日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

PM-1

2021年10月16日(土) 13:30 〜 14:00 B会場 (B会場)

座長:平野 史朗(立命館大理工)

13:45 〜 14:00

[S08-24] テクトニック微動から低周波地震を抽出する

〇井出 哲1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

テクトニック微動と低周波地震(LFE)は、広帯域スロー地震の高周波(1Hz以上)成分の異なる表現であり、様々な地域で発見されている。LFEは微動の構成要素と考えられているが、長時間続く微動の中には、構成要素とみなせるLFEを見つけることが困難な場合も多い。そこで本研究では一般的に微動中から合成LFE、つまり微動発生地域におけるインパルス的震源からの地動応答を抽出する新しい手法を開発した。合成LFEは、多くの観測点で同時に発生する微動信号のインパルス性を用いて定義され、規格化してスタックした微動波形の絶対振幅最大値を最大化することで抽出される。この最大化関数は、極めて多峰的なので、遺伝的アルゴリズムと反復的改善を組み込んだ最適化手法を用いて最大化する。まず、この手法の妥当性をテストデータに適用して検証した後、近隣でLFEがほとんど検出されていない微動活動に適用する。一例は、潮汐応力に非常に敏感であることが知られている岡山の微動である。この微動に対して抽出した合成LFEは、正確な震源位置の決定や、マッチドフィルター解析による長期にわたる包括的な微動活動の把握に役立つ。具体的には海溝軸から遠く離れているにもかかわらず、岡山の微動の深さは約26kmと極めて浅いことがわかる。このように、LFEを微動のインパルス性を用いて新たに定義できることは、連続する微動活動は、ランダムな揺らぎで構成されているという仮説を支持する。スロー地震の挙動をより深く理解するためには、このようなランダム性を定量的に特徴づけることが重要である。