Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 18th)

General session » S10. Active Faults, Historical Earthquakes

S10P

Wed. Sep 18, 2019 1:00 PM - 2:30 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

1:00 PM - 2:30 PM

[S10P-05] Paleoseismic activity and fault-zone architecture of small-scale faults developed in the Late Cretaceous shale

Kazuo MIZOGUCHI2, Toshinori Sasaki2, *Takahiro Iida1, Takenobu Tanaka3 (1. CERES,Inc, 2. Central Research Institute of Electric Power Industry., 3. Hanshin Consultants)

1.はじめに

 断層破砕帯は,現在までの長い活動を通して,岩石の破砕,摩耗,変質などを経て形成されており,断層が経てきた地下環境(温度圧力や酸化還元状態)や形成史を明らかにする上で,その構成鉱物や岩石組成は重要な情報源の一つである[1,2].しかしこれまでに行われてきた断層破砕帯の研究は,歴史地震や近年発生した地震の地震断層など活動性の高い断層に偏っており,最近10万年間活動していない,活動性の低い断層に関する研究は少ない.そこで,我々は,このような低活動度な断層における破砕帯性状の特徴を抽出する目的で調査を行ってきた[3,4,5].今回,大分県大分市端登において,段丘堆積物に覆われている,活動度の低いと考えられる断層破砕帯の露頭を見出し,地形判読,断層破砕帯構造の記載,粉末X線回折(XRD)分析を行った.


2.露頭周辺の踏査結果および地形判読結果

 断層露頭は,大分県大分市端登の竹中駅南方であり,大野川の河床と,県道631号沿い西側斜面の2か所に認められた.大野川河床沿いには犬飼層の砂岩層が分布しており,砂岩層中に礫岩層,泥岩層が数か所で挟まれているが,この泥岩層中に走向N50°E,傾斜90°,破砕帯幅10㎝程度の断層が発達しているのを確認した.また県道を挟んだ西側斜面の断層は,砂岩優勢の層に挟在する泥岩層中に発達していること,断層の走向,傾斜,破砕帯幅が,河床で認められた断層と同一の特徴を有していることから,河床の断層延長上部であると判断でき,断層は段丘堆積物によって不整合に覆われていることを確認した.地形判読の結果,この断層を不整合で覆う,河成段丘は,標高(約30 m)に位置することから,寺岡ほか(1992)[6]における中位Ⅲ面に相当すると考えられた.


3.段丘礫層と断層との関係性

 露頭観察からは,断層直上の段丘礫層中に断層面の延長部は認められず,断層内にも上位の段丘礫起原の礫が揉みこまれていたりはしない.また段丘礫層の円礫の長軸方向は堆積方向を向いており断層直上部で変化したりはしない.これらのことから断層活動の影響は段丘礫層には達していないと考えられた.さらに詳細に段丘礫層と断層面の関係性を検証するため,断層面と段丘礫層を含む境界部の試料を露頭から採取し,研磨片の作成,CT撮影,薄片観察を行ったが,いずれの観察においても,断層面直上における段丘礫層中での,断層面の延長や,礫の長軸方向の変化など断層活動による影響を示す構造は認められなかった.


4.室内分析結果

 破砕帯は幅10㎝で,5 ㎜程度の断層ガウジと,より粗粒な断層角礫で構成される.ここから断層ガウジ,断層角礫,断層破砕帯の原岩である頁岩を採取し,XRD分析および全岩化学組成分析を行った.XRD分析の結果,原岩,断層岩ともに,構成鉱物の違いはなく,石英・長石が主体で,粘土鉱物としてイライト,緑泥石,スメクタイトを含んでいる.XRDチャートのピーク強度から相対的な量比を比較しても,原岩との明瞭な差は認められなかった.今後さらに解析を進めて,低活動度断層における破砕部性状について鉱物学的・地球化学的特徴を明らかにする.



引用文献:[1]長友晃夫・吉田英一,2009,地質学雑誌,Vol.115,No.10,512-527.[2]丹羽正和・島田耕史・黒澤英樹・三輪敦志,2008,地質学雑誌,Vol.114,No.10,495-515.[3]飯田高弘・岡崎和彦・溝口一生,2015,日本地質学会第122年学術大会講演要旨,R12-P-12,P267. [4]岡崎 和彦・飯田 高弘・溝口 一生・酒井 亨・鈴木 悠爾・稲田 徳之・亀高 正男,2015,日本地質学会第122年学術大会講演要旨,R12-P-10,P266.[5]飯田高弘・溝口一生・佐々木俊法・田中竹延,2018,日本地質学会第125年学術大会講演要旨,R13-P-11,P268. [6]寺岡易司・宮崎一博・星住英夫・吉岡敏和・酒井彰・小野晃司,1992,地域地質研究報告,地質調査所,130p.