Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 16th)

General session » S15. Strong Ground Motion and Earthquake Disaster

S15P

Mon. Sep 16, 2019 5:15 PM - 6:45 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

5:15 PM - 6:45 PM

[S15P-10] Source and strong-motion characteristics of the 2017 Puebla, Mexico, intraslab earthquake (MW 7.2) based on a waveform inversion

*Yujia Guo1, Ken Miyakoshi1, Masato Tsurugi1 (1. Geo-Research Institute)

近年,2001年芸予地震 (MW 6.8),2003年宮城県沖の地震 (MW 7.0),2008年岩手県沿岸北部地震 (MW 6.8) など,陸域直下でM7程度のスラブ内地震が度々発生している.これらの地震は同規模のプレート境界地震に比べて,しばしば強い地震動や被害をもたらしてきた.そのようなスラブ内地震の強震動予測のための特性化震源モデルの高度化において,国内外を問わず既往地震の観測記録を解析し,そこから得られる震源に関する知見を一つでも多く蓄積し,それを基にモデルの検証を積み重ねることが重要である.本研究は,2017年9月19日にメキシコ中部のPuebla州直下の深さ約50 kmを震源として発生した地震(MW 7.2;以降「Puebla地震」と呼ぶ)を対象に,強震波形記録を用いた震源インバージョンにより断層破壊の時空間的すべりを推定し,震源特性について検討した.

Puebla地震は,北米プレートに沈み込むココスプレートの内部のフラットスラブの先端において,曲げ応力 (Melgar et al., 2018) によって発生した正断層型のスラブ内地震である.震源から90 kmほど離れたPuebla市および120 kmほど離れた首都メキシコシティでは,200–300 Galの最大加速度,20–30 Kineの最大速度を持つ地震動が観測され,全壊建物約50棟,犠牲者約370名の被害が出た.観測された最大加速度の値は,この地域のスラブ内地震に対して提案された距離減衰式 (Garcia et al., 2005) から予測される値とおおむね対応しているが,日本の距離減衰式(司・翠川,1999)に比べると小さい.また,最大速度の値は特にメキシコシティなどでGarcia et al. (2005) の予測値よりも大きい.

本研究の震源インバージョンは,余震分布の広がり,スラブの厚さ (Hayes et al., 2018) を考慮し,長さ60 km・幅36 kmの北東傾斜の震源断層面を仮定し,マルチタイムウィンドウ・線形波形インバージョン法 (Hartzell and Heaton, 1983) により行った.メキシコ国立自治大学 (UNAM) より入手した13観測点の三成分加速度波形を速度波形に積分し,0.05–0.4 Hz(周期2.5–20秒)のバンドパスフィルターを施したものをデータとして使用した.グリーン関数は一次元水平成層構造を仮定し,マントル・地殻はSpica et al. (2016) のモデルを,地震基盤以浅の堆積層は Estrella and Gonzalez (2003) のモデルを使用し,離散化波数法 (Bouchon, 1981) と反射・透過係数行列法 (Kennett and Kerry, 1979) で計算した.

震源インバージョンの結果,解放された地震モーメントは6.9×1019 Nm (MW 7.2) と推定され,この値はGCMT解 (Ekstrom et al., 2012) の6.5×1019 Nm (MW 7.1) と同程度であった.今後,本研究によって得られた各震源パラメータについて,過去に起きた地震の断層モデルに基づいて提案された震源スケーリング則と比較して議論し,メキシコシティなどで大きな最大速度が観測された原因についても検討する予定である.


謝辞:UNAM (http://aplicaciones.iingen.unam.mx/AcelerogramasRSM/) の波形記録を使用した.本研究は,原子力規制庁の委託業務「令和元年度原子力施設等防災対策等委託費(海溝型地震による地震動の評価手法の検討)事業」による成果の一部である.