Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room B

General session » S12. Rock Mechanics, Crustal Stress

[S12]PM-1

Wed. Sep 18, 2019 2:30 PM - 3:15 PM ROOM B (Symposium Hall, International Science Innovation Building)

chairperson:Muneyoshi Furumoto(Tono Research Institute of Earthquake Science), Kentaro Omura(NIED)

2:45 PM - 3:00 PM

[S12-02] Correlation of frictional property on volcanoclastic sediment with changes in its mineral assemblage and microstructure

*Akari Fuke1, Tetsuro Hirono1, Shunya Kaneki2 (1. Science, Osaka University, 2. DPRI, Kyoto University)

先行研究において,主要岩石及び鉱物の摩擦係数は,1 nm/sの低すべり速度から1 m/sの高すべり速度まで,広いすべり速度範囲で系統的に調べられてきた (Di Toro et al., 2011).多くの岩石の最大摩擦係数は,Byerlee則にならい0.6-0.85の間に収まるが,0.1 m/s以上の高速域での定常摩擦係数は0.1-0.4程度にまで低下する.このような高速域での断層の動的弱化は,地震時における応力降下量を増加させ,地震時のモーメントマグニチュードの増大に繋がることから,非常に重要な現象である.
 断層の動的弱化機構については,サーマルプレシャライゼーションやシリカゲル潤滑などの様々なメカニズムが先行研究により提案されている(例えばSibson, 1973; Goldsby and Tullis, 2002).しかし,これらの弱化メカニズムも含め,断層岩の摩擦係数及び動的弱化機構が作用した場合の寄与の程度は,厳密な意味では断層岩を構成する鉱物種に依存すると考えられる.例えば,タルクやスメクタイトなどの層状ケイ酸塩鉱物は,動的弱化を伴わない低速域においても,Byerlee則から外れた低い摩擦係数を示すことが室内摩擦実験から報告されている(Moore and Lockner, 2004).同様に,日本海溝のように層状ケイ酸塩鉱物を含む天然の断層から採取した試料においても,顕著に低い摩擦係数を示すことが確認されている(Remitti et al., 2015).
 さらに,前述のような弱い鉱物だけでなく,断層滑りによって生成された非晶質物質が水和したものも,摩擦強度の低下をもたらすと考えられている(Nakamura et al., 2012).また,回転摩擦実験においても,非晶質ナノシリカの形成に起因した動的弱化が確認されている(Rowe et al., 2019).このような非晶質物質は,火山ガラスとして火山灰に多く含まれており,一部の地層群において火山砕屑性堆積物を形成しているが,火山砕屑性堆積物の摩擦特性は未だ不明となっている.
 そこで本研究では,非晶質物質(火山ガラス)の影響を考慮することによって,火山砕屑性堆積物の摩擦特性及びその微小構造の変化との依存性を調べた.過去の房総沖プレート境界断層の天然試料について0.0002–1.0 m/sの速度領域で摩擦実験を行った.その結果,乾燥条件では,0.1 m/s以下の速度領域において定常摩擦係数が0.48–0.65という値を示していたが,1.0 m/sにおいて0.16-0.21にまで弱化した.一方,湿潤条件では,0.001 m/s以下の速度領域において定常摩擦係数が0.44-0.65という値を示していたが,0.1 m/s以上の速度領域において0.14–0.30にまで弱化した.乾燥状態の結果は,従来までの他の主要鉱物を用いた実験結果の傾向に準拠しているが,湿潤状態において0.01 m/sで弱化するという結果は,極めて特異である.
これらの剪断摩擦実験前後試料についてX線粉末回折を行った結果,スペクトルから非晶質物質の存在を示す2θ=20–30°のハローピークの存在が確認された.また,XRDプロファイルからRockJockソフトを用いて鉱物組成定量解析を行った結果,母岩には,どの鉱物にも分類されない鉱物(Unfiited component)が50.0±2.0 wt.%含まれていることが明らかになった.これは火山ガラスに由来するものと考えられる.摩擦実験後の試料では,Unfitted componentが5.0–18.0 wt.%増加しており,低速滑りであるほどその増加量は大きかった.また,湿潤状態よりも乾燥状態における増加量の方が大きかった.次に,剪断摩擦実験前後の試料について薄片を作成し,微小構造観察を行ったところ,摩擦係数の低下に伴いY面の形成が確認され,高速すべりはせん断応力の局所集中を引き起こしうることが明らかになった.このすべり速度と応力集中の関係は,水和した火山ガラスの存在により,他の鉱物と比較してより低速域にシフトしている可能性がある.
以上,火山性砕屑物では火山ガラスの水和や摩耗による強度低下が起こっている可能性を示唆し,これは,火山性弧に位置するプレート沈み込み断層での地震時の破壊伝播及びそのすべり挙動に影響を与えているかもしれない.