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[S03P-01] Continuous estimation of the transition process from coseismic rupture to initial postseismic slip based on the PTS analysis
地震時すべりから地震後の余効すべりに至る遷移過程の把握は,断層のすべり収支や摩擦特性の正確な理解に必要不可欠である.しかしながら地震時すべりの終了から余効すべりのごく初期の立ち上がりに至る,地震発生後の数分から半日程度の期間をGNSSで連続的に扱った事例は今のところ少数である.これは地表変位と大気遅延等の他の誤差要因との分離の困難性により,同時間スケールで既存の測位解析の精度が特に低下するためである.そこで我々は新たな手段として,GNSS搬送波位相変化から直接断層すべりを推定する手法 (以降PTS (Phase To Slip)) を用いた,広帯域断層すべりモニタリング技術の開発に取り組んでいる.PTSでは座標推定を行わず,生データである搬送波位相変化をグリーン関数と視線方向への幾何学的変換を介して直接断層すべりに結びつける.そして断層すべりと他の誤差要因の時間変化を一括で推定する.このような手法であれば未知パラメータの推定・分離状況の一体的な定量評価が可能であり,分離精度の改善において有利であると考えられる. 本研究では広帯域な断層すべり把握手段としてのPTSの性能評価を目的として,2011年東北地方太平洋沖地震の地震時すべり・初期余効すべりの連続的な推定を試みた.推定では東日本の73のGEONET点の搬送波1秒データを使用し,3月11日の14時から16時 (JST,本震発生は14時46分) の2時間について解析した.まず静的なグリーン関数としてOkadaの式を用いた推定では,本震と岩手沖・茨城沖で発生した余震の断層すべり分布やマグニチュードが通常測位と同等の精度で推定された.得られた結果は地震波形インバージョンによる推定とも概ね調和的となった.さらに上記の3つの地震時すべりとは別に,本震後の時間帯に初期余効すべりの発生も推定された.初期余効すべりは主に本震で大きくすべった領域の深い側に隣接する,岩手・福島・茨城付近の陸寄りの断層域に推定された.すべり量は本震後の34分間で0.2-0.5mとなり,Munekane (2012) 等の先行研究と比べて大きいものの,すべり域の位置としてはよく一致した.これらの結果により,PTSを用いて地震時と地震後のすべりを一括して推定可能であることが示された.一方で現状の推定では静的なグリーン関数を用いているため,地震動の影響は適切に扱われていない.したがって地震発生直後の最初の数分間の部分については,詳細な議論に達していない状況にある.そこで本発表ではさらに発展的な解析として動的なグリーン関数を用い,本震の動的な破壊過程と引き続く余効すべりの立ち上がりの一括推定を試みた結果を紹介する.そして地震時から地震後のすべり現象の遷移過程や両者の関係性,および背景の物理について議論を行う.また広帯域な断層すべり把握手段としての,PTSの有用性について論じる.