Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 17th)

General session » S16. Subsurface Structure and Its Effect

S16P

Tue. Sep 17, 2019 5:00 PM - 6:30 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

5:00 PM - 6:30 PM

[S16P-14] Strong ground motion simulation in Osaka Plain for the 2018 Northern Osaka Prefecture earthquake

*Haruko Sekiguchi1, Kimiyuki Asano1, Tomotaka Iwata1 (1. Kyoto University, DPRI)

1.はじめに
2018年6月の大阪府北部の地震は,2013年4月の淡路島の地震以来,大阪堆積盆地近傍で生じたM6クラスのイベントであった.大阪堆積盆地下で生じたことから,特に大阪堆積盆地内では直達S波の後に,地表と堆積層基盤面の多重反射波や盆地端部や盆地内の不均質構造によって生成した表面波などと考えられる波群が観測されている.
我々は大阪堆積盆地の3次元速度構造モデルを改良し(Sekiguchi et al., 2016),2013年淡路島の地震での地震動シミュレーションを行って,モデルの検証と堆積層Q値の検討をしている(Asano et al., 2016).本研究では,2018年大阪府北部の地震を対象に地震動シミュレーションを行い,堆積盆地の速度構造モデルの検証と強震動生成メカニズムの解明を行う. 2018年大阪府北部の地震は,その地震規模と大阪平野直下での発生のため,平野の観測点では2Hz前後の地震動が卓越しており,本研究は2Hz前後に焦点を当てた検討を行う.

2.大阪堆積盆地の3次元速度構造モデル 
地震動シミュレーションに用いたSekiguchi et al.(2016)による大阪堆積盆地の3次元速度構造モデルは,堀川・他(2001)のモデル化を基本として,反射法地震探査断面,微動アレイ探査,ボーリングデータ等を拡充して作成された.ここには平成22〜24年度の上町断層帯重点調査観測によって実施された各種調査結果も利用されている.また,モデルは局地地震記録のレシーバ関数解析によるPS変換波,単点微動H/Vのピーク周期等により,各観測サイト下における盆地基盤面深度の検証が行われている.また,奈良盆地の速度構造モデル(関口・他,2018)も一部用いられている.

3.強震動シミュレーションの方法
震源モデルには,2つの断層面を設定し周波数2Hzまでの速度強震波形インバージョンを行ったAsano et al.(2018)の有限断層モデルを用いた.地震動シミュレーションは,まず,この震源モデルと前述の大阪盆地・奈良盆地の3次元速度構造モデルを与えて3次元差分法(Pitarka, 1999)により周波数2Hzまでの計算を行った.堆積層のQ値の設定は, Asano et al. (2016)が求めたものを用いた.さらに,沖積層等からなる浅部の地震動応答を,吉田・他(2006)による浅層地盤構造モデルを用いて等価線形化法(DYNEQ;吉田・末冨,1996)により計算した.

4.強震動シミュレーションの結果
計算された地震動の最大速度分布では,震央より南西〜西方向に相対的に大きい値が広がった.これは,2つの断層面のうち北東南西走向の横ずれ断層のメカニズムに対応するS波のラディエーションパターンと破壊伝播の影響が強く現れ,そこに大阪堆積盆地による地震動の増幅効果が加わって形成されたと解釈できる.また,盆地端沿いや堆積層下の断層沿い,基盤岩上面の凹部で局所的に最大速度が大きい地域が見られる.これは,基盤深さの変化により地震波の波面が曲げられ,波のエネルギーに集中が起きたことによると考えられる.このような最大速度の分布形状は,大局的には,観測値の分布と整合している.
計算された波動場を見ると,直達波が伝播した後に盆地内のあちこちで後続波が発生し,様々な方向へ伝播して複雑な波動場が形成されていくのがわかる.後続波には,堆積盆地基盤面と地表との間の多重反射波(例えば,赤澤,2003;Tanaka et al.,2016; 岩田・他,2018)や,盆地端部および平野下に伏在する活断層による基盤の段差構造から発生した表面波などがあり,場所によってはそれらが直達S波より大きな振幅を生じている.ラディエーションパターンと破壊伝播の指向性から直達S波の振幅は比較的小さかったが,その後,ラディエーションパターンと破壊伝播の指向性の大きい場所へ入射したS波が多重反射で到達したために,直達S波より大きな振幅になった場合も見られた.大阪平野内の地震観測点の観測波形と比較すると,後続波の到来は観測とよく対応しており,用いた速度構造モデルは,表面波の形成・伝播などの盆地の応答はおよそ再現できていると考えている.一方,計算地震動の直達波部分の振幅は観測に比べ全体的に小さく,震源モデルと3次元速度構造モデルの特に浅部部分に原因があるのではないかと考えられる.反面,後続波については遅い時間ほど過大評価の傾向が見られた.2Hzが卓越する地震動の再現計算に対して,用いたQ値の設定は適合していないと考えられるため,妥当な設定を探索する予定である.また,盆地端部近くの観測点は,波形の再現がよくない点があり,堆積構造の急変地域でのモデル更新が課題としてあげられる.