Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room D

General session » S14. Earthquake Prediction and Forecast

[S14]PM-1

Wed. Sep 18, 2019 2:30 PM - 4:00 PM ROOM D (International Conference Halls I)

chairperson:Yoshinari Hayashi(Faculty of Societal Safety Sciences, Kansai Univ.), Masajiro Imoto(National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

3:00 PM - 3:15 PM

[S14-03] Measurements of Animal Abnormal Actions for Earthquake predictions

*Naoyuki Yada1, Kenta Watanabe2 (1. Kanagawa Institute of Technology, 2. Graduate school of Kanagawa Institute of Technology)

1. はじめに
 動物と地震の関係には、昔から様々な伝承や記述が存在しており、最近の大規模地震に関しても報告がされている(1)(2)。しかしながら、動物の異常行動を活用して地震の予知に役立てようとする研究例は、世界的にも非常に珍しく、本研究グループの研究に対しても海外メディアが取材に来るほどである(3)。その一方で地震前に顕れる動物の異常行動の報告例は、いずれも定性的な報告例であり、地震予知に応用するためには、平常時から定常的に動物の行動を、定量的に計測する必要がある。
 本研究では動物の異常行動の定義として、以下の(1)式を用い、本研究で予測を行う対象としての地震は、マグニチュード4.5 以上の半径350 km 以内で発生する地震とした。

動物の行動回数>1ヶ月前までの平均行動回数+標準偏差の1.5 倍 (1)

2. 動物の行動測定装置
 本研究では多地点での動物の異常行動情報を収集するために、図1に示すような行動測定キットを制作して協力者または協力機関に提供した。本研究で行動を計測した動物のうち、犬やネコ以外の動物は、このシステムを使用した。すなわち、水槽Cの両側にD のセンサーを配置して、その間を動物Bが横切る回数をカウンターAで記録する装置である。鳥やヘビの場合には、水槽Bの替わりに鳥かごやプラスチックケースを使用している。

3. 2019年5月までの測定結果
 地震が発生する予測情報に関する評価基準としては、的中率と捕捉率の二つをあげることができる。すなわち、的中率とは、異常行動を示した回数のうち実際に地震が発生(的中)した回数の割合であり、本研究では当日も含めて3日以内に発生したものを的中とした。また捕捉率とは、予測対象とした地震の回数のうち、3日前までに動物が異常行動を示した回数の割合である。なお、予測対象とした地震の回数は測定地点によって異なる。
 表1には、2018年3月~2019年5月の本研究の研究成果として、各動物の異常行動回数と発生した対象地震の関係をまとめた。表中の測定地点の記していない動物は神奈川工科大学 (神奈川県厚木市) で飼育している動物である。
 表1から明らかなように、2019年5月までの計測では、的中率が平均で 34 %、捕捉率が平均で 25 % であり、この数値は測定地点を増やすことで、さらに上昇するものと考えている。

4. 動物の異常行動計測ネットワーク
 多地点によって動物の行動計測が遂行されるようになった場合、大きな問題となるのが計測データの収集・整理である。また、全国から提供された計測データを如何に公表して、それに基づく地震発生予測を如何に伝達するかも重要な課題の一つである。
 計測協力者には、児童・生徒などの子供たちの参加も想定しているため、誰でも気軽にアクセスして自分たちの計測データを報告できるシステムの構築が必要となる。本研究グループでは、2016年度から計測データの収集にGoogleから提供されているフリーのクラウド上のドライブファイルを使用している。
 このシステムを利用することにより、インターネット環境とGoogleアカウントさえあれば、各地の計測協力者が指定の箇所にデータを書き込むことが可能である。
 書き込まれた計測データに基づいて、動物の異常行動を判断することは、本研究責任機関である神奈川工科大学で行う。また、計測協力者のうち希望する方には、異常行動の判別に使用するExcelファイルの提供も予定している。

5. おわりに
 日本のように毎年のように人的被害をもたらすような大規模な地震が発生している国においては、そのような地震を、その発生前に予測することができれば防災上だけでなく、経済的な面からも大きなメリットがある。地震予知は様々な研究機関において種々の手法で試みられており、その予測精度はこの半世紀でかなり上がってきている。しかし、未だに確実な予測手法が確立されているわけではなく、多くの研究者が試行錯誤しながら挑戦しているのが現状である。
 そのような現状において、子供たちにも協力をしていただく「動物の異常行動の計測」による地震予知は、防災意識の啓蒙活動の面からも、予測が外れた際の非難を躱す面からも、期待できる手法の一つと考えられ、そのためのインターネット環境を利用した情報収集および収集した情報に基づく予知情報の発信は、未だに「天気予報」のように「地震予報」が発表されない「地震予知」の分野に、大きな一石を投じることになると考えている。

参考文献
(1) 弘原海弘, 前兆証言1519!, 東京出版, ISBN4-924644-49-8, 1995.
(2) 矢田直之, 自然災害-この予兆に気をつけろ!(地震予知に挑む②), ネコ・パブリッシング社, ISBN 978-4-7770-1872-7, 2015.
(3) for example, FRANCE24, environment animals all the answers earthquake prediction pollution detection cats tadpoles cows, English version:http://www.france24.com/en/20130126-environment-animals-all-the-answers-earthquake-predictions-pollution-detection-cats-tadpoles-cows (2013).