5:00 PM - 6:30 PM
[S16P-05] Estimation of Underground Structures around Source Area of the 2018 Hualien Earthquake (Mw 6.4) using Microtremor Array Observations
1.はじめに
2018年2月6日23時50分(台湾標準時)に台湾花蓮市でMw6.4(USGS)の地震が発生した。震源の深さは約10km,その震源メカニズムは横ずれ断層タイプであった。この地震は花蓮市街地をほぼ南北方向に走るMilun断層で発生しており,この地震によって一部の地域で地表断層が現れるとともに,断層沿いの幾つかの中層ビルが崩壊している。Lee et al. (2018) はteleseismicデータ,強震動波形データ,GPSデータを用いた波形インバージョン解析を行っているが,彼らはMilun断層の浅部に1m前後の大きなすべり量があることを示した。このような浅部に大きなすべりをもつ地震を検討する上で,地盤特性を知ることは重要である。そこで2018年10月に花蓮市内の2地点で微動アレイ観測を実施した。
2.微動アレイ観測
微動アレイ観測は,Milun断層の東側(東華大学附属小学校周辺:PDH地点)及び南西側(徳安運動公園周辺:YSP地点)の2地点で実施した(図参照)。アレイ形状は異なる最大半径を持つL(R=約0.6km),M(R=約0.3km),S(R=約0.1km)の正三角形アレイを展開した。観測システムは白山工業の微動観測装置(JU-410)を7台用い,各観測点独立にGNSSによる時刻同期を取りながら周波数200 Hzサンプリングで計測した。観測時間はL,Mアレイは45分間,Sアレイは30分間である。
3.解析結果
観測微動波形の特性として,そのパワースペクトルは周期1秒以下の短周期のパワーは大きく,一方,周期1秒以上の長周期のパワーは小さかった。このため,周期1秒以上の長周期微動を対象にしたLアレイの位相速度推定は困難であった。試行錯誤で観測点の組み合わせを変えて位相速度の推定を試みた結果,PDH地点ではMアレイの内側観測点(4点)及び Sアレイ(7点),一方,YSP地点ではSアレイ(7点)のみを解析に用いた。解析に使用したデータ長は20.48秒間であり,全観測点で同時刻に交通ノイズが混入していない区間を抽出した。ただし,交通量が多く交通ノイズのない区間の選択が難しい場合,データ長を10.24秒間に短くして解析区間を確保するように工夫した。微動中に含まれる表面波(Rayleigh波)の推定には拡張空間自己相関法(ESPAC法;凌・岡田, 1993)を用いた。ESPAC法を適用して得られた2地点(PDH, YSP)の観測位相速度を図に示す。Milun断層の東側のPDH地点では周期0.27~0.7秒(周波数1.4~3.7Hz)の範囲で位相速度は0.6~1.6km/sまで大きくなる一方,南西側のYSP地点では周期0.3~0.5秒(周波数2~3Hz)の範囲で位相速度がほぼ一定の0.4km/s,周期0.5秒以上(周波数2Hz以下)になると急激に1.7km/sまで速くなっている。以上から,Milun断層を挟んだ東側(PDH地点)と西側(YSP地点)で地盤構造が大きく異なっていることが示唆された。ところで,台湾のNCREE(National Center for Research on Earthquake Engineering)によって花蓮市内の強震観測点のAVS30情報が公開されており,PDH地点周辺の強震観測点(HWA007,HWA010,HWA012)のAVS30は0.38~0.46km/s,YSP地点周辺の強震観測点(HWA013, HWA014)は0.28~0.34km/sとなっている。すなわち,表層付近のS波速度はMilun断層の東側(PDH地点付近)で速く,南西側(YSP地点付近)で遅くなっており,これは花蓮市内で実施された微動観測の結果(山田・他, 2019)と一致する。また,今回の微動アレイ観測で得られた位相速度の分散傾向は観測地点周辺の強震観測点のAVS30と整合的である。今後は微動アレイ観測で得られた観測位相速度に基づいてS波速度を推定する。
謝辞:鳥取大学大学院工学研究科・香川研究室から白山工業の微動観測装置(JU-410)を拝借しました。記して感謝します。また,この研究の一部は原子力規制庁による平成30年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震による地震動の評価手法の検討)業務として実施されました。
2018年2月6日23時50分(台湾標準時)に台湾花蓮市でMw6.4(USGS)の地震が発生した。震源の深さは約10km,その震源メカニズムは横ずれ断層タイプであった。この地震は花蓮市街地をほぼ南北方向に走るMilun断層で発生しており,この地震によって一部の地域で地表断層が現れるとともに,断層沿いの幾つかの中層ビルが崩壊している。Lee et al. (2018) はteleseismicデータ,強震動波形データ,GPSデータを用いた波形インバージョン解析を行っているが,彼らはMilun断層の浅部に1m前後の大きなすべり量があることを示した。このような浅部に大きなすべりをもつ地震を検討する上で,地盤特性を知ることは重要である。そこで2018年10月に花蓮市内の2地点で微動アレイ観測を実施した。
2.微動アレイ観測
微動アレイ観測は,Milun断層の東側(東華大学附属小学校周辺:PDH地点)及び南西側(徳安運動公園周辺:YSP地点)の2地点で実施した(図参照)。アレイ形状は異なる最大半径を持つL(R=約0.6km),M(R=約0.3km),S(R=約0.1km)の正三角形アレイを展開した。観測システムは白山工業の微動観測装置(JU-410)を7台用い,各観測点独立にGNSSによる時刻同期を取りながら周波数200 Hzサンプリングで計測した。観測時間はL,Mアレイは45分間,Sアレイは30分間である。
3.解析結果
観測微動波形の特性として,そのパワースペクトルは周期1秒以下の短周期のパワーは大きく,一方,周期1秒以上の長周期のパワーは小さかった。このため,周期1秒以上の長周期微動を対象にしたLアレイの位相速度推定は困難であった。試行錯誤で観測点の組み合わせを変えて位相速度の推定を試みた結果,PDH地点ではMアレイの内側観測点(4点)及び Sアレイ(7点),一方,YSP地点ではSアレイ(7点)のみを解析に用いた。解析に使用したデータ長は20.48秒間であり,全観測点で同時刻に交通ノイズが混入していない区間を抽出した。ただし,交通量が多く交通ノイズのない区間の選択が難しい場合,データ長を10.24秒間に短くして解析区間を確保するように工夫した。微動中に含まれる表面波(Rayleigh波)の推定には拡張空間自己相関法(ESPAC法;凌・岡田, 1993)を用いた。ESPAC法を適用して得られた2地点(PDH, YSP)の観測位相速度を図に示す。Milun断層の東側のPDH地点では周期0.27~0.7秒(周波数1.4~3.7Hz)の範囲で位相速度は0.6~1.6km/sまで大きくなる一方,南西側のYSP地点では周期0.3~0.5秒(周波数2~3Hz)の範囲で位相速度がほぼ一定の0.4km/s,周期0.5秒以上(周波数2Hz以下)になると急激に1.7km/sまで速くなっている。以上から,Milun断層を挟んだ東側(PDH地点)と西側(YSP地点)で地盤構造が大きく異なっていることが示唆された。ところで,台湾のNCREE(National Center for Research on Earthquake Engineering)によって花蓮市内の強震観測点のAVS30情報が公開されており,PDH地点周辺の強震観測点(HWA007,HWA010,HWA012)のAVS30は0.38~0.46km/s,YSP地点周辺の強震観測点(HWA013, HWA014)は0.28~0.34km/sとなっている。すなわち,表層付近のS波速度はMilun断層の東側(PDH地点付近)で速く,南西側(YSP地点付近)で遅くなっており,これは花蓮市内で実施された微動観測の結果(山田・他, 2019)と一致する。また,今回の微動アレイ観測で得られた位相速度の分散傾向は観測地点周辺の強震観測点のAVS30と整合的である。今後は微動アレイ観測で得られた観測位相速度に基づいてS波速度を推定する。
謝辞:鳥取大学大学院工学研究科・香川研究室から白山工業の微動観測装置(JU-410)を拝借しました。記して感謝します。また,この研究の一部は原子力規制庁による平成30年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震による地震動の評価手法の検討)業務として実施されました。