10:00 AM - 10:15 AM
[S10-04] Numerical simulation on formation of normal faults based on elasto-plastic mechanics
1.はじめに
地盤内に「正断層」が確認されると,それが「活断層」であるかどうかの判定が難しく,その成因が争点となることもある。本報告では,地盤の隆起に伴う傾斜によって形成されたと考えられる正断層群についての数値ミュレーション結果を紹介する。図1に示す水平堆積海底地盤を対象とし,地盤の堆積後は続成作用により固結が進行して強度が増加する点に注目して,固結状況が異なる3種類の地盤が傾斜する際の地盤挙動を調べた。計算には,骨格構造の働きに着目した土の弾塑性構成式SYS Cam-clay model1)を搭載し,慣性力を考慮した水~土骨格連成有限変形解析コードGEOASIA2)を用いた。
2.計算の前提
堆積直後のふわふわの未固結の粘土の状態から,現在の固結した軟岩のような状態まで続成作用が進行して粘土の物性が変化するには,500万年とも言われる大変長い時間経過が必要である。地盤の隆起とそれに伴う傾斜などのイベントは,それが地震によるものか緩慢な地殻変動によるものか原因はいろいろ考えられても,それに要する時間は,500万年から見れば短時間のイベントとみなすと,地盤傾斜の進行中には地盤の「硬さ」が変化することは考えなくてもよい。
3.計算結果
以上を前提に,未固結から固結まで続成作用が進行中の様々な状態の粘土を弾塑性構成式上で再現し,傾斜が進行する地盤でどのようなすべりが生じるかを調べた。図2は,未固結~半固結状態にある地盤が傾斜する際のせん断ひずみ分布を示す。傾斜が進行すると,せん断ひずみの局所化が進展し,すべり線が地表面から深部に向かって発生する。すべり線は経時的に位置を変えて次々と地盤内に発生し,シャベルを掘り入れた時のような形のリストリックな正断層群が形成される(図4【地盤2】)。図3は,正断層群形成時の地盤状態を示す。すべり線に沿ってブロックは後方回転し,砂分優勢として設定した地盤下層では圧縮領域が広がることによって浅部の変位が吸収され,すべり線は不明確になっている。図4は,地盤の固結状態ごとの正断層群形成状況を示すが,リストリックな正断層群が形成される地盤物性は「ごく限定的」であることが計算によって確かめられた。未固結~半固結状態より軟らかい堆積直後の状態では,地盤は流れるだけ(図4【地盤1】)であり,それより硬ければ,すべり線は現れない(図4【地盤3】)。
4.おわりに
以上の計算結果は,(1)未固結~半固結状態で形成された正断層群は,時間が経過して固結が進行すると再度すべりが起こらないことを示すとともに,(2)続成作用による固結化の経年的進行の度合いと照らし合わせることにより,リストリックな正断層群が発現した年代を推定する新しい力学的な手法が存在することを示唆している。
【参考文献】
1) Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano, M. (2002): An elasto-plastic description of two distinct volume change mechanisms of soils, Soils and Foundations, 42(5), pp.47-57.
2) Noda, T., Asaoka, A. and Nakano, M. (2008): Soil skeleton-water coupled finite deformation analysis based on a rate-type equation of motion incorporating the SYS Cam-clay mode, Soils and Foundations, 48(6), pp.771-790.
地盤内に「正断層」が確認されると,それが「活断層」であるかどうかの判定が難しく,その成因が争点となることもある。本報告では,地盤の隆起に伴う傾斜によって形成されたと考えられる正断層群についての数値ミュレーション結果を紹介する。図1に示す水平堆積海底地盤を対象とし,地盤の堆積後は続成作用により固結が進行して強度が増加する点に注目して,固結状況が異なる3種類の地盤が傾斜する際の地盤挙動を調べた。計算には,骨格構造の働きに着目した土の弾塑性構成式SYS Cam-clay model1)を搭載し,慣性力を考慮した水~土骨格連成有限変形解析コードGEOASIA2)を用いた。
2.計算の前提
堆積直後のふわふわの未固結の粘土の状態から,現在の固結した軟岩のような状態まで続成作用が進行して粘土の物性が変化するには,500万年とも言われる大変長い時間経過が必要である。地盤の隆起とそれに伴う傾斜などのイベントは,それが地震によるものか緩慢な地殻変動によるものか原因はいろいろ考えられても,それに要する時間は,500万年から見れば短時間のイベントとみなすと,地盤傾斜の進行中には地盤の「硬さ」が変化することは考えなくてもよい。
3.計算結果
以上を前提に,未固結から固結まで続成作用が進行中の様々な状態の粘土を弾塑性構成式上で再現し,傾斜が進行する地盤でどのようなすべりが生じるかを調べた。図2は,未固結~半固結状態にある地盤が傾斜する際のせん断ひずみ分布を示す。傾斜が進行すると,せん断ひずみの局所化が進展し,すべり線が地表面から深部に向かって発生する。すべり線は経時的に位置を変えて次々と地盤内に発生し,シャベルを掘り入れた時のような形のリストリックな正断層群が形成される(図4【地盤2】)。図3は,正断層群形成時の地盤状態を示す。すべり線に沿ってブロックは後方回転し,砂分優勢として設定した地盤下層では圧縮領域が広がることによって浅部の変位が吸収され,すべり線は不明確になっている。図4は,地盤の固結状態ごとの正断層群形成状況を示すが,リストリックな正断層群が形成される地盤物性は「ごく限定的」であることが計算によって確かめられた。未固結~半固結状態より軟らかい堆積直後の状態では,地盤は流れるだけ(図4【地盤1】)であり,それより硬ければ,すべり線は現れない(図4【地盤3】)。
4.おわりに
以上の計算結果は,(1)未固結~半固結状態で形成された正断層群は,時間が経過して固結が進行すると再度すべりが起こらないことを示すとともに,(2)続成作用による固結化の経年的進行の度合いと照らし合わせることにより,リストリックな正断層群が発現した年代を推定する新しい力学的な手法が存在することを示唆している。
【参考文献】
1) Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano, M. (2002): An elasto-plastic description of two distinct volume change mechanisms of soils, Soils and Foundations, 42(5), pp.47-57.
2) Noda, T., Asaoka, A. and Nakano, M. (2008): Soil skeleton-water coupled finite deformation analysis based on a rate-type equation of motion incorporating the SYS Cam-clay mode, Soils and Foundations, 48(6), pp.771-790.