Seismological Society of Japan Fall Meeting

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joint session

Special session » S21. Long-Period Ground Motion -Generation Mechanism and Structural & Social Response-

[S21]AM-1

Wed. Sep 18, 2019 9:15 AM - 10:30 AM ROOM A (Clock Tower Centennial Hall)

chairperson:Shin Aoi(NIED), Kuninori Okamoto(Japan Meteorological Agency)

For some of the lectures, we will update the lecture information at a later date.

9:45 AM - 10:00 AM

[S21-03] How to Estimate Long-Period Ground Motions near Surface Ruptures during Crustal Earthquakes

*Kojiro Irikura1, Susumu Kurahashi1, Yasuhiro Matsumoto2 (1. Aichi Institute of Technology, 2. KOZO KEIKAKU ENGINEERING Inc.)

はじめに:2016年熊本地震(Mj 7.3,Mw 7.0)では、活断層として知られていた布田川断層沿いに約28 km、日奈久断層沿いに約6 kmの地表断層が現れた(Shirahama et al., 2016)。地表断層に極めて近い最短距離約0.5 kmに位置していた西原村役場観測点での加速度記録から、積分で得られた速度震動は大きなパルス状の震動(最大速度約260 cm/s)を示し、2回積分による変位震動は、水平成分は東に約2 m、上下動成分は下方に約2 mの永久変位を示した。地表断層から約1kmの益城町役場でも、顕著な速度パルス(最大速度約175 cm/s)と永久変位(東に約120 cm、 北に50 cm、下に 70 cm)が得られている(岩田,2016)。2010年Darfield地震(Mw 7.1)のときも、地表地震断層の極近傍域で観測点の記録から、大きな速度パルス(最大速度 159 cm/s)や永久変位(水平110 cm, 下方48 cm)が得られている。同様の現象は、2014年長野県北部地震(Mw 6.3)、1999年台湾集集地震(Mw 7.6)など地表地震断層地震のとき、地震断層近傍の観測点においで観測されている。2016年熊本地震や2010年Darfield地震で得られた長周期速度パルスや永久変位を有する強震動は従来の特性化震源モデルでは再現できない。地表断層近傍の長周期地震動の推定のため、特性化震源モデルの拡張が必要とされている。

強震動生成域と長周期地震動生成域:2016年熊本地震について、従来の特性化震源モデル(入倉・三宅, 2001)を用いて強震動の再現が試みられ、震源断層面内に強震動生成域(SMGA)を設定することで、地表断層の極近傍域を除いて広域の強震動の再現が可能であることが示された(Irikura et al., 2017)。しかしながら、地表断層に近い(最短距離2 km 以下)西原村役場や益城町役場で観測された長周期の速度震動や永久変位はこれまでの震源モデルでは再現できず、地表と地震発生層の間に長周期地震動生成域(LMGA)の存在を考慮する必要があることがわかってきた(例えば, Irikura et al., 2019)。

ここで指摘されるLMGAからの地震動は、Hisada and Bielak (2003)により開発された地表ずれを含む断層すべり(Fault Displacement)による平行層構造中の極近傍地震動の計算のための波数積分法を用いて、精度良い評価が可能である。2016年熊本地震の時に顕著な速度パルスや永久変位が得られたのは、西原村役場、益城町役場、KiK-net益城に加えて、南阿蘇村河陽やJR立野、さらにやや離れたK-NE大津などで、地表断層から約5 km離れた地域一体と考えられる。これらの観測点はすべて布田川断層沿いの観測点で、日奈久断層に近い観測点では顕著な長周期パルスや永久変位は得られていない。

ここでは、SMGAと背景領域からなる特性化震源モデルに加え、上記のLMGAを設定した拡張特性化震源モデルを用いて、長周期地震動および永久変位のシミュレーションがなされる。この地震の長周期地震動の生成モデルを構築するには、これらの観測点で得られた速度や変位震動に加えて、InSARで観測された地表変位分布を満足する必要がある。試行錯誤で得られた最適モデルのLMGAは、長さ約20 km、幅については地表から地震発生層の上端まで約3 kmである。LMGAのパラメータは、最大すべり量は4 m、すべり速度関数はsmoothed ramp、ライズタイムは2.5 sである。

シミュレーション波形は、SMGAsからの寄与、LMGAからの寄与、背景領域からの寄与の重ね合わせで表現される。長周期速度パルス波は、震源極近傍(1 km 以下)の観測点ではほぼLMGAの寄与で決まるが、やや離れると、SMGAの寄与が少しづつ大きくなり、5 km離れると、ほぼ同じオーダーとなる。背景領域は距離によらずほとんど寄与しない。永久変位も同様に、震源極近傍(1 km 以下)の観測点ではほぼLMGAの寄与で決まるが、距離が離れると背景領域からの寄与も少しずつ大きくなる。5kmの観測点での永久変位は、LMGAと背景領域がほぼ同程度の寄与になる(Fig. 1参照)。

2010年Darfield地震についても、観測された速度波形および永久変位を再現する最適なモデルが構築された。LMGAのパラメータは、最大すべり量は2 ~ 3 m、すべり速度関数はsmoothed ramp、ライズタイムは4.0 sである。

特性化震源モデルの拡張:巨視的パラメーターの断層面積に基づく地震モーメントや平均応力降下量などの設定は従来のレシピが適用可能。微視的パラメータに関しても、強震動生成域およびそれに付随するパラメータは従来のレシピを用いる。長周期地震動生成域(LMGA)に関係するパラメータについては、新たな経験的な関係式の構築が必要である。LMGAの面積(長さLsと幅Lw)と位置に加えて、LMGAでの最大すべり量 (Db)、すべり速度時間関数、すべりのライズタイム(Tb) が必要とされる。DbTbは経験的関係式(Murotani et al., 2015; Tanaka et al., 2018)から与えられる。

参考文献:Irikura, K., S. Kurahashi, and Y. Matsumoto (2019): Extension of Characterized Source Model for Long-Period Ground Motions in Near-Fault Area, Pure Appl. Geophys., DOI: 10.1007/s00024-019-02283-4