14:15 〜 14:30
[S08-15] 固着域を伝播する非地震性すべりの伝播速度
速度・状態依存則を用いて地震発生サイクルの数値シミュレーションを行い,地震間(前の地震の直後から次の地震の直前まで)の非地震性すべりの時空間発展を調べた.モデルでは,沈み込み域のプレート境界を仮定し,十分深部のプレート境界に一定の安定すべり速度Vplを与えた.シミュレーションでは,浅部の速度弱化域(a-b<0)で地震が周期的に発生し,深部の速度強化域(a-b>0)で常に非地震性すべりが発生する状況が再現される.地震間での速度弱化域は完全に固着しているわけではなく,非地震性すべりが深部から浅部に伝播していく.深部の非地震性すべりにより固着域の最深部で応力集中が生じ,固着が徐々に破壊されていくためである.図1は,地震間のすべり速度の時空間分布のシミュレーション結果の例であり,(a)は速度・状態依存則の特徴的すべり量L =20mmの場合,(b)はL =100mmの場合である.ξはプレート境界に沿って地表から測った距離であり,速度弱化域と速度強化域の境界はξ=113 kmである.深部の速度強化域では常に非地震性すべりが発生しており,これは速度弱化域に徐々に伝播していく様子が見られる.速度弱化域での非地震性すべりのすべり速度は0.1Vpl程度であり,伝播速度はほぼ一定で,Vplに比例し,(b-a)σに反比例することがわかった(σは有効法線応力).特徴的すべり量Lには依存しない.非地震性すべりの伝播に伴い,プレート境界のせん断応力は,前の地震による応力降下の状態から,すべり速度約0.1Vplに対応する定常応力まで増大する(負の応力降下).非地震性すべり域の先端では,深部の非地震性すべりによる応力集中と,非地震性すべりの伝播による負の応力降下による負の応力集中とが釣り合っている状況であると考えることができる.この2つの状況の応力拡大係数が等しいと仮定し,均質無限弾性体中の半無限長クラックの解を利用すると,非地震性すべりの伝播速度を導くことができ, Vplに比例し(b-a)σに反比例するというシミュレーション結果を説明することができる.図1の2つの例の場合の理論的な伝播速度は約80 m/yで,シミュレーションで得られる約100 m/yと非常に近い値が得られる.非地震性すべりの伝播は測地データなどから検出できる可能性がある.Bruhat & Segall (2017)はCascadia沈み込み帯においてプレート境界の固着域で伝播する非地震性すべりの伝播速度を30–120 m/yと推定した.この結果から,前述の関係を使うと,(b-a)σは0.1–0.3 MPaと推定することができる.
図1では,サイクルの後半ですべり速度の顕著な増大がみられる.このエピソディックすべりは,Lが小さいほど,またσが小さいほど顕著となる傾向がある(図1a).プレート境界の浅部行くほど,前の地震による応力降下から回復しておらず低応力状態にあるので,このすべりは浅部にはあまり伝播せず停止する.一方,深部方向には高速で逆伝播し,その伝播速度は図1(a)の場合は4 km/yである.図1(b)の場合は,すべり域の先端が明瞭でなく,伝播速度は決められない.このエピソディックすべりに伴い,せん断応力は,ほぼτss(V)に沿って低下する.
文献
Bruhat, L. & Segall, P., 2017, Geophys J Int., 211, 427-449.
図1では,サイクルの後半ですべり速度の顕著な増大がみられる.このエピソディックすべりは,Lが小さいほど,またσが小さいほど顕著となる傾向がある(図1a).プレート境界の浅部行くほど,前の地震による応力降下から回復しておらず低応力状態にあるので,このすべりは浅部にはあまり伝播せず停止する.一方,深部方向には高速で逆伝播し,その伝播速度は図1(a)の場合は4 km/yである.図1(b)の場合は,すべり域の先端が明瞭でなく,伝播速度は決められない.このエピソディックすべりに伴い,せん断応力は,ほぼτss(V)に沿って低下する.
文献
Bruhat, L. & Segall, P., 2017, Geophys J Int., 211, 427-449.