[S14]PM-1

[S14-06] Long-term Probability of a Great Earthquake along the Kurile Trench, Japan and its epistemic uncertainty

*Masajiro Imoto¹, Nobuyuki Morikawa¹, Hiroyuki Fujiwara¹ (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

北海道東部の津波堆積物の調査から，十勝沖から根室沖を震源とする超巨大地震（17世紀型）が繰り返し発生したことが推定されている．政府地震調査委員会は，BPT分布モデルを用いて今後30年以内の地震発生確率は７～40％と評価した．また，震源域が不特定な地震として，ポアソン過程モデルを適用して5 ～9％と評価した．

発生確率の不確定性に関しては，調査委員会報告書(2017　表7)の地震発生時期を用いて， 1) Parsons (2008)の方法に準じたBPT分布モデルとポアソン分布モデルの適合度比較や，2) 異なる関数形を仮定して，発生時期確率密度関数の影響を検討し，これまで次のような結果を得た．

1)ポアソン分布モデルに対するBPT分布モデルの尤度比は藻散布沼の系列で0.70-0.79となり，ポアソン分布モデルの尤度が高い．これに対し，霧多布湿原の系列では尤度比は約2.0となりBPT分布モデルの方が高い． 2)確率密度関数の違いによる尤度比の変動は1割程度である．BPT分布モデルに基づく今後30年間に地震が発生する確率の平均値は，藻散布系列で 約11%，霧多布系列で21％前後である．平均値は，モデルパラメータの尤度（合致数）を重みとした加重平均である．密度関数の違いによる確率値の変動は僅かである．ポアソン分布モデルでは，データや確率密度関数の関数形の影響は僅かで，平均値は約8%である．

藻散布沼系列と霧多布湿原系列で最適モデルが異なることや確率値に大きな差があることから，これら２カ所の系列を統合して解析することを試みた．表７に記載された各地点２つの推定堆積期間(68%および95%区間)に基づき推定した確率密度分布を比較する（図１）．ここで，縦軸はそれぞれ最大値で正規化してある．また，密度関数はそれぞれの区間で68%あるいは95%を満たす一様な関数として求めた．実線は藻散布沼の系列であり，点線は霧多布湿原の系列である．

２地点の推定発生期間を比較すると，５回のイベントのうち４回で発生期間の一部が重なるが，残り１回（No. 4）では全く重なっていない．２地点の推定堆積期間に重なりが認められる場合には，信頼度の高い発生時期を特定することが可能となるが，No.4ではそれが困難となる．このため，藻散布沼系列と霧多布湿原系列を相異なる独立した時系列として処理する．

統合処理の結果，BPT分布モデルでは確率の平均値は約14%となった．この計算では，藻散布沼系列と霧多布湿原系列を独立な時系列としているが，これらの堆積物が同一の地震を対象としていることを考慮すると，独立でない場合を検討する必要がある．