The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

AM-1

Fri. Oct 15, 2021 9:00 AM - 10:30 AM ROOM D (ROOM D)

chairperson:Fumiaki Tomita(IRIDeS, Tohoku University), Yuto Nakamura(Hydrographic and Oceanographic Department, Japan Coast Guard)

10:00 AM - 10:15 AM

[S03-09] GNSS-Acoustic observations using a Wave Glider and the recent seafloor crustal deformation off Tohoku

〇Fumiaki TOMITA1,2, Takeshi Iinuma2, Motoyuki Kido1, Chie Honsho3, Yusaku Ohta3, Tatsuya Fukuda2 (1.IRIDeS, Tohoku University, 2.JAMSTEC, 3.Graduate School of Science, Tohoku University)

GNSS音響測距結合方式の海底地殻変動観測(GNSS-A観測)により,地震サイクルに伴う海域における地殻変動が捉えられるようになってきている [e.g., Honsho et al., 2019, JGR].GNSS-A観測では,海上でのGNSS測位及び海上-海底間の音響測距を行うための海上プラットフォーム(海上局)が必要であり,一般的に船舶を海上局とした観測が行われてきた.しかし,船舶を使用したGNSS-A観測は,人的・金銭的なコストが高いことが問題である.こうした高いコストが,近年増設が進んでいる多数のGNSS-A観測点において観測を高頻度で実施する上での障害となっている.海洋研究開発機構と東北大学では,波の力により無人航行可能なウェーブグライダーを海上局とした長期自律型のGNSS-A観測システムの開発に取り組んでいる。2019年7月に単独観測点での短期間の試験観測を実施し,ウェーブグライダーを用いた観測によって船舶と同程度の精度で海底地殻変動の検出が可能であることを示した [Iinuma et al., 2021, Frontiers in Earth Science].その後,1ヶ月程度の長期的なウェーブグライダーの運用による複数点での網羅的な観測を含め,2020年中に北三陸沖合の観測点において計3回の観測(6–7月・10月・11–12月)の実施に成功した [富田・他,JpGU2021].本発表では,上記の観測とその成果に加え,2021年4–5月に新たに実施した長期観測とその成果について紹介する.
ウェーブグライダーには,GNSS-A観測用機器として,2つのGNSSアンテナ(海上局位置計測及びGNSSジャイロによる姿勢2成分(Heading, pitch)計測用),音響船上装置,音響トランスデューサ(音響測距データ取得用),MEMSジャイロ(姿勢3成分計測用)を搭載した他,観測データの取得状況の確認及び陸上転送のためのThuraya衛星通信機器を搭載している.2021年4–5月の観測において,ウェーブグライダーは,新青丸 KS-21-05航海にて4月6日に根室沖のG22観測点で投入され,48日間の観測を経て,傭船航海にて5月25日に宮城県沖のG14観測点で回収された.この間,合計で17観測点にてGNSS-A観測を実施した.北三陸沖において,局所的な強い海流の影響を受け,ウェーブグライダーが観測点から流されることが数回発生したものの,網羅的な観測の実施に成功した.また,これまでのウェーブグライダーを用いた観測では,同機の移動速度を考慮して中心での定点(具体的には,100 m程度の半径での8の字航走)観測のみを実施していたが,音速勾配や上下変動成分の検出のため,海底局アレイの広がり程度の半径の円に沿った航走観測も実施した.
ウェーブグライダーによって取得した観測データを処理し,海底局アレイ変位の推定を行った.推定では, Honsho et al. [2019]の手法に基づき,海面から一定深度までの音速勾配層を仮定した解析を実施した.2016年以前の東北沖におけるGNSS-A観測はどの観測点でも年1回程度は行われていたが,2016年以降は上記の運用コスト等の問題によりほとんど観測を行うことができていなかった.しかし,ウェーブグライダーの導入により2020年以降,宮城沖県〜青森県沖の観測点で網羅的に観測を行うことができた.その結果,岩手県沖以北の観測点では,変動自体は小さいものの, 2015年に発生したSSEの影響もあるために,変動の向きが2016年以降やや変わっている様子が見られた.また,宮城県沖の観測点は粘弾性緩和による顕著な陸向きの変動が継続的に生じている様子が確認された一方,その変動速度はやや小さくなっている傾向が見られた. 本発表では,上記のウェーブグライダーによる観測の概要に加え,その結果を基にした東北沖北部の余効変動の水平成分についての議論を行う.