1:00 PM - 2:30 PM
[S22P-06] site2vec: A Ground-Motion Predictor Learning Site Conditions from Data
目的
簡便な地震動評価のために、観測記録の経験的関係に基づく地震動予測式が広く利用されている。震源特性、伝播特性、観測点のサイト特性を説明変数、最大加速度などの地震動強さの指標を目的変数とする回帰式を設定して統計的にパラメータ推定をするのが一般的であるが、近年ではニューラル・ネットワーク(NN)を用いたノンパラメトリックな手法も提案されている(e.g. Derras et al., 2012)。
従来の予測式では、説明変数を事前に選択してモデル化が行われてきた。しかし、特にサイト特性については適した特徴量が自明ではない。深さ30mまでの平均S波速度(AVS30)や基盤深さなどの指標が経験的に用いられているが、必ずしも地震動に対する性質を代表しているとは言えない。また、これらの物性値を得るにはボーリング調査や物理探査を必要とし、高精度の値が得られない場合もある。
本来、地震動に寄与するサイト特性は強震記録に反映されているはずである。そこで本研究では、観測点ラベルそのものを入力とすることで、サイト特性を強震動データから自動的に学習するNNモデルを開発した。その際、各観測点のサイト特性に対するベクトル表現が得られるようにネットワークを設計した。これにより、強震記録に基づいて学習されたサイト特性を分析することが可能となる。
手法
図(a)に示す2段構成の予測モデル“site2vec”を提案する。まず、観測点ラベルをネットワークによりベクトルに変換し、得られたベクトルと他の説明変数を入力とする順伝播型NNにより地震動指標を出力する。これは、自然言語処理の分野で広く用いられるword2vec (Mikolov et al., 2013)に着想を得たものである。word2vecでは文章データの学習を通して、各語彙が、全語彙数に一致する次元のone-hot表現(ある要素が1で他の要素が0のベクトル)から低次元のベクトルに変換される。同様にsite2vecでは、観測点数の次元をもつ観測点ラベルのone-hot表現から、サイト特性のベクトル表現が得られる。2つのネットワークは同時に学習を行うため、地震動予測に即したベクトル表現を獲得できる。
ここで、観測点ラベルを直接NNの入力とすることも可能だが、これではサイト特性がブラックボックスとなってしまう。site2vecを介することで、学習されたサイト特性を可視化・分析できる点が本モデルの特長である。
実験
マグニチュード、震源深さ、震央距離、AVS30、観測点ラベルのいくつかを用いて最大加速度を予測する問題を考えた。茨城県内18のK-NET観測点で1996年6月~2018年9月に観測された深さ200km未満、最大加速度10gal以上の記録を用いた。期間により、訓練データ:1996~2012年(9276記録)、検証データ:2013~2014年(1425記録)、テストデータ:2015~2018年(2110記録)に分割した。
site2vecの他、入力変数を変えたNNを用いてテストデータに対する予測性能の比較実験を行った(図b)。NNでは、サイト特性を与えないよりAVS30を入力するほうが高性能だが、AVS30の代わりに観測点ラベルを入力するとさらに良い結果が得られた。この観測点ラベルを入力するNNとsite2vecでは、同程度の性能を示した。site2vecでは学習したサイト特性のベクトル表現が得られるため、ベクトル表現がもつ地盤情報についても考察を行った。
謝辞:本研究では、防災科学技術研究所のK-NETの強震データを使用した。AVS30の値はJ-SHIS地震ハザードステーションを参照した。機械学習の実装にはFacebook社が開発したPyTorchを使用した。
簡便な地震動評価のために、観測記録の経験的関係に基づく地震動予測式が広く利用されている。震源特性、伝播特性、観測点のサイト特性を説明変数、最大加速度などの地震動強さの指標を目的変数とする回帰式を設定して統計的にパラメータ推定をするのが一般的であるが、近年ではニューラル・ネットワーク(NN)を用いたノンパラメトリックな手法も提案されている(e.g. Derras et al., 2012)。
従来の予測式では、説明変数を事前に選択してモデル化が行われてきた。しかし、特にサイト特性については適した特徴量が自明ではない。深さ30mまでの平均S波速度(AVS30)や基盤深さなどの指標が経験的に用いられているが、必ずしも地震動に対する性質を代表しているとは言えない。また、これらの物性値を得るにはボーリング調査や物理探査を必要とし、高精度の値が得られない場合もある。
本来、地震動に寄与するサイト特性は強震記録に反映されているはずである。そこで本研究では、観測点ラベルそのものを入力とすることで、サイト特性を強震動データから自動的に学習するNNモデルを開発した。その際、各観測点のサイト特性に対するベクトル表現が得られるようにネットワークを設計した。これにより、強震記録に基づいて学習されたサイト特性を分析することが可能となる。
手法
図(a)に示す2段構成の予測モデル“site2vec”を提案する。まず、観測点ラベルをネットワークによりベクトルに変換し、得られたベクトルと他の説明変数を入力とする順伝播型NNにより地震動指標を出力する。これは、自然言語処理の分野で広く用いられるword2vec (Mikolov et al., 2013)に着想を得たものである。word2vecでは文章データの学習を通して、各語彙が、全語彙数に一致する次元のone-hot表現(ある要素が1で他の要素が0のベクトル)から低次元のベクトルに変換される。同様にsite2vecでは、観測点数の次元をもつ観測点ラベルのone-hot表現から、サイト特性のベクトル表現が得られる。2つのネットワークは同時に学習を行うため、地震動予測に即したベクトル表現を獲得できる。
ここで、観測点ラベルを直接NNの入力とすることも可能だが、これではサイト特性がブラックボックスとなってしまう。site2vecを介することで、学習されたサイト特性を可視化・分析できる点が本モデルの特長である。
実験
マグニチュード、震源深さ、震央距離、AVS30、観測点ラベルのいくつかを用いて最大加速度を予測する問題を考えた。茨城県内18のK-NET観測点で1996年6月~2018年9月に観測された深さ200km未満、最大加速度10gal以上の記録を用いた。期間により、訓練データ:1996~2012年(9276記録)、検証データ:2013~2014年(1425記録)、テストデータ:2015~2018年(2110記録)に分割した。
site2vecの他、入力変数を変えたNNを用いてテストデータに対する予測性能の比較実験を行った(図b)。NNでは、サイト特性を与えないよりAVS30を入力するほうが高性能だが、AVS30の代わりに観測点ラベルを入力するとさらに良い結果が得られた。この観測点ラベルを入力するNNとsite2vecでは、同程度の性能を示した。site2vecでは学習したサイト特性のベクトル表現が得られるため、ベクトル表現がもつ地盤情報についても考察を行った。
謝辞:本研究では、防災科学技術研究所のK-NETの強震データを使用した。AVS30の値はJ-SHIS地震ハザードステーションを参照した。機械学習の実装にはFacebook社が開発したPyTorchを使用した。