15:30 〜 17:00
[S02P-07] DAS地震動記録を用いた海底光ファイバーケーブルの敷設環境推定
Distributed Acoustic Sensing(DAS)は、光ファイバーケーブル(Optical Fiber Cable: OFC)に沿ったひずみ変化を測定する手法であり、低コストで長期モニタリングが可能な地球物理学に適用可能な計測ツールとして期待されている。一方、記録された信号の振幅の絶対値を利用するためには、OFCと設置面のカップリングを考慮する必要がある。室戸岬沖の海底OFCを用いたDAS観測によって観測された信号の振幅は、200m程度の距離でもDASチャネル間で大きく異なり、特に室戸岬から20-25km先では振幅の大小(1-2桁程度の差)が200m程度の間隔でbimodalに変化する(Ide et al., 2021)。これはOFCと海底のカップリングに起因すると考えられている。したがって、DASの記録からOFCの敷設環境を評価する手法検討として、DASを用いてOFCに沿って記録された地震動の走時の空間分布から、海底面に敷設されたOFCのカップリングを含めた敷設環境を推定した結果を報告する。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、室戸岬沖で包括的な海底監視システムを開発し、6本のシングルモードファイバーを備えた海底ケーブルは、陸上と海底の観測機器を接続している(Momma et al., 1997)。DASの観測には、海岸から伸びるケーブルの50km区間においてAPセンシング社製の機器を使用している。観測は時間サンプリング間隔500Hz、空間サンプリング間隔5.10m、ゲージ長40.8mで実施し、全チャンネル数は10789である。 2021年1月から3月に室戸沖に設置されたOFCのDAS観測によって記録された西日本で発生した地震に着目し、地震波形のチャンネル間の波形相関およびlag timeを計算した。まず、各チャンネルで記録された地震波形のP波の立ち上がり部を含む2秒間の波形を使用し、4-10Hzでバンドパスフィルタを適用した。次に隣り合うチャンネル同士で相互相関を計算し、係数が最大値をとる際のlag timeを100ch毎に積算することで(50chのoverlap)、OFCに沿ったlag timeの変化から海底OFCのカップリングを含む敷設環境を推定した。
徳島県下(深さ7km)で発生したMj4.0の地震に関して、室戸岬から約20-25km先(4000-5000ch)のlag timeを100ch毎に積算した結果を示す。4000-5000chにおける海底OFCはおおよそ南北方向に敷設されているため、OFCの北側で発生した地震に対するDAS記録はOFCに沿ってみかけ速度は正になる。一方、4000-4060ch、4100-4170ch、4480-4500ch、4780-4810ch、4940-4960chではみかけ速度が負を示した。さらに、みかけ速度が負の区間における地震波の位相は、隣のみかけ速度が正の区間の地震波の位相と逆(polarityが逆)を示した。また、4100-4170ch、4780-4810chにおいてはDASの信号の振幅が小さい区間(カップリングが弱いと考えられる)においてみかけ速度が負になっている。次に、同様の地震・チャンネルにおいて、地震波形のS波の立ち上がり部を含む2秒間で相互相関を計算しlag timeを100ch間で積算した。みかけ速度が負になったチャンネル区間はP波のものと同様だが、polarityが逆転したのはカップリングが弱いと考えられる区間のみであった。
以上の結果から海底面におけるOFCの敷設環境を推察すると、みかけ速度が負になる区間ではOFCが谷を下り、水深が深い箇所にあるOFCの方が地面から入射してくる波をより早く検知していると考えられる。一方、カップリングが弱い区間では、OFCが谷部をまたぐなどして水中に浮いていると考えられる。S波から水中へ変換した音波(疎密波)が水中を伝播し、水中に浮いたOFCにて記録されていると考えらえる。水の体積弾性率は0℃で約2.0MPa、SiO2のヤング率は約75GPaであり1~2桁程度異なるため、記録される振幅の違いは歪を計測する媒質の違いを表すと推測される。また走時ではS波が到来している時間だが、変換した疎密波が記録されているためpolarityが逆になったと考えられる。ちなみに、海底下堆積層におけるP波地震波速度は、浅部において1.5km/sを示し(Nakanishi et al., 2018; Tonegawa et al., 2021; JpGU)、水中の音波の伝播速度(1.5km/s)と同程度であるため、伝播した媒質の違いによるみかけ速度への影響は小さいと考えられる。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、室戸岬沖で包括的な海底監視システムを開発し、6本のシングルモードファイバーを備えた海底ケーブルは、陸上と海底の観測機器を接続している(Momma et al., 1997)。DASの観測には、海岸から伸びるケーブルの50km区間においてAPセンシング社製の機器を使用している。観測は時間サンプリング間隔500Hz、空間サンプリング間隔5.10m、ゲージ長40.8mで実施し、全チャンネル数は10789である。 2021年1月から3月に室戸沖に設置されたOFCのDAS観測によって記録された西日本で発生した地震に着目し、地震波形のチャンネル間の波形相関およびlag timeを計算した。まず、各チャンネルで記録された地震波形のP波の立ち上がり部を含む2秒間の波形を使用し、4-10Hzでバンドパスフィルタを適用した。次に隣り合うチャンネル同士で相互相関を計算し、係数が最大値をとる際のlag timeを100ch毎に積算することで(50chのoverlap)、OFCに沿ったlag timeの変化から海底OFCのカップリングを含む敷設環境を推定した。
徳島県下(深さ7km)で発生したMj4.0の地震に関して、室戸岬から約20-25km先(4000-5000ch)のlag timeを100ch毎に積算した結果を示す。4000-5000chにおける海底OFCはおおよそ南北方向に敷設されているため、OFCの北側で発生した地震に対するDAS記録はOFCに沿ってみかけ速度は正になる。一方、4000-4060ch、4100-4170ch、4480-4500ch、4780-4810ch、4940-4960chではみかけ速度が負を示した。さらに、みかけ速度が負の区間における地震波の位相は、隣のみかけ速度が正の区間の地震波の位相と逆(polarityが逆)を示した。また、4100-4170ch、4780-4810chにおいてはDASの信号の振幅が小さい区間(カップリングが弱いと考えられる)においてみかけ速度が負になっている。次に、同様の地震・チャンネルにおいて、地震波形のS波の立ち上がり部を含む2秒間で相互相関を計算しlag timeを100ch間で積算した。みかけ速度が負になったチャンネル区間はP波のものと同様だが、polarityが逆転したのはカップリングが弱いと考えられる区間のみであった。
以上の結果から海底面におけるOFCの敷設環境を推察すると、みかけ速度が負になる区間ではOFCが谷を下り、水深が深い箇所にあるOFCの方が地面から入射してくる波をより早く検知していると考えられる。一方、カップリングが弱い区間では、OFCが谷部をまたぐなどして水中に浮いていると考えられる。S波から水中へ変換した音波(疎密波)が水中を伝播し、水中に浮いたOFCにて記録されていると考えらえる。水の体積弾性率は0℃で約2.0MPa、SiO2のヤング率は約75GPaであり1~2桁程度異なるため、記録される振幅の違いは歪を計測する媒質の違いを表すと推測される。また走時ではS波が到来している時間だが、変換した疎密波が記録されているためpolarityが逆になったと考えられる。ちなみに、海底下堆積層におけるP波地震波速度は、浅部において1.5km/sを示し(Nakanishi et al., 2018; Tonegawa et al., 2021; JpGU)、水中の音波の伝播速度(1.5km/s)と同程度であるため、伝播した媒質の違いによるみかけ速度への影響は小さいと考えられる。