5:00 PM - 6:30 PM
[S24P-09] Source rupture process of the 2019 Yamagata-ken oki earthquake estimated by waveform inversion using strong motion data
1.はじめに
2019年6月18日22時22分に山形県沖を震源(深さ14.0㎞)とするMw6.4の地震が発生した。震源近傍の観測点であるYMT004(K-NET温海:震源距離17.1km)と気象庁の震度観測点J47241(鶴岡市温海川:震源距離24.6km)ではそれぞれ最大加速度(フィルターなし:3成分合成)653gal、750gal、最大速度(フィルター0.1-10Hz:3成分合成)20cm/s、59cm/sが観測された。本研究ではこの強震動を含めた震源に近い観測点で得られた強震動の生成メカニズムの解明を目的として、震源インバージョン解析により震源破壊過程の推定を試みた。
2.観測記録の特徴と空間分布
最大速度(フィルター0.1-10Hz)では、震源より北部に位置する観測点で距離減衰式よりも大きな値を示しており、震源より北部に振幅の大きな領域が広がる空間分布であった。この要因としては、観測点の地盤特性の影響、強震動を放出した領域が震源よりも北側に存在、破壊の進行方向にあたることによるディレクティビティ効果などの可能性が考えられる。このため,地下構造モデルのチューニングや特性化震源モデルに基づいた破壊伝播様式を変えた強震動評価が必要と考える。
3.波形インバージョンによる震源破壊過程
本研究では、マルチタイムウインドウ線形波形インバージョン法(Hartzell and Heaton, 1983)に基づき震源破壊過程について時空間的にすべり量分布を計算した。解析に用いるデータは、速度波形のS波部分(S波到着前の1.5秒から12秒間)とし、震央距離約50km以内の11観測点(K-NET、KiK-net、気象庁)の記録を用いた。グリーン関数は、全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)を用いて離散化波数法(Bouchon, 1981)および反射・透過係数行列法(Keneett and Lerry,1979)により計算した。断層モデルは、DD法を用いた震源再決定(郭、2019私信)による余震分布と整合的であった気象庁のCMT解(走向26度、傾斜角27度(南東傾斜))とした。
本解析ではまず大局的な震源破壊過程を確認するために解析周期帯域を2~20秒として,主に破壊領域の推定に注目して解析を行った。解析の断層面の長さと幅は余震分布を参考にして24kmと18km、小断層サイズは2.0km四方に設定した。すべり速度の基底関数は、ライズタイム1.0秒のsmoothed ramp関数を0.5秒間隔で4個配置した。
計算波形は、明瞭なパルスが見られる震源近傍の観測点YMT004やJ47241の観測波形も含めて観測波形をよく再現している。解析の結果、震源付近ではすべりが小さく、震源よりも北西側でかつ震源よりも深いところから浅いところにかけて大きなすべりが推定された。断層破壊領域の算出のためSomerville et.al.(1999)の規範に基づくトリミング操作を試みた結果、断層端に現れるすべり量の影響で断層面積は設定断層から変わらなかった。現在の結果では、最大すべり量は2.3m、平均すべり量は0.5m、地震モーメントは7.88×1018Nmとなっているが,F-netと比べて約2倍大きく今後の検討課題である。最終的には、周期1.0秒以上と解析周期帯域を広げた震源モデルを目指す。
謝辞:この研究の一部は原子力規制庁による平成31年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震による地震動の評価手法の検討)業務として実施されました。地域地盤環境研究所の郭博士にはDD法を用いた震源再決定結果を提供いただきました。
2019年6月18日22時22分に山形県沖を震源(深さ14.0㎞)とするMw6.4の地震が発生した。震源近傍の観測点であるYMT004(K-NET温海:震源距離17.1km)と気象庁の震度観測点J47241(鶴岡市温海川:震源距離24.6km)ではそれぞれ最大加速度(フィルターなし:3成分合成)653gal、750gal、最大速度(フィルター0.1-10Hz:3成分合成)20cm/s、59cm/sが観測された。本研究ではこの強震動を含めた震源に近い観測点で得られた強震動の生成メカニズムの解明を目的として、震源インバージョン解析により震源破壊過程の推定を試みた。
2.観測記録の特徴と空間分布
最大速度(フィルター0.1-10Hz)では、震源より北部に位置する観測点で距離減衰式よりも大きな値を示しており、震源より北部に振幅の大きな領域が広がる空間分布であった。この要因としては、観測点の地盤特性の影響、強震動を放出した領域が震源よりも北側に存在、破壊の進行方向にあたることによるディレクティビティ効果などの可能性が考えられる。このため,地下構造モデルのチューニングや特性化震源モデルに基づいた破壊伝播様式を変えた強震動評価が必要と考える。
3.波形インバージョンによる震源破壊過程
本研究では、マルチタイムウインドウ線形波形インバージョン法(Hartzell and Heaton, 1983)に基づき震源破壊過程について時空間的にすべり量分布を計算した。解析に用いるデータは、速度波形のS波部分(S波到着前の1.5秒から12秒間)とし、震央距離約50km以内の11観測点(K-NET、KiK-net、気象庁)の記録を用いた。グリーン関数は、全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)を用いて離散化波数法(Bouchon, 1981)および反射・透過係数行列法(Keneett and Lerry,1979)により計算した。断層モデルは、DD法を用いた震源再決定(郭、2019私信)による余震分布と整合的であった気象庁のCMT解(走向26度、傾斜角27度(南東傾斜))とした。
本解析ではまず大局的な震源破壊過程を確認するために解析周期帯域を2~20秒として,主に破壊領域の推定に注目して解析を行った。解析の断層面の長さと幅は余震分布を参考にして24kmと18km、小断層サイズは2.0km四方に設定した。すべり速度の基底関数は、ライズタイム1.0秒のsmoothed ramp関数を0.5秒間隔で4個配置した。
計算波形は、明瞭なパルスが見られる震源近傍の観測点YMT004やJ47241の観測波形も含めて観測波形をよく再現している。解析の結果、震源付近ではすべりが小さく、震源よりも北西側でかつ震源よりも深いところから浅いところにかけて大きなすべりが推定された。断層破壊領域の算出のためSomerville et.al.(1999)の規範に基づくトリミング操作を試みた結果、断層端に現れるすべり量の影響で断層面積は設定断層から変わらなかった。現在の結果では、最大すべり量は2.3m、平均すべり量は0.5m、地震モーメントは7.88×1018Nmとなっているが,F-netと比べて約2倍大きく今後の検討課題である。最終的には、周期1.0秒以上と解析周期帯域を広げた震源モデルを目指す。
謝辞:この研究の一部は原子力規制庁による平成31年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震による地震動の評価手法の検討)業務として実施されました。地域地盤環境研究所の郭博士にはDD法を用いた震源再決定結果を提供いただきました。