S12P

[S12P-05] Experimental constraints on origins of high Vp/Vs anomalies in slow slip regions

*Shin-ichi Uehara Uehara¹, Kaya Nishimura¹, Kazuo Mizoguchi² (1. Graduate school of Science, Toho University, 2. Central Research Institute of Electric Power Industry)

世界各地のプレート沈み込み帯のプレート境界では、地震発生領域の下限付近でスロースリップが観測されている。このスロースリップのメカニズムを理解することは、地震防災や、断層メカニズムのさらなる理解などに関連して重要である。この現象の発生メカニズムにおいて、高間隙流体圧が重要な役割を果たすと、しばしば考えられてきた。そう考える根拠の一つは、この現象が起きているプレート境界付近の海洋地殻内で高Vp/Vs比(P波速度とS波速度の比)異常が観測されていることである。過去の室内実験により、高間隙流体圧と高Vp/Vs比異常が関係づけられている。しかし、断層周辺の岩石はせん断変形に伴うダメージを被っていると予想されるが、そのような岩石においても、高Vp/Vs比異常は、直接的に高間隙圧を意味するのか否かについては、未だ不明瞭である。本研究では、まず、深部のプレート沈み込み帯境界での海洋地殻中のダメージの度合いのひとつの指標として、南海トラフの四万十帯付加体中の変成玄武岩内部の鉱物脈密度を測定した。そして、ドレライト(粗粒玄武岩)を加熱冷却することで内部に亀裂を発生させた試料について、等方圧条件(封圧50MPa、間隙水圧0〜49MPa)でVp、Vsを測定する実験をおこない、Vp/Vs比の応力およびダメージ依存性について検討した。ダメージの度合いが大きいほど、また封圧と間隙圧の差が小さいほど、Vp/Vs比は大きくなる傾向がみられた。本実験結果をスロースリップの発生領域に外挿できたとすると、岩石中の亀裂密度が1.5 mm^–1よりも大きい場合(これは、測定した変成玄武岩中の鉱物脈密度と同程度)、1.85程度のVp/Vs比(南海トラフで観測される高Vp/Vs比の下限値)は、間隙圧が静水圧であったとしても説明できる。このことは、スロースリップ発生域における高Vp/Vs比異常の主な要因として、高間隙圧だけでなく、岩石中のダメージの度合いも挙げられることを示唆する。Please see in detail Nishimura et al. (2019).

Reference: K. Nishimura, S. Uehara, and K. Mizoguchi, JGR Solid Earth, 124, https://doi.org/10.1029/2018JB016929.