2:00 PM - 2:15 PM
[S03-01] Detection of small crustal deformations in a wide area using spatiotemporal functional model of post-seismic deformation after the 2011 Tohoku-oki earthquake
地殻変動の空間的分布を求めるためには、観測点ごとに抽出目的の地殻変動が含まれる期間の前後の差をとることによって求められるのが通常である。ところが、対象となる地域の範囲が広くなると、例えばプレート運動に伴うような広域の地殻変動も含まれてくるために、単純に2時期の差をとるだけでは、抽出目的以外の変動がノイズとなって現れてしまう。本報告では、国土地理院の電子基準点を200点以上利用し、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による余効変動を時間と空間両方で関数モデル(時空間モデル)化することで、実際の観測値からの差分を求めるだけで余効変動以外の微小な地殻変動を精度よく、かつ非常に簡便に求められることを示す。
Tobita (2016)により、下記の式で表される、2つの対数と1つの指数関数の混合モデルを用いることで、東北地方太平洋沖地震の余効変動の時系列が短・中期的な時間推移とともに、場所によって異なる余効変動の空間分布も予測できる時空間モデルが作成できることが示されている。
D(t)=a ln(1+t/b)+c+d ln(1+t/e) −f exp(−t/g)+Vt
ここで、D(t)は余効変動時系列の各成分、t は地震後の日数、lnは自然対数、b、 e、 g は全観測点に共通の対数関数または指数関数の緩和時定数、Vは観測点ごとの定常速度である。
この時空間モデルを利用して2020年までの余効変動の時系列を精査したところ、2015年2月以降に北海道から中部地方にかけての広域において一定速度で進行する新たな変動が見いだされた。この一定速度成分も新たに関数項として追加することで、時空間モデルの余効変動の推定精度を向上させた。
一般に、微小な地殻変動を時系列から検出するためには、対象となる場所や時期に合わせて近傍に基準となる固定点を設定したり、広域の変動を除去するためにトレンドを観測点ごとに推定したりといったモデル化をその都度ごとに行う必要がある。本報告は、このモデル化を時空間モデルであらかじめ与えてしまうものである。 最初にローカルな変動の抽出例として、2018年5月末~7月に発生した房総半島SSEについて図1に示す(固定点 福江)。数十日間の短期ではあるが、単純に2時期の差分をとった図1左では東北沖地震の余効変動があちこちに含まれており、そのパターンも一様でない。しかし、改良した時空間モデルを使用して時間変化を求めた図1右では房総半島のSSEのみがきれいに抽出されており、単純の2時期の差とは比べものにならない地殻変動抽出力を持っている。
この時空間モデルはさまざまな微小な変位現象を抽出するのに有効である。もちろん、上記のようなローカルな現象にも使えるが、ローカルな範囲内では大地震の余効変動という広域の現象は均一的に現れるため、ローカルな範囲内のみの差分でも十分なことが多い。したがって、本時空間モデルが真価を発揮するのは広域にわたる微小な現象の抽出である。こうした広域で微小な変動を検出する例として積雪による荷重変形による変動を図2に示す。この図は、例年3月上旬頃が最深積雪になることから地震後の各年(2015年を除く)3月11日前後の実測値から時空間モデルの残差を求め、その平均値を描いたものである。1~2mmという非常に小さな変化を求めてこうした図を作成するには各点で変化をモデル化するなど複雑な操作が必要になるが、時空間モデルを差し引くだけでこうした図が簡単に描くことができる。
この時空間モデルの特徴は、広域(北海道~中部地方)、高精度、簡便(観測値から差し引くだけ)、将来予測可能(新たな広域の現象が現れなければ使い続けられる)であり、変動検出には応用範囲も広い強力なツールである。
参考文献 Tobita M (2016) Earth Planets Space. https://doi.org/10.1186/s40623-016-0422-4
Tobita (2016)により、下記の式で表される、2つの対数と1つの指数関数の混合モデルを用いることで、東北地方太平洋沖地震の余効変動の時系列が短・中期的な時間推移とともに、場所によって異なる余効変動の空間分布も予測できる時空間モデルが作成できることが示されている。
D(t)=a ln(1+t/b)+c+d ln(1+t/e) −f exp(−t/g)+Vt
ここで、D(t)は余効変動時系列の各成分、t は地震後の日数、lnは自然対数、b、 e、 g は全観測点に共通の対数関数または指数関数の緩和時定数、Vは観測点ごとの定常速度である。
この時空間モデルを利用して2020年までの余効変動の時系列を精査したところ、2015年2月以降に北海道から中部地方にかけての広域において一定速度で進行する新たな変動が見いだされた。この一定速度成分も新たに関数項として追加することで、時空間モデルの余効変動の推定精度を向上させた。
一般に、微小な地殻変動を時系列から検出するためには、対象となる場所や時期に合わせて近傍に基準となる固定点を設定したり、広域の変動を除去するためにトレンドを観測点ごとに推定したりといったモデル化をその都度ごとに行う必要がある。本報告は、このモデル化を時空間モデルであらかじめ与えてしまうものである。 最初にローカルな変動の抽出例として、2018年5月末~7月に発生した房総半島SSEについて図1に示す(固定点 福江)。数十日間の短期ではあるが、単純に2時期の差分をとった図1左では東北沖地震の余効変動があちこちに含まれており、そのパターンも一様でない。しかし、改良した時空間モデルを使用して時間変化を求めた図1右では房総半島のSSEのみがきれいに抽出されており、単純の2時期の差とは比べものにならない地殻変動抽出力を持っている。
この時空間モデルはさまざまな微小な変位現象を抽出するのに有効である。もちろん、上記のようなローカルな現象にも使えるが、ローカルな範囲内では大地震の余効変動という広域の現象は均一的に現れるため、ローカルな範囲内のみの差分でも十分なことが多い。したがって、本時空間モデルが真価を発揮するのは広域にわたる微小な現象の抽出である。こうした広域で微小な変動を検出する例として積雪による荷重変形による変動を図2に示す。この図は、例年3月上旬頃が最深積雪になることから地震後の各年(2015年を除く)3月11日前後の実測値から時空間モデルの残差を求め、その平均値を描いたものである。1~2mmという非常に小さな変化を求めてこうした図を作成するには各点で変化をモデル化するなど複雑な操作が必要になるが、時空間モデルを差し引くだけでこうした図が簡単に描くことができる。
この時空間モデルの特徴は、広域(北海道~中部地方)、高精度、簡便(観測値から差し引くだけ)、将来予測可能(新たな広域の現象が現れなければ使い続けられる)であり、変動検出には応用範囲も広い強力なツールである。
参考文献 Tobita M (2016) Earth Planets Space. https://doi.org/10.1186/s40623-016-0422-4