日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S07. 地球及び惑星の内部構造と物性

P

2021年10月15日(金) 15:30 〜 17:00 P4会場 (P会場)

15:30 〜 17:00

[S07P-01] 北極域における内核の東西半球境界の位置の調査

〇岩崎 理史1 (1.京都大学大学院)

1. はじめに
内核表層の詳細な構造の把握は、外核の対流、内核の成長過程や深部構造を理解する上で重要である。Tanaka and Hamaguchi(1997) は、内核の表層100km~500kmに高速等方的な東半球と低速異方的な西半球が存在することを発見した。東西半球の違いは、その後表層100kmにも存在することがわかった(Niu and Wen, 2001)。しかし、東西半球の境界の位置や形状はいまだ議論の中にある(e.g. Waszek and Deuss 2011, Miller et al. 2013, Ibourichene and Romanowicz 2018, Iritani et al. 2019, Ohtaki et al. 2021)。本研究では、北極域ユーラシア大陸北部に最深点をもつPKIKPとPKiKPの走時差をもとに、東西半球の境界について検討する。
2. 使用データ・解析手法
本研究では、空間的に高密度なデータが利用可能なことから、IRISで収集された2013年1月から2016年6月までの北米東部の広帯域地震計のデータを用いた。震央距離130~150°を伝わるPKIKPを調査するために、インドネシア付近(緯度5.03°S~4.78°N、経度95.07°E~104.63°E)で起きた震源の深さ38~151km、Mw 5.6~6.6 の7つの地震を使用した。IRISから取得した上下動成分の波形データは、地震計の応答関数を取り除き、地動速度に対して0.5~2 Hzのバンドパスフィルターをかけて使用した。  本研究では、PKiKPとPKIKPの観測走時差とAK135モデル (Kennett et al., 1995 )の理論走時差を比較し、両者の違い(δt)の空間分布を調べる。PKiKPとPKIKPの理論走時はTauP Toolkit(Crotwell et al., 1999)で算出した。PKiKPとPKIKPの観測値は、SN比改善のために震央距離幅数度内の波形をスタッキングした上で、振幅の極大値から読み取った。これには波の走時差とともにみかけのスローネスの違いが評価できる利点がある。スタッキング にはphase weighted stack法(Schimmel and Paulssen, 1997)を用いた。PKIKPと後続のPKiKPの同定には、 PKiKPとPKIKPの極性が逆になること、PKIKPの極性がGlobal CMT解と合うこと、PKiKPのみかけのスローネスがPKIKPより大きいことを条件にした。PKiKPやPKIKPの走時やみかけのスローネスがAK135から大きく外れる極大値は除外した。なお、本研究のPKIKPの波線は、AK135モデルより、自転軸から64~80°程度傾いていると考えられる。
3. 結果・議論
本研究で調査したPKIKPの最深点は、北緯60°~80°、東経70°~130°の領域に位置する。東西半球の境界が経線であるwedge model(Niu and Wen 2001, Waszek and Deuss 2011)では内核内波線の大部分が高速な東半球を通過して正のδtが予想されるが、震央距離幅2°のスタッキングによる本研究の結果では、震央距離130~150°にわたってゼロから負のδtが卓越して観測され、低速な西半球の特性を示す。この結果はIbourichene and Romanowicz (2018)とも調和的であり、東西半球の境界が北極点を通らないTanaka and Hamaguchi (1997)のようなeye-ball model(Ohtaki et al., 2021)の東西半球境界と合うようにみえる。