Seismological Society of Japan Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Sept. 18th)

General session » S10. Active Faults, Historical Earthquakes

S10P

Wed. Sep 18, 2019 1:00 PM - 2:30 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

1:00 PM - 2:30 PM

[S10P-08] Current status and issues of active fault research as seen from digital active fault map of Japan [Revised edition]

*Kohei Abe1, Ryo Tateishi2, Nao Shimoyama1, Atsushi Miwa1, Tomo-o Echigo3, Shinsuke Okada4, Toshifumi Imaizumi4 (1. OYO Corporation, 2. University of Toyama, 3. GRI Corporation, 4. Tohoku University)

1.新編の概要と本論の目的
「活断層詳細デジタルマップ」の初版(以下,旧版と呼ぶ)の改訂版を「新編」として2018年3月に刊行した.新編では,ビューアを一新し,基図を国土地理院の電子地形図に刷新した.さらに電子地形図とDEMから立体地形図を作成し,その上に活断層線を載せた立体活断層図を収録した.その他,伏在活断層及び1891年濃尾地震以降に生じた主な地表地震断層を新たに図示した.また,活断層帯に関連する文献を属性情報として整理した.さらに,断層関連情報として,断層変位量に関する情報,トレンチ調査位置,主要な活断層を横切る反射法地震探査の測線を表示した.これらの断層関連情報の収録数は,文献情報が約6,000点,断層変位量に関する情報が約8,000点,トレンチ調査の位置が約750点,反射法地震探査測線の位置が約500点である.本論は,新編の編集作業で収集・整理した情報に基づいて戦後の活断層調査研究の推移と成果を振り返り,主に震源断層モデル構築に向けた課題を解決するための提案を示す.
2.戦後の活断層調査研究の進展
戦後から2016年までの活断層研究に関連する文献数,トレンチ調査数,反射法地震探査数の推移を見ると,活断層の基本的な特徴を明らかにした黎明期(1950年代〜1960年代),全国の活断層分布の把握が進んだ揺籃期(1970年代),活断層を対象としたトレンチ調査と反射法地震探査が始まった確立期(1980年代〜1994年),1995年兵庫県南部地震を契機に調査が大きく進んだ発展期(1995年〜2006年),大型研究プロジェクトが中心となっている成熟期(2007年〜2016年)の5つの時代に概ね分けられ,長年活断層調査の主要な手法であったトレンチ調査と反射法地震探査は減少傾向にあることが分かった.
3.これまでの活断層調査から得られた震源断層に関するデータの整理
地震調査研究推進本部により選定されている主要活断層帯(114断層帯)のうち主として陸域に分布する108断層帯を対象として,これまでに得られた活断層の分布と長さ,平均変位速度,単位変位量,また震源断層とは直接関連しないが最新活動時期,活動間隔について整理した.その結果,活断層の分布と長さについては伏在活断層とセグメンテーションの問題が残っていることが分かった.平均変位速度については,横ずれ断層で判明率が低く,断層変位基準の年代を知る方法がないという問題が依然残されている.単位変位量については,横ずれ断層や正断層が卓越する中国地方や九州地方で判明率が低いことが課題として挙げられる.最新活動時期と活動間隔については,トレンチ調査が主要活断層帯に対してほぼ網羅的に実施されているにも関わらず未解明のものが残っている.また,両者が判明しているものについても,年代の幅が活動度から推測される活動間隔を超えており,地震が何時起こるかを予測するために必要な精度を満たしていない.
4.地震動予測のための新たな震源断層モデル作成手法の提案
ここまで,活断層調査が収束傾向にあるにも関わらず,震源断層モデルの構築にあたっていくつかの課題が残されていることを示した.これらの課題はいずれも調査手法の前提に関わるものであり,解決するためには新たな概念を導入する必要がある.ここでは,その一例として,「震源断層ー活断層システム」(佐藤ほか,2001など)をベースとした,大局的な地形と地質から震源断層モデルを構築する新たな方法を提案する.上部地殻にひずみが蓄積され,地震発生層で震源断層がずれ動いた結果,地震が発生し,その繰り返しにより,低地や段丘,尾根・谷等の地形に変位が記録され,長期的には山地や盆地が形成される.この考え方に基づけば,断層運動に伴う変位の長期的な累積によって形成される山地などの地形が震源断層の推定につながる可能性がある.本論では,高まりに着目してこの地形を「断層関連山地」と呼ぶ(図1).震源断層の活動が累積して活断層が地表に現れるとともに断層関連山地が形成され,これを構成する地層が褶曲する.その背斜軸の位置は,断層関連山地の山稜と一致すると考えられる.断層関連山地の前縁は相対的な沈降場となり,そこに現在と同じ応力場となった時代以降の地層,すなわち鮮新―更新統が分布することが予想される.この鮮新―更新統も,その堆積・埋積過程で断層活動の影響を受けて変形する.断層関連山地と鮮新―更新統の境界では,圧縮された地層が高角に傾斜し,地質断層,あるいは座屈褶曲が形成される.このように,大局的な地形と地質構造の両方を照合することで,断層関連山地を抽出することができる.断層関連山地は震源断層の長期的な繰り返しの断層活動を反映して形成されると考えられるため,周辺の地下構造を踏まえてその発達過程を考慮することで,震源断層の大きさや形状,活動セグメントを推定できる可能性がある.
引用文献:佐藤ほか(2001)震源断層ー活断層システムのイメージングの意義と現状.地学雑誌,110,838-848.