Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 16th)

General session » S18. Education and History of Seismology

S18P

Mon. Sep 16, 2019 5:15 PM - 6:45 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

5:15 PM - 6:45 PM

[S18P-01] Practical lesson of earthquake education for private nursery school in Wakayama city

*Nobuyuki Yamada1 (1. Kochi University, Faculty of Science and Technology)

本報告では,10年ほど継続的に取り組んできた保育園・幼稚園での地震防災教育の実践活動のうち,2019年2月に実施した和歌山市内に立地する保育園(園児数80名)での例について報告する。大規模地震災害の発生が危惧される地域の一つである和歌山県北部地域での園を取り巻く実態把握と私立保育施設での実践をもとに,今後の乳幼児とその周りの大人を対象にした防災教育(地震教育も含め)について新たな展開をしたいと考えている。

 これまでの実践では,地震防災保育が,行事の一環として捉えられないように,また,各園の保育の特色や地域の特性に配慮し,保護者の協力を仰ぎ家庭教育に繋げることや0~6歳の異年齢の子どもたちの生活の中での発達過程に応じた保育にすることに留意し取組んできた(そのため防災教育や教室ではなく,防災保育と称している)。特に,日常の活動との関わりを重視し,遊びや体感,関わりあいを交えた各種防災体験ツールを2010年から製作し,関西圏の園を中心に取り組み,実践を重ねるたびにステップアップを図ってきた[例えば,山田・丁子(2018,保育学会)]。一連の防災保育では,子どもたちが劇を見たり,歌とダンスを交えて学んだり,災害事象を疑似体験する活動ができる「手作り」のアトラクションを用意し,それらを園児が1つずつ乗り越えていくように設定した。5才児クラスなどでは,保育者による「ふり返り活動」を行ってもらい,参加したすべての子どもたちへの活動の印象づけを強くし,家庭でも話題提供のきっかけにすることも行った。

 防災保育の実践による子どもたちの育ちの様子や保育の効果を把握するために,保護者向けと保育者向けのアンケート調査も継続的に実施してきている。今回は,小規模園のため数は少ないものの保護者25件,保育者14件の回答を得た。保護者も保育者もともに園での防災保育の必要性については理解を頂けているようで,親子での参加や継続的な実施をなど,肯定的な意見の割合がより高かった。また,家庭に帰った後の親子での会話から,教育的効果を暗示させるコメントが散見された。また,この実践後には,園長らとの関連する座談会を行い,相互に意見交換や信頼形成の時間も設定した。

 この発表では,対象園での防災保育の実践と事後アンケート結果について報告し,考察する。一連の実践を通じて,子どもたちと保護者と保育者の3者間でのより質の高い効果をもたらすことに繋がると考えられ,園の立地環境や特性によるニーズを踏まえた防災保育のプログラムの多様化と実践,園独自にできる・やってみようという保育者への動機付け,および防災に関する保護者・保育者への再教育の3点が必要であるということが再認識できた。今後も,子どもたちを守るための取り組みを蓄積し,子どもたちにとってより有益な内容方法を模索していきたい。

なお,本報告の実践・アンケートは,和歌山市大谷「かぜのこ保育園」の関係者の皆さまと和歌山大学教育学部の丁子かおる准教授ならび同左の学生さんたちにご協力頂きました。また,本研究は,JSPS科研費(16K00971)の一部を活用しました。関係者各位に記して感謝いたします。