The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S08. Earthquake physics

AM-2

Sat. Oct 16, 2021 11:00 AM - 12:15 PM ROOM B (ROOM B)

chairperson:Keisuke Yoshida(Tohoku University), Makoto Naoi(DPRI, Kyoto Univ.)

12:00 PM - 12:15 PM

[S08-22] Source-parameter dependencies appeared in earthquake pre-P elasto-gravity signals and the difference from seismic waves

〇Kantaro Kawai1, Nobuki Kame1 (1.ERI, UNIVERSITY OF TOKYO)

地震の動的破壊は断層周辺に質量再分配を引き起こし、また地震波は岩石の密度変動を伴いながら伝播する。両過程はP波到達前に過渡的な重力変動を引き起こす。このようなP波前重力信号は、既住研究において複数の大地震のデータ中に検出されてきた。しかし、検出は垂直成分に限定されノイズの高い水平成分は利用されてこなかった。
 木村(2020, 学位論文)は、Hi-net水平加速度計(tiltmeter)アレイデータ解析から2011年の Mw 9.1 東北沖地震におけるP波前重力信号の水平成分を初めて検出した。これを、広域帯地震計の信号垂直成分と組み合わせ3成分全波形を用いて震源パラメータのグリッドサーチを行ったところ、断層の傾斜角 δ を11.5°-15.3°、Mw 8.75-8.92 に制約することに成功した。地球自由振動の理論研究において地震波の励起は、δ が小さく震源が浅い地震に対して地震モーメントをM0とすると M0 sin(2δ) に近似的に比例し、δMw はそれぞれ独立に決定できない量であることが示される(Kanamori and Given, 1981)。木村の研究は従来の自由振動理論では説明されていないP波前信号の震源励起依存性を示している。そこで本研究では、この新たに見いだされた信号特性を理解することを目指して、理論波形合成計算コードを用いた数値実験を行った。
 数値実験には Zhang et al. (2020)と Wang et al. (2017)によって開発された計算コードQSSPPEGS_potential_Code を用いた。この計算コードは、従来の長周期地震波形合成計算と同じ弾性重力完全結合の方程式を用いて現実的な地球構造におけるP波前重力信号の波形合成を可能にする。これまでに提案されてきた計算法と異なり、一切の近似計算をしていないことが特徴であり、また現実的な時間で実用制度の波形を得ることができる。ここでは、2011年 Mw 9.1 東北沖地震の傾斜角を系統的に変化させた模擬P波前重力信号波形を合成し、振幅の傾斜角依存性を調べた。点震源を仮定し、Mw = 9.1 に固定し、δ = 10°, 15°, 20°, 25°, 30° と変化させた。観測点を神岡として、地動加速度(d2/dt2)u 、重力場の変化 δg のそれぞれの成分を合成し、これらを用いて観測されるP波前重力信号を求めた。ここで、加速度センサーの出力s は重力変化そのものではなく、地動加速度の影響を受け s = (d2/dt2)u - δg となることに注意が必要である。
 結果、(d2/dt2)u δg の水平成分は共に sin(2δ) の依存性を示すが、信号出力 s = (d2/dt2)u - δg には sin(2δ) とは異なる傾斜角依存性がみられた。計算前の想定通りに (d2/dt2)u δg M0 sin(2δ) で震源励起され、これらの差をとると新しい傾斜角依存性が現れる結果となった。一方、想定とは異なり (d2/dt2)u δg の垂直成分の振幅は共に、sin(2δ) の依存性を示さなかった。逆に、s = (d2/dt2)u - δg sin(2δ) の依存性を示す結果となった。このP波前重力信号 sδ 依存性は水平成分と垂直成分ともに木村(2020)の実データ解析結果と調和的である。しかし、数値実験の垂直成分の結果は想定しておらず、今後、地球自由振動の理論との整合性との検討が必要である。