15:30 〜 17:00
[S08P-01] 2016年熊本地震の相似地震
・はじめに
相似地震とは波形が類似している地震のことで、同じ小さなアスペリティを繰り返し破壊することで発生している(e.g. Nadeau and Johnson, 1998)。内陸地震においても相似地震は主に大地震後に起こる余効すべりに伴って観測される(e.g. Hiramatsu et al., 2011)。継続時間の長い余効すべりでは、構成する地震の数が多く、長い発生期間をもつ相似地震群が見つかる可能性があり、このような相似地震群が多く見つかることは余効すべりを含む内陸大地震後の断層の挙動の解明につながることが期待される。そこで本研究では、2016年4月14日21時26分(Mj6.5)の前震をはじめとし、2016年4月15日0時3分(Mj6.4)、2016年4月16日1時25分(Mj7.3)の本震が3日間の間に立て続けに発生し、余震活動も活発で継続時間の長い余効すべりが期待できる2016年熊本地震を用いた(ここでは以後、Mj6.5の地震を前震、Mj7.3の地震を本震と呼ぶことにする)。
本研究では、2016年熊本地震の余震から多数の地震が属し長期間にわたる相似地震群を分類し、相似地震群を用いて大地震後の断層の挙動のモニタリングを試みた。
・データと方法
データは気象庁で記録された一元化震源データ用い、解析期間は前震が起こった2016年4月14日からの約2年間で、深さは20kmまで、Mj1.5からMj4.5のものを使用した。
はじめに、緯度・経度差が0.002度以内で、深さの差が0.3km以内である地震のペアを見つけ、異なる地震ペアが同じ地震を共有している場合は同じグループの相似地震候補と見なしグループ分けを行った。WINシステム(Urabe and Tsukada, 1991)を用いて同一観測点で同一グループの異なる地震のP波とS波の到着時間を再験測し、その値を使って験測走時差を求めた。次に、再験測した到着時間に基づき上下動成分のP波、S波部分をクロススペクトル解析し、1-8Hzの周波数帯においてコヒーレンスが0.8以上のデータを用いて解析走時差を求めた。そして、Double-Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を用いて精密再震源決定を行った。その後、スカラーモーメントとマグニチュードのスケーリング関係(Hanks and Kanamori, 1979)と円形クラックモデルの式(Brune, 1970; 1971)を用いて震源域の大きさを推定した。
・結果と考察
震源域の重なり度合いや波形の類似性やマグニチュードの差を考慮して分類された相似地震の内、前震の破壊域に含まれる相似地震においては、Asano and Iwata(2016)によって推定された前震のアスペリティの端に分布している。これは小アスペリティが本震のアスペリティの周囲に分布することを示しており、2007年能登半島地震(Hiramatsu et al., 2011)、2000年鳥取県西部地震(Hayashi and Hiramatsu, 2013)の相似地震の結果と調和的である。また、相似地震は前震・本震の破壊域から離れた位置でも発生しており、前震・本震の破壊域だけでなくその周辺の余震域においても余効すべりが起こっていた可能性がある。
また、Somerville et al, (1999)によるスカラーモーメントとすべり量の式から相似地震のすべり量を算出し、相似地震のすべり量と繰り返し間隔からすべり速度を算出した。2016年6月30日以前に一つ目の地震が発生している相似地震群において、その繰り返し間隔は前震からの経過時間とともに増加し、すべり速度は前震からの経過時間とともに減少していることが分かった。これは、前震によって発生した余効すべりの減衰を反映しているのではないかと考えられる。
謝辞:本研究には防災科学技術研究所Hi-netや九州大学、気象庁の観測点で記録された地震波形を使用しました。記して感謝いたします。
相似地震とは波形が類似している地震のことで、同じ小さなアスペリティを繰り返し破壊することで発生している(e.g. Nadeau and Johnson, 1998)。内陸地震においても相似地震は主に大地震後に起こる余効すべりに伴って観測される(e.g. Hiramatsu et al., 2011)。継続時間の長い余効すべりでは、構成する地震の数が多く、長い発生期間をもつ相似地震群が見つかる可能性があり、このような相似地震群が多く見つかることは余効すべりを含む内陸大地震後の断層の挙動の解明につながることが期待される。そこで本研究では、2016年4月14日21時26分(Mj6.5)の前震をはじめとし、2016年4月15日0時3分(Mj6.4)、2016年4月16日1時25分(Mj7.3)の本震が3日間の間に立て続けに発生し、余震活動も活発で継続時間の長い余効すべりが期待できる2016年熊本地震を用いた(ここでは以後、Mj6.5の地震を前震、Mj7.3の地震を本震と呼ぶことにする)。
本研究では、2016年熊本地震の余震から多数の地震が属し長期間にわたる相似地震群を分類し、相似地震群を用いて大地震後の断層の挙動のモニタリングを試みた。
・データと方法
データは気象庁で記録された一元化震源データ用い、解析期間は前震が起こった2016年4月14日からの約2年間で、深さは20kmまで、Mj1.5からMj4.5のものを使用した。
はじめに、緯度・経度差が0.002度以内で、深さの差が0.3km以内である地震のペアを見つけ、異なる地震ペアが同じ地震を共有している場合は同じグループの相似地震候補と見なしグループ分けを行った。WINシステム(Urabe and Tsukada, 1991)を用いて同一観測点で同一グループの異なる地震のP波とS波の到着時間を再験測し、その値を使って験測走時差を求めた。次に、再験測した到着時間に基づき上下動成分のP波、S波部分をクロススペクトル解析し、1-8Hzの周波数帯においてコヒーレンスが0.8以上のデータを用いて解析走時差を求めた。そして、Double-Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を用いて精密再震源決定を行った。その後、スカラーモーメントとマグニチュードのスケーリング関係(Hanks and Kanamori, 1979)と円形クラックモデルの式(Brune, 1970; 1971)を用いて震源域の大きさを推定した。
・結果と考察
震源域の重なり度合いや波形の類似性やマグニチュードの差を考慮して分類された相似地震の内、前震の破壊域に含まれる相似地震においては、Asano and Iwata(2016)によって推定された前震のアスペリティの端に分布している。これは小アスペリティが本震のアスペリティの周囲に分布することを示しており、2007年能登半島地震(Hiramatsu et al., 2011)、2000年鳥取県西部地震(Hayashi and Hiramatsu, 2013)の相似地震の結果と調和的である。また、相似地震は前震・本震の破壊域から離れた位置でも発生しており、前震・本震の破壊域だけでなくその周辺の余震域においても余効すべりが起こっていた可能性がある。
また、Somerville et al, (1999)によるスカラーモーメントとすべり量の式から相似地震のすべり量を算出し、相似地震のすべり量と繰り返し間隔からすべり速度を算出した。2016年6月30日以前に一つ目の地震が発生している相似地震群において、その繰り返し間隔は前震からの経過時間とともに増加し、すべり速度は前震からの経過時間とともに減少していることが分かった。これは、前震によって発生した余効すべりの減衰を反映しているのではないかと考えられる。
謝辞:本研究には防災科学技術研究所Hi-netや九州大学、気象庁の観測点で記録された地震波形を使用しました。記して感謝いたします。