11:00 〜 11:15
[S01-01] Rayleigh減衰を用いたQ一定地震動の差分法計算
地震動を含む振動現象の減衰は,振動のエネルギーEが1周期の間にΔEだけ変化するときにQ−1 = −ΔE/2πEと定義されるQ値で表される.1次元の減衰振動が(1) u = A ei(ωt−kx) = a e−ηt ei(ωt−kx)と表されるならば,一般にEはA2に比例することから,t = 0とt = T(Tは周期)の間のエネルギーとその変化はE∝A2 ≈ a2,ΔE∝a2 e−2ηT − a2になる.従って,Q−1 = (1− e−2ηT)/2π ≈ ηT/π = η/πf である.一方,tに従って減衰するのではなく,xに従って減衰するとした場合,(2) u = a e−ςx ei(ωt−kx)とすることができる.このとき,E,ΔEはx = 0とx = L(L は波長)の間のエネルギーとその変化となり,L = υ/f を用いるとQ−1 = ςυ/πfである.
1次元媒質が完全弾性体ならば応力-ひずみ関係がτ = γ eと表わされるとする.減衰のためにその関係がτ = γ *∂e/∂t(*はコンボリューション)となるとき,運動方程式は(1)式を解とした減衰振動方程式となる.方程式の中の減衰係数は2πfρ/Qとなるから,この減衰は質量比例減衰と呼ばれる(質量は密度を意味する).上記からQ−1 = η/πf で,参照周波数frにおいてQ値がQrならばη = 1/πfQrであるから,Q値スペクトルはQ(f) = Qr f / frになる(図の濃い灰色実線).一方,応力-ひずみ関係をτ = γ e+Γ∂e/∂tとすると,運動方程式は(2)式を解とする減衰振動方程式となる.その減衰係数はΓに関係し,Γはγ(弾性定数,剛性とも呼ばれる)に比例すると考えられるので,この減衰は剛性比例減衰と呼ばれる.(2)式を代入した方程式を解いて得られるς =ω2Γ/2υγ と上記のQ−1 = ςυ/πfから,Q−1 = 2πf Γ/γとなる.参照周波数frにおいてQ値がQrならばΓ/γ = 1/2πfrQr であるから,Q値スペクトルはQ(f) = Qr fr /fになる(図の薄い灰色実線).
現実の地震動の減衰では,質量比例減衰と剛性比例減衰が,ある割合で組み合わされて実現されるとする(Rayleigh 減衰).1 次元媒質の場合,この割合は,それぞれの減衰振動((1)式と(2)式)の中の減衰項の指数にかかる重みwρ,wυで表わされるとする.その結果とx =υtからRayleigh 減衰の減衰振動方程式はu = a exp{−(wρη/υ+wυς)x} ei(ωt−kx)と表わされるはずである.剛性比例減衰と同様の導出で,Rayleigh減衰のQ値がQ−1=(wρη/υ+wυς)υ/πfと得られる.参照周波数frが与えられ,そこにおける質量比例減衰と剛性比例減衰のQ 値をそれぞれQρr,Qυrとすると,Q(f) = 1/( wρ fr/f Qρr+wυf/frQυr)が得られる.
以上を3 次元媒質に拡張すると,Rayleigh 減衰の中の剛性比例減衰はP 波とS 波に分けられ,それらの減衰項の指数への重みをwα,wβ,参照周波数におけるQ 値をQαr,Qβrとする.目標とするQ一定減衰もP波とS波に分けられ,一定値をQα0,Qβ0とすると,Q 一定減衰がRayleigh 減衰で実現されるならば(3) Qα0 = Qα(f),Qβ0 = Qβ(f)が成り立つはずである.さらにはQαr =Qα0,Qβr= Qβ0を仮定し.地震動は主にS波で構成されるので,質量比例減衰ではQρr= Qβ0とする.3つの周波数f1,f2,f3において(3)式のうちのひとつが成り立つとして3本の連立方程式を立てられれば,3つの重みwρ,wα,wβを決めることができる.S波を重視して,周波数2つf1,f2はS波の方程式に割り当てるとする.
池上(2009)が挙げている計算例からQα0=20,Qβ0=10,fr = 0.5 Hz,f1 = 0.2 Hz,f2 = 1.0 Hz,f3 = 0.44 Hzの場合を考えると,図の中に黒色の太い点線および太い実線で示されているP波Rayleigh減衰とS波Rayleigh減衰が得られる.後者はf1以上で概ねQβ0に近く,前者はf3以上で概ねQα0に近くなっている.このほか,重みを最小二乗法で決める計算例も行った.Rayleigh減衰を導入した2次元差分法を,標準線形固体1つまたは5つを導入した2次元差分法と比較すると,標準線形固体1つと同程度の計算時間で同5つと同程度の精度が得られた.
1次元媒質が完全弾性体ならば応力-ひずみ関係がτ = γ eと表わされるとする.減衰のためにその関係がτ = γ *∂e/∂t(*はコンボリューション)となるとき,運動方程式は(1)式を解とした減衰振動方程式となる.方程式の中の減衰係数は2πfρ/Qとなるから,この減衰は質量比例減衰と呼ばれる(質量は密度を意味する).上記からQ−1 = η/πf で,参照周波数frにおいてQ値がQrならばη = 1/πfQrであるから,Q値スペクトルはQ(f) = Qr f / frになる(図の濃い灰色実線).一方,応力-ひずみ関係をτ = γ e+Γ∂e/∂tとすると,運動方程式は(2)式を解とする減衰振動方程式となる.その減衰係数はΓに関係し,Γはγ(弾性定数,剛性とも呼ばれる)に比例すると考えられるので,この減衰は剛性比例減衰と呼ばれる.(2)式を代入した方程式を解いて得られるς =ω2Γ/2υγ と上記のQ−1 = ςυ/πfから,Q−1 = 2πf Γ/γとなる.参照周波数frにおいてQ値がQrならばΓ/γ = 1/2πfrQr であるから,Q値スペクトルはQ(f) = Qr fr /fになる(図の薄い灰色実線).
現実の地震動の減衰では,質量比例減衰と剛性比例減衰が,ある割合で組み合わされて実現されるとする(Rayleigh 減衰).1 次元媒質の場合,この割合は,それぞれの減衰振動((1)式と(2)式)の中の減衰項の指数にかかる重みwρ,wυで表わされるとする.その結果とx =υtからRayleigh 減衰の減衰振動方程式はu = a exp{−(wρη/υ+wυς)x} ei(ωt−kx)と表わされるはずである.剛性比例減衰と同様の導出で,Rayleigh減衰のQ値がQ−1=(wρη/υ+wυς)υ/πfと得られる.参照周波数frが与えられ,そこにおける質量比例減衰と剛性比例減衰のQ 値をそれぞれQρr,Qυrとすると,Q(f) = 1/( wρ fr/f Qρr+wυf/frQυr)が得られる.
以上を3 次元媒質に拡張すると,Rayleigh 減衰の中の剛性比例減衰はP 波とS 波に分けられ,それらの減衰項の指数への重みをwα,wβ,参照周波数におけるQ 値をQαr,Qβrとする.目標とするQ一定減衰もP波とS波に分けられ,一定値をQα0,Qβ0とすると,Q 一定減衰がRayleigh 減衰で実現されるならば(3) Qα0 = Qα(f),Qβ0 = Qβ(f)が成り立つはずである.さらにはQαr =Qα0,Qβr= Qβ0を仮定し.地震動は主にS波で構成されるので,質量比例減衰ではQρr= Qβ0とする.3つの周波数f1,f2,f3において(3)式のうちのひとつが成り立つとして3本の連立方程式を立てられれば,3つの重みwρ,wα,wβを決めることができる.S波を重視して,周波数2つf1,f2はS波の方程式に割り当てるとする.
池上(2009)が挙げている計算例からQα0=20,Qβ0=10,fr = 0.5 Hz,f1 = 0.2 Hz,f2 = 1.0 Hz,f3 = 0.44 Hzの場合を考えると,図の中に黒色の太い点線および太い実線で示されているP波Rayleigh減衰とS波Rayleigh減衰が得られる.後者はf1以上で概ねQβ0に近く,前者はf3以上で概ねQα0に近くなっている.このほか,重みを最小二乗法で決める計算例も行った.Rayleigh減衰を導入した2次元差分法を,標準線形固体1つまたは5つを導入した2次元差分法と比較すると,標準線形固体1つと同程度の計算時間で同5つと同程度の精度が得られた.