15:30 〜 17:00
[S08P-04] 伊豆半島東方沖の2006年群発地震活動で発生した火山構造性地震の震源過程解析
1. 序論
伊豆半島東方沖では、1970年代後半以降、群発地震活動が断続的に発生している。これらの地震活動は、地下の火山性流体の移動に起因する火山構造性地震であると考えられている。本研究では、2006年4月に発生した伊豆半島東方沖の群発地震活動のうち、規模が大きな4地震(3.9≦Mw≦5.6)について、経験的グリーン関数(EGF)を用いた複数時間窓の波形インバージョンを行い、震源時間関数に見られる4地震の特徴の比較とその背景の考察を行った。
2. データと解析手法
EGFとして、同じ群発地震活動中に発生した3つの小地震の観測波形を使用した。解析対象の4地震、およびEGFとして用いた3地震は、いずれも横ずれ断層型のメカニズム解を示す。解析には、防災科学技術研究所(NIED)のK-net強震計記録を用いた。加速度波形記録を積分して速度波形とした後、0.1-1.0 Hzのバンドパスフィルタをかけ、さらにS波を含む10秒間を切り出して解析に使用した。
解析には30個の時間窓を用い、各時間窓の間隔は0.05秒とした。次に、EGF地震の震源時間関数は破壊継続時間0.2 sの二等辺三角形で表せると仮定し、解析対象地震のモーメントはNIEDのCMT解と一致するとの条件の下、解析対象地震の震源時間関数を求めた。
3. 結果と考察
解析から得た4地震の震源時間関数を図1aに示す。解析対象地震は、規模の大きい順にAからDと呼ぶこととする。A(Mw5.6)は破壊開始後0.2秒程度でモーメントレートが最大になった後、破壊が1秒程度尾をひいている。B(Mw4.5)とC(Mw4.3)は、ともに2回の大きな破壊を起こしているが、特徴が異なる。すなわち、Bは2回の破壊が同規模である一方、Cは2回目の破壊が明らかに小さい。D(Mw3.9)は破壊継続時間0.2秒程度の単一の破壊であった。
これらの震源過程の特徴の違いは、震源の空間分布と関連すると考えられる。A, Bは少なくとも20年程群発地震が発生していない領域で起こった地震である一方、Cは1998年に発生した群発地震活動の震源域に近接している。このことから、以下のような推論が可能である。過去に破壊が起こった領域では、すでに存在する強度の低い部分を破壊が比較的スムースに進展するのに対し、過去に破壊の起こっていない領域ではフレッシュな強度の高い部分を破壊が進展するため、複雑な破壊過程を示すのかもしれない。すなわち、たとえばUmeda(1990)が本震と余震の破壊過程の相違について言及しているように、過去の地震活動による破砕の有無が、解析した4地震の破壊過程の相違として見られたと考えられる。
伊豆半島東方沖では、1970年代後半以降、群発地震活動が断続的に発生している。これらの地震活動は、地下の火山性流体の移動に起因する火山構造性地震であると考えられている。本研究では、2006年4月に発生した伊豆半島東方沖の群発地震活動のうち、規模が大きな4地震(3.9≦Mw≦5.6)について、経験的グリーン関数(EGF)を用いた複数時間窓の波形インバージョンを行い、震源時間関数に見られる4地震の特徴の比較とその背景の考察を行った。
2. データと解析手法
EGFとして、同じ群発地震活動中に発生した3つの小地震の観測波形を使用した。解析対象の4地震、およびEGFとして用いた3地震は、いずれも横ずれ断層型のメカニズム解を示す。解析には、防災科学技術研究所(NIED)のK-net強震計記録を用いた。加速度波形記録を積分して速度波形とした後、0.1-1.0 Hzのバンドパスフィルタをかけ、さらにS波を含む10秒間を切り出して解析に使用した。
解析には30個の時間窓を用い、各時間窓の間隔は0.05秒とした。次に、EGF地震の震源時間関数は破壊継続時間0.2 sの二等辺三角形で表せると仮定し、解析対象地震のモーメントはNIEDのCMT解と一致するとの条件の下、解析対象地震の震源時間関数を求めた。
3. 結果と考察
解析から得た4地震の震源時間関数を図1aに示す。解析対象地震は、規模の大きい順にAからDと呼ぶこととする。A(Mw5.6)は破壊開始後0.2秒程度でモーメントレートが最大になった後、破壊が1秒程度尾をひいている。B(Mw4.5)とC(Mw4.3)は、ともに2回の大きな破壊を起こしているが、特徴が異なる。すなわち、Bは2回の破壊が同規模である一方、Cは2回目の破壊が明らかに小さい。D(Mw3.9)は破壊継続時間0.2秒程度の単一の破壊であった。
これらの震源過程の特徴の違いは、震源の空間分布と関連すると考えられる。A, Bは少なくとも20年程群発地震が発生していない領域で起こった地震である一方、Cは1998年に発生した群発地震活動の震源域に近接している。このことから、以下のような推論が可能である。過去に破壊が起こった領域では、すでに存在する強度の低い部分を破壊が比較的スムースに進展するのに対し、過去に破壊の起こっていない領域ではフレッシュな強度の高い部分を破壊が進展するため、複雑な破壊過程を示すのかもしれない。すなわち、たとえばUmeda(1990)が本震と余震の破壊過程の相違について言及しているように、過去の地震活動による破砕の有無が、解析した4地震の破壊過程の相違として見られたと考えられる。