1:00 PM - 2:30 PM
[S21P-14] An effort for the demonstration experiment to provide forecast information of long period ground motion through an application development
1.はじめに
強い長周期地震動は、(1)地震規模が大きく震源が浅い、(2)地震波伝播経路に軟らかい地盤がある、(3)平野規模の地盤構造が堆積地盤である場合に発生する(建築研究所、2013)。今後発生しうる南海トラフ地震時には、高層ビルが多い都市にて長周期地震動により什器の移動・転倒やエレベータの故障・閉じ込め事故等の被害が多数生じると懸念されている。このような被害を低減させるために長周期地震動の詳細な予測情報が必要とされることから、予報業務化の実現に向けて、気象庁・緊急地震速報利用者協議会・予報業務許可事業者・情報利用者による予測情報提供の実証実験が開始された。本実証実験を実施している我々は、高層ビル居住・管理者や巨大地震発生時の救出支援活動者に有用な予測情報を提供することを目的とし、ビルごとにその固有周期における長周期地震動階級(周期別階級)を算出して地図上に表示するツールを開発した。本発表では、開発した表示ツールを紹介し、長周期地震動の予測情報提供における利活用方法や発展性について検討する。
2.データ・方法
高層ビルが集中する東京都23区を対象領域とし、次の手順でビルごとに周期別階級を算出した。まず、Dkahal et al. (2015) の距離減衰式を用いて、ビル位置における1.6-7.8秒の絶対速度応答を0.2秒ごとに求めた(図1)。入力情報は震源位置、気象庁マグニチュードである。サイト補正はJ-SHIS深部地盤情報(Vs=1.4km/s 上面深さ)を用いて行った。次に、ビルの固有周期 T [s] をビルの高さH [m] と固有周期の関係(地震調査研究推進本部、2016)より算出した。ビルの高さは東京都の超高層ビルデータベース(全1261棟、http://www.blue-style.com/area/tokyo/)、構造は超高層ビル部(https://skyscraperclub.com/?cat=11)等を参照した。最終的にビルの固有周期に対応する絶対速度応答を長周期地震動階級と照らし合わせて周期別階級とし、ビルの基礎情報と合わせて地図上に表示した。
3.結果・今後の課題
本ツール利用時の一例として、2011年東北地方太平洋沖地震の震源情報(2011年3月11日16時00分 気象庁発表、気象庁マグニチュード暫定値)を入力したときの新宿駅周辺における周期別階級を図2に示す。本ツールは震源情報さえあればビルごとの周期別階級を一覧できることから、地震発生時におけるビル居住者の適切な避難行動やビル管理者の状況把握、救出支援者の救出支援優先度検討に資すると考えている。また、即時的な利用以外にも、長周期地震動階級の周知や今後発生しうる地震動に備えるための教材として活用することができるだろう。
本ツールは、現時点では震源情報とビルのおよその固有周期から算出した予測情報のみを提供する簡易的なものである。今後は(株)エイツーが新規開発中の地震計内蔵緊急地震速報受信機による地震動観測データに基づいた予測情報と組み合わせ、ビルの階層ごとに周期別階級を提供するなど、予測情報の高度化と機能拡張を行う方針である。また、情報利用者に本ツールや情報提供方法についてヒアリングを行い、ニーズに応じて改良を行っていく。
強い長周期地震動は、(1)地震規模が大きく震源が浅い、(2)地震波伝播経路に軟らかい地盤がある、(3)平野規模の地盤構造が堆積地盤である場合に発生する(建築研究所、2013)。今後発生しうる南海トラフ地震時には、高層ビルが多い都市にて長周期地震動により什器の移動・転倒やエレベータの故障・閉じ込め事故等の被害が多数生じると懸念されている。このような被害を低減させるために長周期地震動の詳細な予測情報が必要とされることから、予報業務化の実現に向けて、気象庁・緊急地震速報利用者協議会・予報業務許可事業者・情報利用者による予測情報提供の実証実験が開始された。本実証実験を実施している我々は、高層ビル居住・管理者や巨大地震発生時の救出支援活動者に有用な予測情報を提供することを目的とし、ビルごとにその固有周期における長周期地震動階級(周期別階級)を算出して地図上に表示するツールを開発した。本発表では、開発した表示ツールを紹介し、長周期地震動の予測情報提供における利活用方法や発展性について検討する。
2.データ・方法
高層ビルが集中する東京都23区を対象領域とし、次の手順でビルごとに周期別階級を算出した。まず、Dkahal et al. (2015) の距離減衰式を用いて、ビル位置における1.6-7.8秒の絶対速度応答を0.2秒ごとに求めた(図1)。入力情報は震源位置、気象庁マグニチュードである。サイト補正はJ-SHIS深部地盤情報(Vs=1.4km/s 上面深さ)を用いて行った。次に、ビルの固有周期 T [s] をビルの高さH [m] と固有周期の関係(地震調査研究推進本部、2016)より算出した。ビルの高さは東京都の超高層ビルデータベース(全1261棟、http://www.blue-style.com/area/tokyo/)、構造は超高層ビル部(https://skyscraperclub.com/?cat=11)等を参照した。最終的にビルの固有周期に対応する絶対速度応答を長周期地震動階級と照らし合わせて周期別階級とし、ビルの基礎情報と合わせて地図上に表示した。
3.結果・今後の課題
本ツール利用時の一例として、2011年東北地方太平洋沖地震の震源情報(2011年3月11日16時00分 気象庁発表、気象庁マグニチュード暫定値)を入力したときの新宿駅周辺における周期別階級を図2に示す。本ツールは震源情報さえあればビルごとの周期別階級を一覧できることから、地震発生時におけるビル居住者の適切な避難行動やビル管理者の状況把握、救出支援者の救出支援優先度検討に資すると考えている。また、即時的な利用以外にも、長周期地震動階級の周知や今後発生しうる地震動に備えるための教材として活用することができるだろう。
本ツールは、現時点では震源情報とビルのおよその固有周期から算出した予測情報のみを提供する簡易的なものである。今後は(株)エイツーが新規開発中の地震計内蔵緊急地震速報受信機による地震動観測データに基づいた予測情報と組み合わせ、ビルの階層ごとに周期別階級を提供するなど、予測情報の高度化と機能拡張を行う方針である。また、情報利用者に本ツールや情報提供方法についてヒアリングを行い、ニーズに応じて改良を行っていく。