10:45 AM - 11:00 AM
[S15-05] On the large peak ground motion observed during the 2018 M6.6 Eastern Iburi, Hokkaido, Earthquake
1.はじめに
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震の際に、震央距離10㎞~20㎞程度の震源に近い観測記録を含む多数の強震記録が得られている。これらの観測記録には、断層最短距離において25㎞以上になっているにもかかわらず、最大加速度で1300ガル程度(IBUH01追分観測点)、最大速度で150カイン強(IBUH03厚真観測点)の大振幅地震動も含まれており、震源域周辺における地震動が大きかったことが示され、地震被害の原因を物語っている。本研究では、これらの強震記録を分析して、地震動距離減衰特性の観点から地震被害をもたらした地震動の特性を明らかにすることを目的としている。
2.データ
検討に用いた強震記録は、K-NET、KiK-netで得られた観測記録のうち、断層最短距離(FD)が300㎞以内のものとした。検討対象とした地震動指標は、最大加速度(PGA)と最大速度(PGV)で、その求め方は検討対象の地震動予測式にあわせて、(1)水平2成分のうち大きい方の値、(2)水平2成分のベクトル和または(3)その平均値、(4)ラジアル成分及びトランバース成分の最大値、などとした。一方、断層最短距離の計算に用いた断層モデルは、国土地理院による断層モデルを気象庁震源を含むように深い方にずらして25㎞~45㎞の範囲にある部分とした。計算に用いた地震のマグニチュードは気象庁によりMwは6.6、MJMAは6.7とし、震源深さは37㎞とした。
3.検討方法
本研究では、国内で提案されている主な地震動予測式と観測記録の残差を計算し、残差の平均値が最も小さい3つの地震動予測式を選択し、観測値と予測値の比較検討を行ったうえ、その残差を用いて大振幅PGA、PGVの生成について考察を行う。なお、残差を計算する際には、それぞれの地震動予測式にあわせて必要な入力パラメータを与え、さらにその地震動予測式で用いられている地盤増幅率で観測記録を補正した。
4.結果
国内で提案されている主な地震動予測式と観測記録の残差を計算し、その残差の平均値を求めた。その結果、平均残差の最も小さかった3つの地震動予測式はKanno et al. (2006、Kanno06と略す)、司・翠川(1999、SM99)及びMorikawa and Fujiwara(2013、MF13)によるものであった。これらの地震動予測式の予測値と観測値の比較検討の結果をPGVを例にして図1に示す。図の上段は予測値と観測値の比較、下段は残差と距離の関係をそれぞれ示しており、上段の図の凡例に地震動予測式の略称を示している。なお、これらの図のうち、Kanno06とMF13の2式についてPGVは水平2成分のベクトル和、対象地盤はそれぞれVS30300m/sとVS30350m/sのものである。SM99についてPGVは水平2成分のうち大きい方の値、対象地盤はVS30600m/sである。図1から、いずれの結果も遠距離では地震動予測式と観測記録の整合は比較的よいが、近距離では観測記録は予測値を大きく上回ることが分かった。そこで、断層最短距離(FD)が35㎞程度以内の観測記録とKanno06式による残差と野津・長尾(2005)によりスペクトルインバージョンで求められた地震基盤相当からの増幅率との関係を調べた。その際に、野津・長尾(2005)による増幅率の周期0.5秒~1.6秒の平均増幅率をPGVと対応するものとした。その結果、平均増幅率が大きいほど残差が大きいことが見受けられ、振幅の大きい観測記録に深部地盤の影響がみられることが示唆された。
参考文献
Kanno et al. (2006),BSSA;
気象庁、http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/mech/cmt/fig/cmt20180906030759.html;
国土地理院、https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/H30-hokkaidoiburi-east-earthquake-index.html;
野津・長尾(2005)、港空研資料1112;
Morikawa and Fujiwara(2013), JDR;
司・翠川(1999),日本建築学会構造系論文集.
謝辞
K-NET及びKiK-netの観測記録を使用した。本研究は文部科学省からの委託事業である「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一部として実施した。記して関係者に感謝を申し上げます。
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震の際に、震央距離10㎞~20㎞程度の震源に近い観測記録を含む多数の強震記録が得られている。これらの観測記録には、断層最短距離において25㎞以上になっているにもかかわらず、最大加速度で1300ガル程度(IBUH01追分観測点)、最大速度で150カイン強(IBUH03厚真観測点)の大振幅地震動も含まれており、震源域周辺における地震動が大きかったことが示され、地震被害の原因を物語っている。本研究では、これらの強震記録を分析して、地震動距離減衰特性の観点から地震被害をもたらした地震動の特性を明らかにすることを目的としている。
2.データ
検討に用いた強震記録は、K-NET、KiK-netで得られた観測記録のうち、断層最短距離(FD)が300㎞以内のものとした。検討対象とした地震動指標は、最大加速度(PGA)と最大速度(PGV)で、その求め方は検討対象の地震動予測式にあわせて、(1)水平2成分のうち大きい方の値、(2)水平2成分のベクトル和または(3)その平均値、(4)ラジアル成分及びトランバース成分の最大値、などとした。一方、断層最短距離の計算に用いた断層モデルは、国土地理院による断層モデルを気象庁震源を含むように深い方にずらして25㎞~45㎞の範囲にある部分とした。計算に用いた地震のマグニチュードは気象庁によりMwは6.6、MJMAは6.7とし、震源深さは37㎞とした。
3.検討方法
本研究では、国内で提案されている主な地震動予測式と観測記録の残差を計算し、残差の平均値が最も小さい3つの地震動予測式を選択し、観測値と予測値の比較検討を行ったうえ、その残差を用いて大振幅PGA、PGVの生成について考察を行う。なお、残差を計算する際には、それぞれの地震動予測式にあわせて必要な入力パラメータを与え、さらにその地震動予測式で用いられている地盤増幅率で観測記録を補正した。
4.結果
国内で提案されている主な地震動予測式と観測記録の残差を計算し、その残差の平均値を求めた。その結果、平均残差の最も小さかった3つの地震動予測式はKanno et al. (2006、Kanno06と略す)、司・翠川(1999、SM99)及びMorikawa and Fujiwara(2013、MF13)によるものであった。これらの地震動予測式の予測値と観測値の比較検討の結果をPGVを例にして図1に示す。図の上段は予測値と観測値の比較、下段は残差と距離の関係をそれぞれ示しており、上段の図の凡例に地震動予測式の略称を示している。なお、これらの図のうち、Kanno06とMF13の2式についてPGVは水平2成分のベクトル和、対象地盤はそれぞれVS30300m/sとVS30350m/sのものである。SM99についてPGVは水平2成分のうち大きい方の値、対象地盤はVS30600m/sである。図1から、いずれの結果も遠距離では地震動予測式と観測記録の整合は比較的よいが、近距離では観測記録は予測値を大きく上回ることが分かった。そこで、断層最短距離(FD)が35㎞程度以内の観測記録とKanno06式による残差と野津・長尾(2005)によりスペクトルインバージョンで求められた地震基盤相当からの増幅率との関係を調べた。その際に、野津・長尾(2005)による増幅率の周期0.5秒~1.6秒の平均増幅率をPGVと対応するものとした。その結果、平均増幅率が大きいほど残差が大きいことが見受けられ、振幅の大きい観測記録に深部地盤の影響がみられることが示唆された。
参考文献
Kanno et al. (2006),BSSA;
気象庁、http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/mech/cmt/fig/cmt20180906030759.html;
国土地理院、https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/H30-hokkaidoiburi-east-earthquake-index.html;
野津・長尾(2005)、港空研資料1112;
Morikawa and Fujiwara(2013), JDR;
司・翠川(1999),日本建築学会構造系論文集.
謝辞
K-NET及びKiK-netの観測記録を使用した。本研究は文部科学省からの委託事業である「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一部として実施した。記して関係者に感謝を申し上げます。