。最大地震のマグニチュードが5.0以上であった主な地震活動は、2016年5月(最大M5.6)、2018年9月(最大M6.2)、2019年4月(最大M5.6)である。いっぽう、周囲の超低周波地震活動も2016年付近から活動が増加している。この超低周波地震活動の発生時期に海溝軸付近でM5クラスの地震が発生する傾向がある。そこで超低周波地震の活動と海溝軸付近の地震活動の関連を調べた。

超低周波地震カタログとしてNakamura and Sunagawa (2015)のカタログを2019年4月まで延長したものを使用した。地震のカタログは気象庁のものを使用した。期間は2004年1月から2019年4月までである。地震の検知能力を考慮して、気象庁マグニチュード2.5以上の地震を用いた。

解析の結果、地震活動が海溝軸付近で起こり始める約1か月前に周辺域で超低周波地震活動が発生する傾向が2016年以降見られた。2004~2015年にも超低周波地震活動に対応するように見える群発地震活動がみられる(2005年、2009年、および2010年)。しかし、1カ月毎の個数を用いて求めた2004~2015年の超低周波地震活動とM2.5以上の地震活動の相関係数は0.2と低く、あまり関係があるとは言えない。一方、2015~2019年の期間では、群発超低周波地震活動から約1ヶ月後に海溝軸で地震活動が発生し始めた。さらに、この期間の1カ月毎の個数を用いて求めた超低周波地震と地震活動の相関は中程度(0.4)であった。2016年の地震活動では、5月上旬に超低周波地震の群発活動が奄美大島付近で始まり,断続的に沖縄島側に向かって移動した。その約30日後、群発地震が海溝軸近くで始まった。2018年9月の群発地震では, 超低周波地震の群発活動が8月中旬に沖永良部島付近で始まり、その約1か月後に海溝軸付近の群発地震活動が発生した。

海溝軸付近で発生する群発地震は、いずれも沈み込むフィリピン海プレート内で発生する正断層型地震であった。そこで超低周波地震発生時にスロースリップイベント(SSE)がプレート面で発生していると仮定して、SSEによるCoulomb failure stress (delta-CFS)を計算した。その結果、SSEの滑り(100 mmを仮定)が海溝軸近くまで到達した場合、プレート内の正断層運動を加速させるdelta-CFSが正(20~40 kPa)となることがわかった。これらのことは、SSEによるdelta-CFSの変化が沈み込んだプレート内の正断層型地震活動を誘発した可能性があることを示している。