5:15 PM - 6:45 PM
[S09P-15] The seismic activity at 13 km or more depth range around the hypocentral area of the 2016 Kumamoto earthquake sequence
2016年熊本地震は、布田川・日奈久断層帯で右横ずれ、正断層型の応力場において発生した。最大前震(Mj 6.5)、本震(Mj 7.3)発生後も広範囲で非常に活発な地震活動が観測された。Shito et al. [2017]の3次元速度構造をもとに、震源再決定を行うと、最大前震・本震発生後の余震は何枚か面状の分布を示しており、これらの震源分布から断層面形状を決定した[Mitsuoka et al., 2019]。
この余震活動の中でも布田川・日奈久断層の接合部付近、13 km以深で発生した地震活動は非常に特徴的である(図1)。これらは日奈久断層の走向に沿うように帯状に分布しており、2016年熊本地震以前に観測された震源分布では見られない活動である。この深部で発生する地震活動は2019年現在まで、局所的ではあるが継続している。またこの活動が継続している領域の震源分布を詳細に見ると、震源は3つの南から北にかけて深くなる帯状の分布をしていると考えられる。これらの地震の発震機構解を決定すると、横ずれ断層型あるいは正断層型地震の地震であることがわかった。正断層地震は、15 km以浅に多く、15 km 以深だと布田川断層側で起こっている。日奈久断層側は右横ずれ地震が多く発生している。
この特徴的な震源分布は、13 km以浅の震源分布には見られず、また、地震前にも見られないことから、最大前震・本震発生による影響があることが予想される。13 km以深で発生したそれぞれの地震の震源位置で岡田モデル[Okada, 1992]を用いて最大前震と本震による応力変化を計算すると、差応力が数10MPa〜100MPa程度の非常に大きい応力変化が働いたことがわかった。しかし、応力変化テンソルと地震断層面との関係を調べると、応力変化のみによって地震断層面に働く剪断応力方向とは逆向きに地震すべりが生じている地震が多くあることがわかった。2016年熊本地震以前の絶対偏差応力場は、Mitsuoka et al. [2019]によると、正断層応力場と右横ずれ応力場が不安定に混在する領域であり、それらの差応力は数10 MPa〜100 MPa程度であることが推定されている。この地震前の応力場と応力変化の和である応力状態が各地震断層に働いていると考えることができるので、その和の応力テンソルが各地震断層に及ぼす剪断応力の計算を行った。各地震のすべり方向は、約75%が剪断応力方向にすべっており、全地震の90%程度が数MPa〜数10 MPaの大きさの剪断応力が働いて地震が発生したことがわかった。断層モデルは、再決定された震源分布から得られた断層面にAsano and Iwata [2016]のすべり分布モデルを投影したモデルを採用した。
また、発震機構解からは観測極性が理論極性と一致しない非ダブルカップル成分を含むメカニズムがいくつかあることがわかった。Hayashida et al. [2019]によるとこれらの地震はダブルカップル成分に加え、断層クラックの開口によって非ダブルカップル成分を持つことが示されており、本研究の対象領域内の地震活動もこのような発生機構を持つ可能性がある。また、この帯状の分布は低比抵抗帯[Aizawa et al., 2019]に沿うように分布しており、低比抵抗帯の存在との関係があることが考えられる。
これらの結果より流体の関与の可能性もあることから、地震断層に働く応力状態を含め、この深部地震活動の発生について議論を行う。
この余震活動の中でも布田川・日奈久断層の接合部付近、13 km以深で発生した地震活動は非常に特徴的である(図1)。これらは日奈久断層の走向に沿うように帯状に分布しており、2016年熊本地震以前に観測された震源分布では見られない活動である。この深部で発生する地震活動は2019年現在まで、局所的ではあるが継続している。またこの活動が継続している領域の震源分布を詳細に見ると、震源は3つの南から北にかけて深くなる帯状の分布をしていると考えられる。これらの地震の発震機構解を決定すると、横ずれ断層型あるいは正断層型地震の地震であることがわかった。正断層地震は、15 km以浅に多く、15 km 以深だと布田川断層側で起こっている。日奈久断層側は右横ずれ地震が多く発生している。
この特徴的な震源分布は、13 km以浅の震源分布には見られず、また、地震前にも見られないことから、最大前震・本震発生による影響があることが予想される。13 km以深で発生したそれぞれの地震の震源位置で岡田モデル[Okada, 1992]を用いて最大前震と本震による応力変化を計算すると、差応力が数10MPa〜100MPa程度の非常に大きい応力変化が働いたことがわかった。しかし、応力変化テンソルと地震断層面との関係を調べると、応力変化のみによって地震断層面に働く剪断応力方向とは逆向きに地震すべりが生じている地震が多くあることがわかった。2016年熊本地震以前の絶対偏差応力場は、Mitsuoka et al. [2019]によると、正断層応力場と右横ずれ応力場が不安定に混在する領域であり、それらの差応力は数10 MPa〜100 MPa程度であることが推定されている。この地震前の応力場と応力変化の和である応力状態が各地震断層に働いていると考えることができるので、その和の応力テンソルが各地震断層に及ぼす剪断応力の計算を行った。各地震のすべり方向は、約75%が剪断応力方向にすべっており、全地震の90%程度が数MPa〜数10 MPaの大きさの剪断応力が働いて地震が発生したことがわかった。断層モデルは、再決定された震源分布から得られた断層面にAsano and Iwata [2016]のすべり分布モデルを投影したモデルを採用した。
また、発震機構解からは観測極性が理論極性と一致しない非ダブルカップル成分を含むメカニズムがいくつかあることがわかった。Hayashida et al. [2019]によるとこれらの地震はダブルカップル成分に加え、断層クラックの開口によって非ダブルカップル成分を持つことが示されており、本研究の対象領域内の地震活動もこのような発生機構を持つ可能性がある。また、この帯状の分布は低比抵抗帯[Aizawa et al., 2019]に沿うように分布しており、低比抵抗帯の存在との関係があることが考えられる。
これらの結果より流体の関与の可能性もあることから、地震断層に働く応力状態を含め、この深部地震活動の発生について議論を行う。