Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room C

Emergency session » S24. Off Yamagata Earthquake of 18 June 2019

[S24]PM-1

Tue. Sep 17, 2019 1:30 PM - 3:00 PM ROOM C (Research Bldg No 8 NS Hall)

chairperson:Masanao Shinohara(Earthquake Research Institute, The University of Tokyo), Kazuki Miyaoka(Japan Meteorological Agency)

2:00 PM - 2:15 PM

[S24-03] Yamagata offshore Earthquake in view of Historical Earthquakes and Crustal Movements

*Kazuo Kawauchi1 (1. NIIGATA UNIVERSITY OF PHARMACY AND APPLIED LIFE SCIENCES)

2019年6月18日山形県沖地震(M6.7)は,1964年新潟地震(M7.5)を含むM7–8級の歴史地震が繰り返されてきた領域内で発生した.この領域は佐渡島と新潟山形県境の中間に位置する新潟県粟島周辺の海域で,日本海東縁変動帯の南端部に位置する.1833年庄内沖地震は,これまでの研究で新潟地震の震源域の北半分を共有して酒田沖に達すると考えられている.1762年佐渡沖地震はImamura(1947)以来小佐渡南東方の越佐海峡の地震とされていた.これを羽鳥(1990)が大佐渡北方沖,さらに河内(2000)がそれまで引用されていた地名の取り違えを指摘して,大佐渡「北東」沖の粟島付近と修正した.河内(2000)に従えばこの領域のM7前後を含めた繰り返しの数は4つとなる.
 1964年新潟地震の震源域は,余震分布から粟島を中心とした北北東–南南西走向の長円の形状と推定され,この南端は信濃川河口に達している(図1).越後平野はここからさらに南南西方向に調和的に延びる構造平野で,東西の周縁には平野の方向と直交する西北西–東南東方向からの圧縮応力で形成された「褶曲丘陵」や「逆断層地塊」が平野と並列している.平野中央部を流れる信濃川,上流の千曲川さらに長野盆地から支流犀川の流路は,この褶曲軸や断層線の屈曲に支配されて松本盆地に至っている.越後平野中央部の歴史地震では,1828年三条地震が知られており,河内・大木(1996)はこの地震の北半分が重なる1670年西蒲原地震(四万石地震)の存在を指摘した(図1).2004年中越地震,2007年中越沖地震,2011年長野県北部地震はさらに南方ないし南西方で発生した.5つとも広義の「信濃川=越後平野」の地震である.けだし,大森(1921)の「信濃川流域地震帯」は的を射た命名と言える.近時の活動を中部地方全体に敷衍してみると,信越地方から北陸,近畿地方へ延びる活動帯を見出すことができる.
 檀原(1973)の新潟地震の水準変動は主に地震の前兆的地殻変動に注目したものであるが,これは見方を変えると震源域に近い地塊全体が地震時に沈降しながら西へ傾動したことを示している[河内・大木(1997)].粟島が同じく西へ傾動しながら隆起したことを考えれば,粟島の東方に断層線のある西傾斜の逆断層(西側の地塊が東側の地塊にのし上がった断層)が震源断層であることは明らかである.これは今回の地震の地理院による地殻変動の速報や気象庁の発震機構解とも,また2004年・2007年・2011年の地震のそれとも調和的である.
 歴史地震や近時の被害地震の活動履歴および地殻変動の特徴から考えて,日本海東縁変動帯は佐渡沖から糸魚川−静岡構造線へ達するようにはみえない.むしろ今回の地震の震源域を含むの粟島周辺地域からストレートに越後平野,信越褶曲帯へと延びている.そしてそれは西傾斜の逆断層が卓越した衝突境界的性質を持っており,「新潟–神戸歪み集中帯」に連続することを示唆している.

[引用文献]
檀原(1973),新潟地震前・時・後の地殻変動,地震予知連絡会会報,9,93-96.
羽鳥(1990),宝暦12年(1762年)・享和2年(1802年)佐渡地震の規模と津波,歴史地震,6,1-7.
Imamura(1947),Seismic Activity on Both Sides of Fossa magna,Proc.Imp.Acad.,22,314-317.
河内・大木(1996),1670年西蒲原地震(M6 3/4)の震央の再検討 ,地震2,49,337-346.
河内・大木(1997),1964年新潟地震による地塊の傾動と信濃川地震帯のテクトニクス,地震2,50,303-314.
河内(2000),宝暦佐渡沖地震(1762年,M7.0)の震央の再検討 ,歴史地震,16,107-112.
大森(1921),大正7年信州大町地方激震調査報告,震災予防調査会報告第94号,震災予防調査会,16-69.