15:30 〜 17:00
[S08P-03] ニュージーランド北島ラウクマラ半島周辺で発生するプレート境界地震の震源パラメータの特徴
背景
ニュージーランド北島は太平洋プレートがオーストラリアプレート下に沈み込んでいる地域であり、スロースリップイベント、微動、繰り返し地震など多様な地震活動が観測されている。反射法地震探査やMT法(Magnetotelluric法)による調査から、流体や沈み込む海山の存在といった摩擦特性に関わる特徴と前述の多様な地震活動が結びついていることが分かってきた(例えば、Bell et al., 2009)。ニュージーランド北島は摩擦特性と地震活動や震源パラメータの関係を調べるうえで格好の研究対象となっている。
Tateiwa et al. (2021, JpGU)はニュージーランド北島北東部に位置するラウクマラ半島周辺で発生する繰り返し地震の震源パラメータ(地震モーメントと繰り返し間隔の関係やコーナー周波数)の特徴を調べることで繰り返し地震発生域での摩擦特性について議論を行った。しかし、そこで用いられた繰り返し地震の数は少なく解析領域も限られていたため、地震数を増やすことによってより信頼性の高い空間分布が求められていた。本研究ではラウクマラ半島周辺で発生する通常のプレート境界地震の震源パラメータを調べ、繰り返し地震に限らず解析される地震の数を増やすことで地震発生域における摩擦特性についての議論をTateiwa et al. (2021, JpGU)に引き続き行う。
データ・手法
プレート境界地震抽出のため以下のような手順を踏む。
1. プレート境界で発生したと考えられている1966年ギズボーン地震とメカニズム解が似ており、かつ震源がプレート境界(Williams et al., 2013)に近い地震を既存のGeoNetカタログから探し出す。ここで選ばれた地震をReference eventと呼び、プレート境界で発生した地震であると解釈する。
2. 各Reference eventと震源が近く、かつ初動付近の波形が3観測点以上で類似しているM>2の地震を探す。ここで選ばれた地震をTarget eventと呼び、やはりプレート境界で発生した地震であると考える。
3. Target eventを新たなReference eventとし2に戻る。
Target eventが新たに選ばれなくなるまで上記のループを繰り返すことで最初のReference eventを中心としてプレート境界地震探索網が広がっていく。本研究ではループが4回行われ、最初のReference eventとして13個の地震が、Target eventとして累計111個の地震が選ばれた。これら計124個の地震のうちM>3の地震101個についてスペクトル比法を用いてコーナー周波数(fc)の推定を行い、M0fc3やP波とS波のコーナー周波数の比(fcP/fcS)の空間分布を調べる。
結果・議論
P波、S波ともにlog(M0fc3)はラウクマラ半島北西部で約18、それ以外の領域で約17となり、ラウクマラ半島北西部で大きくなる傾向にあった。また、繰り返し地震のlog(M0fc3)の値とも整合的な結果となった。log(M0fc3)が大きくなっている領域はヒクランギ海台の沈み込みによりプレート境界の形状が大きく変化している領域にあたる。形状の影響で高い応力がかかるため応力降下量が高くなったと考えればM0fc3が大きな値を示す理由が説明できる。なお、コーナー周波数を推定できたプレート境界地震の数は、繰り返し地震で5個、通常地震で63個であるためデータ数を増やすという目的は適切に達成されている。
Tokomaru-Tolagaでは他の領域よりもfcP/fcSの値がやや小さな値をとる傾向にあった。fcP/fcSが小さいことは破壊伝播速度が大きいことを示唆する(Kaneko and Shearer, 2015)。Tokomaru-Tolagaの地震発生域よりもややup-dip側では流体に富む沈み込んだ堆積物が存在すると指摘されている。断層の剛性率が小さいと破壊伝播速度が大きくなることが知られているため、Tokomaru-Tolagaのやや小さなfcP/fcS(やや大きな破壊伝播速度)は低剛性率な堆積物が原因となっている可能性がある。
ニュージーランド北島は太平洋プレートがオーストラリアプレート下に沈み込んでいる地域であり、スロースリップイベント、微動、繰り返し地震など多様な地震活動が観測されている。反射法地震探査やMT法(Magnetotelluric法)による調査から、流体や沈み込む海山の存在といった摩擦特性に関わる特徴と前述の多様な地震活動が結びついていることが分かってきた(例えば、Bell et al., 2009)。ニュージーランド北島は摩擦特性と地震活動や震源パラメータの関係を調べるうえで格好の研究対象となっている。
Tateiwa et al. (2021, JpGU)はニュージーランド北島北東部に位置するラウクマラ半島周辺で発生する繰り返し地震の震源パラメータ(地震モーメントと繰り返し間隔の関係やコーナー周波数)の特徴を調べることで繰り返し地震発生域での摩擦特性について議論を行った。しかし、そこで用いられた繰り返し地震の数は少なく解析領域も限られていたため、地震数を増やすことによってより信頼性の高い空間分布が求められていた。本研究ではラウクマラ半島周辺で発生する通常のプレート境界地震の震源パラメータを調べ、繰り返し地震に限らず解析される地震の数を増やすことで地震発生域における摩擦特性についての議論をTateiwa et al. (2021, JpGU)に引き続き行う。
データ・手法
プレート境界地震抽出のため以下のような手順を踏む。
1. プレート境界で発生したと考えられている1966年ギズボーン地震とメカニズム解が似ており、かつ震源がプレート境界(Williams et al., 2013)に近い地震を既存のGeoNetカタログから探し出す。ここで選ばれた地震をReference eventと呼び、プレート境界で発生した地震であると解釈する。
2. 各Reference eventと震源が近く、かつ初動付近の波形が3観測点以上で類似しているM>2の地震を探す。ここで選ばれた地震をTarget eventと呼び、やはりプレート境界で発生した地震であると考える。
3. Target eventを新たなReference eventとし2に戻る。
Target eventが新たに選ばれなくなるまで上記のループを繰り返すことで最初のReference eventを中心としてプレート境界地震探索網が広がっていく。本研究ではループが4回行われ、最初のReference eventとして13個の地震が、Target eventとして累計111個の地震が選ばれた。これら計124個の地震のうちM>3の地震101個についてスペクトル比法を用いてコーナー周波数(fc)の推定を行い、M0fc3やP波とS波のコーナー周波数の比(fcP/fcS)の空間分布を調べる。
結果・議論
P波、S波ともにlog(M0fc3)はラウクマラ半島北西部で約18、それ以外の領域で約17となり、ラウクマラ半島北西部で大きくなる傾向にあった。また、繰り返し地震のlog(M0fc3)の値とも整合的な結果となった。log(M0fc3)が大きくなっている領域はヒクランギ海台の沈み込みによりプレート境界の形状が大きく変化している領域にあたる。形状の影響で高い応力がかかるため応力降下量が高くなったと考えればM0fc3が大きな値を示す理由が説明できる。なお、コーナー周波数を推定できたプレート境界地震の数は、繰り返し地震で5個、通常地震で63個であるためデータ数を増やすという目的は適切に達成されている。
Tokomaru-Tolagaでは他の領域よりもfcP/fcSの値がやや小さな値をとる傾向にあった。fcP/fcSが小さいことは破壊伝播速度が大きいことを示唆する(Kaneko and Shearer, 2015)。Tokomaru-Tolagaの地震発生域よりもややup-dip側では流体に富む沈み込んだ堆積物が存在すると指摘されている。断層の剛性率が小さいと破壊伝播速度が大きくなることが知られているため、Tokomaru-Tolagaのやや小さなfcP/fcS(やや大きな破壊伝播速度)は低剛性率な堆積物が原因となっている可能性がある。