Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 18th)

General session » S12. Rock Mechanics, Crustal Stress

S12P

Wed. Sep 18, 2019 1:00 PM - 2:30 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

1:00 PM - 2:30 PM

[S12P-06] Effects of ambient temperature on the frictional strength and frictional heating of dolerite in an argon atmosphere

Yuuki Yokoyama1, *Michiyo Sawai1, Kyuichi Kanagawa1 (1. Chiba University)

大地震の発生時には断層が高速で大きく変位するため、断層内部に顕著な摩擦熱が発生する。この発熱によって、断層内の物質が瞬時に溶融や熱分解をすることで、断層が著しく弱くなることが90年代以降明らかとなってきた(例えばTsutsumi and Shimamoto, 1997)。地震時の断層挙動に対する温度の重要性は広く認識されてきたが、震源核が形成され地震発生時のすべり速度に至るまでの中速度領域(数mm/s ~ 数cm/s)に対する温度効果の見積もりはこれまで数例しかなく(Noda et al., 2011)、すべり速度依存性に与える背景温度の効果は明らかではない。またYao et al. (2015) では、熱伝導率の異なる母岩に同じ断層ガウジを挟み高速摩擦実験をおこなった結果、熱伝導率の違いによって摩擦係数が大きく異なることが示された。これは断層周辺の温度が断層の強度に大きく影響する可能性があることを示唆するものである。そこで本研究では、高温条件下での中速摩擦実験を実施し、岩石の摩擦特性が背景温度の変化に伴いどのように変化するのかを検証する。

実験には比較的熱破壊に強いベルファスト産ドレライトを使用し、千葉大学設置の回転式高温摩擦試験機を用いた。地下の断層は酸素に乏しい環境下にあることを考慮し、アルゴン雰囲気下(酸素濃度0.2 %程度)で、垂直応力1 MPa、すべり速度1 ~ 300 mm/s、各速度におけるすべり量10 ~ 20 mの条件で実験をおこなった。試料ホルダーを高周波コイルによって加熱することにより、背景温度20oC ~ 500oCの条件下で力学挙動および摩擦発熱にどのような変化が見られるかを調べた。

比較的低速のすべり速度1 ~ 30 mm/sでは、背景温度20oCおよび100oCで速度弱化の傾向示し、摩擦係数は1 mm/sで約0.81 ~ 0.83から30 mm/sで約0.73へ低下した。一方背景温度300oC以上では、わずかに速度弱化の傾向を示すものの、摩擦係数はおよそ0.81 ~ 0.85の値を示し大きな変化が見られなかった。しかしすべり速度100 mm/sになると20oCおよび100oCでは摩擦係数がわずかに上昇し速度強化の性質を示したのに対し(μ = 0.75 ~ 0.79)、300oC以上では明瞭な速度弱化の傾向を示した(μ = 0.67 ~ 0.76)。さらに300 mm/sになるとすべての温度条件で摩擦係数が低下し、その低下量は背景温度が高くなるほど大きくなることがわかった(摩擦低下量Δμ = 0.1 ~ 0.38)。つまりドレライトは、比較的低速度では温度条件によって力学挙動にわずかな違いは見られるものの、背景温度が大きく変化しても摩擦係数には大きく影響しない一方、高速になると背景温度が高温なほどより低速で顕著に弱化する傾向が認められる。これは断層の強度(弱化)を考える際に、摩擦発熱だけでなく、真の接触面積に対する背景温度の効果などを考慮する必要性を示唆するものと考えられる。
また摩擦発熱に関しては予察的段階ではあるが、力学挙動と良い対応関係を示しており、特に高速域での著しい速度弱化時には断層面での温度上昇が認められることが低温条件下だけでなく高温条件下でも認められている。現在温度測定に関しては進行中であり、講演ではこちらも合わせて報告する予定である。