Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room B

General session » S11. Various Phenomena Associated with Earthquakes

[S11]PM-1

Wed. Sep 18, 2019 3:15 PM - 4:15 PM ROOM B (Symposium Hall, International Science Innovation Building)

chairperson:Muneyoshi Furumoto(Tono Research Institute of Earthquake Science), Kentaro Omura(NIED)

3:15 PM - 3:30 PM

[S11-01] What are Posibilities of Influencing of the Strong Vertical Impulsive Seismic Motions on the Occurrence of Grate Landslides ?

*Hroshi Mehara1 (1. Geosystem Research Institute)

強力な鉛直地震動が構造物を損壊させる事は,120年程も前に海震の震度階表(ルドルフの表[1898],シーベルグの表[1923])が作られていたことから知られていた筈だが,ここ60年程陸の地震関係者はそのことを忘れていたようで,船舶工学者から「地震で船舶が損壊する時の地震波は疎密波であることは常識である.」と,兵庫県南部地震の被害事例を見直している時にこの指摘を受けた.
それまで,構造物の破壊経過と体験証言を基に,構造物を破壊する強力な鉛直地震動が存在することを証明しようと活動していたが,問題の地震波形がまだ正確には観測できていない事から,なかなか理解が浸透しにくかった.ところが海震度階級表と船舶工学者の指摘を紹介すると雰囲気は大きく変わり始めた.しかしながら,構造物を破壊する威力を持つ鉛直地震動による被災事例を調べるにつれ,その現象の複雑さと捉えにくさも明らかになってきた.最近感じている視点から,問題の波の特徴を掻い摘んで表すと次のようになる.
1. 従来の地震計では捉えられない高周波だが破壊力も持つ疎密波の地震動である.
2. 地震の主体的な面と随伴的な面の両面性を持つ現象である.
3. 被害形態が線状で百m程の場合もあるが,多くは局在波の突き上げ力による被害形態を示す.
4. 波形頭部の外形が平坦な場合とか,釣鐘型の場合もある.
5. 衝撃的な鉛直波動と構造物の状態により被害形態は多様性を示す.
6. 強力な鉛直波動が主震動より3分程後に生じる場合等(後発鉛直キラーパルス)がある.
7.発震原因は岩盤の割れでなく,物質の相変化によると予想される.
以上のような特徴を踏まえて,大規模な地滑りの被害が生じた事例を見直してみる.岩手・宮城内陸地震では荒砥沢ダム上流で大規模な地滑りが生じた(図1(a)).この地震では,1.一の関西の地震計の鉛直震動は3866galの過去最大の記録値が得られた.しかしこの記録の解釈には,ある地層幅を持って地盤が持ち上がるトランポリン効果が想定されている.2.それは鉛直波動による突き上げ作用が地表近くで増幅されたことを連想させる.3.震源断層は鉛直に近い形状で逆断層の動きを示す.4.県境に近い栗駒衣川線沿い河川のブロック護岸に,かなり長い水平亀裂が複数個所ある.以上の事象から軽石層の存在だけが被害の規模を大きくしたのではなく、巨大な威力の鉛直地震動の影響が加わった事が予想される.
次に北海道胆振東部地震では広範囲に亘り,一定の方向性が見られない,山の斜面の滑り崩壊が生じた(図1(b)).ここでは火山灰層の存在が斜面崩壊の特徴をなすものと考えられている.しかし震源断層は深さ16km以深と深いものの,鉛直面に近い状況で,逆断層の動きが顕著である.明確な鉛直地震動によるとみられる災害事例は未確認であるが,斜面崩壊の形態と震源断層の特性から,強力な鉛直地震動が散在的に作用した可能性は高いと思われる.
このような大規模な地滑りを起こすことに関与する,鉛直地震動の威力は大きいことが予想され,安全対策上,観測体制を工夫することはもちろん,詳しい調査と解析が望まれる.