Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room D

General session » S14. Earthquake Prediction and Forecast

[S14]PM-1

Wed. Sep 18, 2019 2:30 PM - 4:00 PM ROOM D (International Conference Halls I)

chairperson:Yoshinari Hayashi(Faculty of Societal Safety Sciences, Kansai Univ.), Masajiro Imoto(National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

2:45 PM - 3:00 PM

[S14-02] Earthquake predictions by the atmospheric ion of different points

*Kenta Watanabe1, Naoyuki Yada2 (1. Graduate school of Kanagawa Institute of Technology, 2. Kanagawa Institute of Technology)

1. はじめに
 我が国は世界でも有数の地震大国であり、大規模地震による被害は甚大である。地震発生前には様々な前兆現象が報告されている(1)。そこで本研究では、地震前兆現象のひとつとされる大気イオン濃度の異常(2)に着目した。
 NPO法人e-PISCOでは、全国規模で大気イオン濃度の測定を継続的に行っており、本研究では全国9ヶ所の測定データを使用し、地震発生日時の予測に加えて震央の予測について考察を行った。

2. 測定装置および予測方法
 大気イオン濃度の異常値は、地震発生日が近づくに従って減少していく傾向がある。一例として、北海道河東郡音更町における2019年3月から4月の大気イオン濃度のグラフを図1に示す。本研究では、2つの基準値を設定して異常値を判断した。初めに計測された最大異常値をA、その後に再び計測された異常値をBとし、2つの異常値を直線で結ぶことにより、日付軸と交わった前後72時間を地震発生の予測期間とした。
 測定期間は2017年3月1日から2019年6月30日までの27ヶ月である。本研究では予測の対象とする地震を「対象地震」と呼称し、各測定地点から半径500 km圏内で発生したマグニチュード (以下Mと略す) 5.0 以上の地震と定めた。なお、発生した地震の情報については、気象庁発行の週間地震概況(3)を参考にした。また、予測期間に複数の対象地震が発生した場合には、最も規模が大きいものを選択した。さらに、複数の測定地点の予測が同時期を示した場合には、「最大異常値 Aの発生が遅かった測定地点が最も震央に近い」と推論を立て簡易的な震央の予測を行った。

3. 測定結果
 前述の予測方法を用いた結果、測定期間中に発生した対象地震は114回であり、そのうち56回については、は時間的予測(事前の捕捉)に成功した。また予測の総数174回のうち、79回が的中した。本研究では予測に関する評価基準として、予測的中率および地震捕捉率を算出して評価を行った。予測的中率とは、予測を行った総数のうち、予測が的中して対象地震が発生した割合であり、地震捕捉率とは、発生した対象地震の総数のうち、予測が的中した割合である。
 表1に測定地点別の予測的中率および地震捕捉率を示す。測定器の故障により、測定を長期間行うことができなかった札幌測定点、小山測定点、飯田測定点を除き、対象地震数に大きな差はなかった。予測回数については、連続した異常値などが原因となり、予測方法を適用できない測定地点が存在したため、予測回数に大きな差違が生じた。また、対象地震数と比較して予測回数が少ないことから、地震捕捉率は全体的に低い結果となった。一方で、予測的中率については測定地点ごとにばらつきがみられたが、複数の測定地点にて予測が同時期を示し、異なる測定点から同じ地震について予測に成功した。
 的中した予測の一例として、2019年4月11日17時18分頃に三陸沖を震源として発生したM 6.2の地震に着目する。
 表2は同時期に複数地点で異常が見られた時の予測を示している。表2のように複数の測定地点において地震発生予測が同時期を示した場合には、最大異常値 Aの発生が最も遅かった音更測定点から半径500km圏内にて4月10日前後の地震発生を予測した。
 実際の地震発生は各予測の前後72時間以内の4月11日17時18分頃であることから、時間的予測は成功したといえる。また、発生場所についても音更測定点が震央に最も近かったことから、簡易的ではあるが発生場所の予測に成功した。
 同様に複数の測定地点で地震発生予測が同時期を示したのは20回であり、そのうち8回は簡易的な震央の予測に成功した。しかし、対象地震の範囲が広過ぎることや、長期間のデータを使用したにもかかわらず、発生した対象地震の総数に対して震央の予測を行うことができた回数がかなり少ないことから、現状では地震発生日時と震央の予測を同時に行うことは困難であるといえる。

4. おわりに
 大気イオン濃度の異常より対象地震の約45%の発生日時を事前に予測することができたが、震央の予測については複数の測定地点のデータを用いても現状は不十分な確度であった。
 測定に使用したCOM-3700において、地震前兆現象となる異常を示す地震の発生範囲は半径300 km圏内とされているが、本研究では震央の予測について広域での検証を行うため、対象地震を各測定地点より半径500 kmとした。そのため、より正確に震央の予測を行うには、対象地震の範囲を限定しても現在の対象地震と同等の範囲をカバーできるよう測定地点を増やすなど、データを蓄積していく必要がある。
 地震予知には「時間」、「規模」、「場所」の3要素全てが備わらなければならないため、天気予報のように地震予知が身近な存在になるのには、時間を要するであろう。

参考文献
(1) 弘原海弘, 前兆証言1519!, 東京出版, ISBN4-924644-49-8, 1995.
(2) NPO法人 大気イオン地震予測研究会 e-PISCO, http://www.e-pisco.com/ (2019).
(3) 気象庁, 週間地震概況 No.1678 ~ No.1800 (2017-2019).