Seismological Society of Japan Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Sept. 18th)

Special session » S21. Long-Period Ground Motion -Generation Mechanism and Structural & Social Response-

S21P

Wed. Sep 18, 2019 1:00 PM - 2:30 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

1:00 PM - 2:30 PM

[S21P-09] Long period ground motion observed at Sakai-minato city, Tottori, prefecture

*Takao Kagawa1, Shohei Yoshida2, Tatsuya Noguchi1 (1. Tottori University, Graduate School of Engineering, 2. Ohsaki Research Institute, Inc.)

1.はじめに 2018年6月18日に発生した大阪府北部の地震(M5.9)では,震源域の大阪府北部,兵庫県南東部,奈良県において長周期地震動階級2が観測された.南東部を除く兵庫県の階級は0であったが,鳥取県西部(境港市)では中国地域唯一の階級1が観測された(星山・他, SSJ Fall Meeting, 2018).一方,隣接する米子市では階級0であった.境港市では,2000年鳥取県西部地震(M7.3)で長周期地震動階級4(震度6強, 6.0)が観測されている.同地震を対象としたアンケート震度調査(小山・他, 2001)では,市域北部にほぼ東西に広がる岩盤山系である島根半島に平行して,震度の大きい帯状の領域が見られ,上記震度を観測した気象庁観測点はそこに含まれる.一方で,同観測点から南南西に約800m離れた境港市役所(鳥取県管理)の震度は6弱(5.6)であったが,残念ながら本震観測記録は残されていない.
気象庁観測点では,2013年淡路島の地震(M6.3),2016年鳥取県中部の地震(M6.6),2018年島根県西部の地震(M5.8),2018年大阪府北部の地震(M6.1)のデータが公開されており,境港市役所でも記録が得られている.これらについて,長周期地震動特性の検討をおこなったので報告する.
2.検討内容 気象庁による長周期地震動階級は,加速度波形から減衰h=0.05(5%)の一自由度系による周期1.5から8.0秒(暫定的に1.6から0.2秒刻みで7.8秒までで試行)の絶対速度応答スペクトルを算出し,その最大値から階級を決定している.2016年熊本地震本震の西原村小森で階級4が観測されたが,2000年鳥取県西部地震における気象庁境港観測点でもこれに匹敵する値が得られていたことになる.ただし,応答スペクトルで見ると,気象庁境港で卓越するのは周期1.8秒程度であり,長周期地震動としては周期が短い帯域にあたる.
気象庁境港における地震動のH/Vスペクトル比を見ると,2000年鳥取県西部地震本震が約1.9秒,その他の4地震(最大震度4)では約1.6秒と,2000年鳥取県西部地震本震では長周期化が見られ,非線形地盤応答の影響が示唆される.また,いずれの場合もEW/UDがNS/UDよりも大きくなっている(図参照).
地震動の粒子軌跡を見ると,2000年鳥取県西部地震本震はほぼ東西に偏向した震動となっており,横ずれの震源断層のほぼ延長に位置することからS波の放射特性を反映したものと考えられる.その他の4地震は東から西までの広い入射方位となっており,距離も離れることから放射特性の影響はそれほど大きいとは考え難い.にもかかわらず,2018年島根県西部の地震(西から入射)を除けば,東西方向の震動が卓越した特性を有している.
この卓越方向は北部に広がる弓ヶ浜半島に平行であり,既往の反射法地震探査(西田・他, 2002)では南部の米子市域から島根半島に向かってハーフグラーベン状の断面が得られており,地下構造の影響による特徴的な地盤増幅を示しているものと考えられる.ただし,反射断面から推定される境港市街域の基盤深度は約3,000mであり,上述の卓越周期2秒弱がこの境界に依拠するものとは考え難い.反射法地震探査では,2000年鳥取県西部地震本震で地震動が大きかった領域で反射面散乱層が表層付近で推定されており,より表層部に特徴的な地震動を生じる要因の存在が示唆される.
境港市街では,常時微動単点3成分観測も実施しており,最も北の島根半島側の約0.8秒から南へと卓越周期が2秒を超えて長くなる,基盤岩までの構造とは逆の傾向が見られるが,気象庁境港観測点付近では1.2秒程度であり,地震観測記録との乖離も興味深い現象となっている.
4.おわりに 地震動H/Vスペクトル比を説明する地下構造の解析などを通じて,気象庁境港観測点周辺で見られる特徴的な地盤震動について検討を進めたい.
謝辞 本研究では,気象庁が公開している震度観測点の加速度データを利用しました.また,鳥取県のご厚意により鳥取県震度計ネットワークの記録を利用させて頂きました.記して感謝します.
参考文献 星山・他, 日本地震学会秋期大会, 2018. 小山・他, 地球惑星科学連合大会, 2001. 西田・他,物理探査, 55(6), 2002.