12:00 PM - 12:15 PM
[S08-11] Estimation of inelastic deformation using geodetic and seismic data: Application to Niigata-Kobe Tectonic Zone
地震は地殻内の弾性歪みエネルギーを解消する現象であることから、地殻内の歪みエネルギーの蓄積状況を知ることは、地震の発生メカニズムを理解する上で重要である。そのため、我々はこれまで地震データと測地データに基づいて地殻内の歪みエネルギー変化をモニタリングする手法の開発を行ってきた。
歪みエネルギー変化は、背景応力場と応力変化から定量的に評価することができる。地震発生に至る歪みエネルギー蓄積(時間変化)をモニタリングするためには、周辺の地殻活動による応力変化の正確なモデル化が必要となる。プレート境界地震を発生させる歪みエネルギー蓄積の原因は、プレート境界での安定すべりや固着といったすべりの不均質による応力変化にあると理解できるのに対して、内陸の地殻浅部で発生する地震(内陸地震)はプレート境界ほど明瞭な構造境界のない場所で発生するため、プレート境界地震と同じ枠組みをそのまま適用することはできない。そこで本研究では、応力変化の原因である地殻内非弾性変形をプレート境界のような平面に限定させるのではなく、3次元モーメントテンソル密度分布としてモデル化することで、地殻内の応力変化の汎用的な推定手法を確立することを目指している。
Noda & Matsu'ura (2010) で提案した3次元モーメントテンソル密度分布の推定手法では、モーメントテンソルの方向も含めて推定したが、地表の限られたGNSS観測データから地下のモーメントテンソル6成分を一意に決定できるか、その信頼性が残された課題となっていた。地殻変動の力源たるモーメントテンソルの物理的実体が、地殻内の微小なクラックで生じる脆性破壊や塑性流動といった非弾性変形であることを考慮すると、その方向は基本的にテクトニック応力場(背景応力場)に従うはずである。そこで、モーメントテンソルの方向を応力場の方向に固定した上でモーメントテンソル密度分布を推定することとした。応力場の情報は、対象地域で発生した地震のメカニズム解から推定できる。つまり、モーメントテンソルを応力場の方向に固定する新たな手法では、測地データでは足りない情報を地震データの情報で補い、モデルの信頼性を高めることができる。
本講演では、新潟神戸変形集中帯への適用例を紹介する。新潟神戸変形集中帯のうち東経136°以東をモデル領域とし、F-netメカニズム解からモデル領域内の平均的な応力場を推定した。次に、GEONETのF3解を時系列解析して2004年中越地震等の地震イベントによる変動を取り除き、地震間のGNSS変位速度データを得た。モーメントテンソルの方向を平均的な応力場に固定し、変位速度データから3次元モーメントテンソル密度分布を推定した結果、新潟神戸変形集中帯に沿って不均質な分布が推定された。
Noda & Matsu'ura (2010) の結果と比較すると、Noda & Matsu'ura (2010) のモーメントテンソル密度のピークのうち、モーメントテンソルの方向が背景応力場と調和的な領域に関しては、本研究の解析でも同様のピークが現れた。一方、Noda & Matsu'ura (2010) でモーメントテンソルの方向が背景応力場と食い違う領域に関しては、本研究の結果ではモーメントの集中は見られなかった。したがって、モーメントテンソルの方向を固定することにより、その場のテクトニクスと調和的なモーメント、つまり非弾性変形を抽出することができたと考えられる。
歪みエネルギー変化は、背景応力場と応力変化から定量的に評価することができる。地震発生に至る歪みエネルギー蓄積(時間変化)をモニタリングするためには、周辺の地殻活動による応力変化の正確なモデル化が必要となる。プレート境界地震を発生させる歪みエネルギー蓄積の原因は、プレート境界での安定すべりや固着といったすべりの不均質による応力変化にあると理解できるのに対して、内陸の地殻浅部で発生する地震(内陸地震)はプレート境界ほど明瞭な構造境界のない場所で発生するため、プレート境界地震と同じ枠組みをそのまま適用することはできない。そこで本研究では、応力変化の原因である地殻内非弾性変形をプレート境界のような平面に限定させるのではなく、3次元モーメントテンソル密度分布としてモデル化することで、地殻内の応力変化の汎用的な推定手法を確立することを目指している。
Noda & Matsu'ura (2010) で提案した3次元モーメントテンソル密度分布の推定手法では、モーメントテンソルの方向も含めて推定したが、地表の限られたGNSS観測データから地下のモーメントテンソル6成分を一意に決定できるか、その信頼性が残された課題となっていた。地殻変動の力源たるモーメントテンソルの物理的実体が、地殻内の微小なクラックで生じる脆性破壊や塑性流動といった非弾性変形であることを考慮すると、その方向は基本的にテクトニック応力場(背景応力場)に従うはずである。そこで、モーメントテンソルの方向を応力場の方向に固定した上でモーメントテンソル密度分布を推定することとした。応力場の情報は、対象地域で発生した地震のメカニズム解から推定できる。つまり、モーメントテンソルを応力場の方向に固定する新たな手法では、測地データでは足りない情報を地震データの情報で補い、モデルの信頼性を高めることができる。
本講演では、新潟神戸変形集中帯への適用例を紹介する。新潟神戸変形集中帯のうち東経136°以東をモデル領域とし、F-netメカニズム解からモデル領域内の平均的な応力場を推定した。次に、GEONETのF3解を時系列解析して2004年中越地震等の地震イベントによる変動を取り除き、地震間のGNSS変位速度データを得た。モーメントテンソルの方向を平均的な応力場に固定し、変位速度データから3次元モーメントテンソル密度分布を推定した結果、新潟神戸変形集中帯に沿って不均質な分布が推定された。
Noda & Matsu'ura (2010) の結果と比較すると、Noda & Matsu'ura (2010) のモーメントテンソル密度のピークのうち、モーメントテンソルの方向が背景応力場と調和的な領域に関しては、本研究の解析でも同様のピークが現れた。一方、Noda & Matsu'ura (2010) でモーメントテンソルの方向が背景応力場と食い違う領域に関しては、本研究の結果ではモーメントの集中は見られなかった。したがって、モーメントテンソルの方向を固定することにより、その場のテクトニクスと調和的なモーメント、つまり非弾性変形を抽出することができたと考えられる。