日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S03. 地殻変動・GNSS・重力

P

2021年10月14日(木) 15:30 〜 17:00 P1会場 (P会場)

15:30 〜 17:00

[S03P-05] 2018年以降GEONETで検出された南海トラフ沿いの長期的SSE

〇小沢 慎三郎1、水藤 尚1、宗包 浩志1 (1.国土交通省国土地理院地理地殻活動研究センター)

要旨 GNSS観測により、2018年以降、九州・四国・紀伊水道域で遷移的な地殻変動が観測された。観測された地殻変動から南海トラフ域のプレート間滑りを推定した。その結果、2018年6月頃から2019年8月頃にかけて、日向灘北部・豊後水道域で長期的SSEが発生し、2019年初めころから2021年1月にかけて四国中部で長期的SSEが発生したこと、2020年7月頃から日向灘南部で長期的SSEが発生していることが推定された。また紀伊水道では、2019年4月頃から2021年1月頃まで継続し、その後鈍化している。 はじめに 豊後水道では5~6年ほどの周期で繰り返し長期的SSEが発生してきた。四国中部では1977-1980年に水準測量の結果から長期的SSEの発生が推定されている(Kobayashi,2012)。紀伊水道の長期的SSEは、1996, 2000, 2016年に発生している(Kobayashi,2014; Kobayashi,2017)。そのような中、2018年6月頃から、九州北部で遷移的な地殻変動が発生し、その後2018年10月頃から豊後水道周辺で遷移的な地殻変動が発生している。また四国中部で2019年初めころから豊後水道SSEに伴う地殻変動と異なった遷移変動が発生している。2020年7月頃から九州南部で遷移的な変動が発生し、2021年7月まで続いている。紀伊水道では、2019年4月頃から遷移的な変動が発生している。本研究では、GNSSで観測された地殻変動のデータから、四国・九州・紀伊水道域のプレート間滑りの時空間変化を推定した。 解析手法 九州域では豊後水道域で2006-2009年間、宮崎南部域で2007/1-2009/1間、種子島域で2008/3-211/3間の一次トレンドを除去している。四国中部、紀伊水道域では2017/1-2018/1間の一次トレンドを除去した。九州域に関しては、2011年東北地方太平洋沖地震、2016年熊本地震の余効変動を粘弾性緩和のシミュレーション結果に基づいて除去している(Suito 2017;水藤2017)。このようにして得られた東西、南北、上下の座標時系列データを用いて時間依存のインバージョン解析を九州・四国域、四国中部域及び紀伊水道域に関して行った。観測点は南海トラフ域の観測点約250点を使用した。弘瀬他(2008)によりコンパイルされたフィリピン海プレートの形状を九州・四国域、四国中部域の解析では三角形要素で表して解析に使用している。グリッド間隔は、20-40km程度としている。プレート境界面上のすべりの方向はプレート収束方向になるように拘束をかけた。紀伊水道域に関しては、弘瀬他(2008)によりコンパイルされたフィリピン海プレートの形状をスプライン曲面で表し、滑り方向は東向きから南向きの範囲に拘束した。グリッド間隔は10km程としている。 結果と考察 2018年6月頃から2019年8月頃にかけて日向灘北部・豊後水道でSSEが発生している。豊後水道SSEと同時期に四国中部でSSEが発生し、2020年7月まで継続している。豊後水道SSEはMw6.9、四国中部SSEはMw6.1程度と推定された。豊後水道SSEはおおよそ5-6年周期と調和的で、四国中部は、1977-1980年に発生し、2013年に発生しているが、その繰り返し間隔はあまり周期的でないように見える。2018年末に日向灘南部で長期的SSEが発生し、2020年7月頃から日向灘南部で長期的SSEがまた発生している。紀伊水道のSSEは、2019年4月頃から2021年1月頃まで継続し、その後鈍化している。繰り返し間隔ははっきりしないように思われる。